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星新一 『城のなかの人』

星新一 著 『城のなかの人』(角川文庫/1977年刊) を読む。
城のなかの人
城が愛してくれたのは、このわたしだけのはずだ・・・
絢爛たる人工の色彩のなかで育った秀頼にとって、大坂城のなかだけが現実であり、安らぎに満ちた世界だった。
だが太閤が逝ったあと、母である淀君がすべてを取り仕切り、関白になるためだけの優雅な公卿教育を受けてきた秀頼は、恵まれていたといえるだろうか。
表題作含め全5篇収録の時代小説。


著者には珍しい、純然たる時代小説。

城のなかの人
主人公は豊臣秀頼。
作中、本人も周りの人も「あと十年早く生まれてきていれば」と思う場面が再三あるのが印象深い。
どんな作品に登場してもカッコいい男・真田幸村。この作品においても男前だった。

春風のあげく
お城にあがることになった幼馴染みと情を通じてしまった忠之進。
やがて生まれてきた若君は実は忠之進の子どもであった・・・・
こういう話ってたいてい一発必中だよね。
若君が実は自分の息子であることを心の中で励みにして城代家老まで出世していく忠之進のバイタリティはすごい。
皮肉なラストは著者の真骨頂だ。

正雪と弟子
由比正雪が口八丁のみで〈張孔堂〉を開設したり、正雪の弟子がのちの紀伊国屋文左衛門だったり、正雪の計画を応用して江戸に大火を起こして紀文が材木王になったり、その火事が「振袖火事」と呼ばれたりする、おもしろ時代劇。
史実にのっとらない、こういう雰囲気の作品は楽しいなあ。

すずしい夏
タイトルを見ると純文学とかにありそうな題名だが、抽象的な意味付けは全然なく、ストレートに冷害で米が不作な話(笑)
冷害で飢饉になりかけた折、幕府の諸国巡検使が来ることになり、一行が通る道筋一帯だけを見栄えよくして巡検使を迎える場面があるのだが、まるでピョンヤンだね。

はんぱもの維新
オレはいままで小栗上野介という人を気にかけていなかったのだが、偉い人だねぇ~。
幕閣に頼りにされて、勘定奉行やら外国奉行やら江戸町奉行やらいろんな役職を歴任し実績を上げているし、洋式軍隊を編成したり、横須賀にドックを建設したり、あの当時おそらく一番開明的だったんだろうね。
何しろ日本初の株式会社「兵庫商社」というのを設立したとのこと。
物語の中で、幕府の人間や薩長の人間を問わず「はんぱもの」とののしり苛立っているが、業績をみれば分かる気がする。
結局、官軍によって処刑されてしまうが、明治の世まで生きていて欲しかった一人である。
小栗が主人公の長篇小説探して読みたくなった。
(2010.12.21読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

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筒涸屋

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札幌市出身・在住
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