清水義範 『袖すりあうも多生の縁』

清水義範 著 袖すりあうも多生の縁(角川文庫/1997年刊) を読む。

噂だけの知り合い。
手紙だけでやりとりする文通相手。
飲み屋での常連客仲間。
生涯に渡ってライバル心を燃やす姉妹。
ごく当たり前の日常生活の中にある様々な人間の絆を鋭く描いた連作短篇集。


仄聞
故郷が同じの人気女優から、父親同士が知り合いらしいと聞いた、あまり世の中に知られていない作家が、その話の真相にたどり着く話。
あやふやな噂話の広まりを逆から辿って出所を考察するのだが、「誰それは知り合い」「○○は俺の親戚」「○○はワシが育てた」っていうのは本当のことならしょうがないけど、そうでなかったら相当迷惑だわなあ。

まだ見ぬ君に
大学一年生男子が、イッコ上の女性と文通。
男子の手紙のみで構成されていて、回数を重ねるうちに相手に会うところまでこぎ着ける。
そこにいくまでの手探り感を楽しむ作品。
実際会った後はハガキ一枚出して終了。まあ、そうだよね。

常連
バーに来る常連客の様子をスケッチ。
オレ自身は一人で外に飲みに出る習慣はないので、ここに登場する人達に共感するものはないが、飲み屋に限らず常連客というのは、常連じゃない人に対する優越感を持ちたいものなのだろう。

楽しい奴
全方向に、面白くて好かれる楽しい人間でありたいと思ってる大学生の話。
かなり大げさに描いているが、こういう人っているわ。
こういう人とは深い付き合いができないので、薄っぺらい関係で終わるのだよね。

二十五年ぶり
25年ぶりに開催された、中学時代のクラス会の風景。
やや類型的に過ぎる気もするが面白かった。

夫の親友
友人に借金を申し込まれた男と、その妻の夫婦会議の様子。
貸してやりたい夫と、貸したくない妻の会話で話が進行していくのだが、ユーモア物じゃないので、ちっとも面白くなかった。

同期の桜
2年前にやめた会社の同期を訪ねる話。
まあ、この作品については主人公が悪い。
電話した時に目的を言えば済む話であった。
電話の時点で目的を言わず、会ってからも世間話をだらだらとしてたら、そりゃ警戒しますわな。

はらから
長女と次女の姉妹関係を次女目線で。
子供の頃からおばばになるまで、女同士っていろいろ難しいのね。

双子のように
姉妹のように仲がよい母娘の話。
母は自分が若い頃の不遇感から、娘とツルむことによって青春時代を取り戻そうとし、娘は主に経済的な面で得だったりするので、買物とか旅行などの行動を共にする。
そして、そんな母娘に対する作者の視線はちょっと厳しい。

背中
息子に過剰な期待をかける父と、そのプレッシャーに押し潰され逃げ出す息子。
この作品は父親が全面的に悪いだろこれ。
と、そんな感想。
(2015.9.22読了)

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

山田風太郎 『忍法行雲抄』

山田風太郎 著 忍法行雲抄(角川文庫/1982年刊) を読む。

蟹の鋏はもがれてもまた生えてくる。
だが、人間の首が切り落とされた後に生え替わるなど考えられるだろうか?
越前の朝倉義景を頼って、風采の上がらぬ浪人が飄然と訪れ、五百貫の知行で仕官することになった。
名を明智十兵衛、美濃国明智庄城主の一子で、落城後、忍法の修業を積んだ変わり種。
仕官してまもなく、彼は朝倉家の寄人沙羅という娘に一目惚れしたが、彼女には想いを寄せる美男の従者土岐弥平次がいた。
恋に苦しむ十兵衛は、弥平次に甲賀忍法「人蟹」を使ったとてつもない申し入れをするのだが…
(「忍者明智十兵衛」より)


『忍者 明智十兵衛』
腕や首など、身体の一部分を欠損しても一ヶ月すると再生する「忍法人蟹」。
作者が忍法のネタに困ってる感じがものすごいが、それでも無理やり面白い話を作る方がすごい。
忍法を逆手に利用して明智光秀に成り変わった土岐弥平次の性格がとてもむかつく。

『忍法 死のうは一定』
人を女陰の中に閉じ込め、ふたたび生誕させる、その時、それから以後の死ぬまでの全生涯を記憶している……果心居士の幻術「女陰往生」。
女陰往生にかかり再生誕すると、廃人になるという。
バカバカしいにも程がある忍法であるが、信長が本能寺で絶体絶命の時、脱出するためにやむなく女陰往生を利用するのは致し方ない。
姪のちゃちゃ姫を女陰往生の対象に選んだ信長は、本能寺以後の未来を観ている時に、秀吉の、顔そっくりの細っこい皺だらけの男根が目の前ににゅっと現れるのだが、作者はこのくだりを描きたいがために、こんなややこしい忍法を考えだしたとしか思えない。

『忍者 石川五右衛門』
天下の大盗賊石川五右衛門が甲賀忍者として登場。
秀吉を倒すために、亡き主人の娘を使って肉欲戦法を仕掛けようとするのはえげつないが、結末が悲劇じみて、荒唐無稽な話なのに妙にしんみりさせる。

『虫の忍法帖』
処刑されようとする関白秀次の精液を一度くノ一に受け、それを淀君に
移して秀次の子を産まそうという、途方もなくバカバカしい話。
なんやかやあって、最終的に小督に注がれる展開は、登場人物がみんなシリアスなだけに喜劇的だった。

『忍法 関ヶ原』
近江の国友村は鉄砲の生産地。
石田三成知行の地である国友村を徳川方に寝返らせるための工作をしようと、村に潜入しようとする伊賀組。
島左近の命を受け、迎えうつ甲賀組。
最初は忍者同士の凄烈な闘いで手に汗握る展開だが、犠牲者を出しつつも伊賀組が国友村に潜入してからはど変態エロエピソードが展開される。
こういう、緊張と弛緩の落差が面白い。
まあ、読みようによっては、エロ場面にも緊張感があるのだが。

『忍者 本多佐渡守』
徳川家安泰の為に、あえて譜代といえども叩き潰す本多佐渡守・上野介父子。
そして、佐渡守から後継者として教育された土井大炊頭が本多親子を…。
本多佐渡が、大久保忠隣を排除するために、まず大久保長安を失脚させるというのがエグい。
しかも本多父子に恨みがいくように(万が一にも家康に鉾先が向かわぬように)、一見無駄な事件を挿入する
念の入れよう。

秀忠には本多上野介は使いこなせないと判断した家康が、死の直前に遺言のように、本多の始末を土井大炊頭に指示し、その後、土井が上野介に仕掛ける謀略がまた流れるような展開で、土井の腕前も見事なものです。

史実と史実を、忍者を使って(今回は根来組が大活躍!)自由に繋ぎ合わせていく作者の技術が存分に発揮された快心の作だと思う。
(2015.2.24読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

鯨統一郎 『あすなろの詩』

鯨統一郎 著 あすなろの詩(角川文庫/2003年刊) を読む。
あすなろの詩
「伝説の文芸誌『あすなろの詩』を復刊しよう」------同じ志のもとに集まった6人の大学生。
小説家になることを夢見て、切磋琢磨する日々。やがて芽生える友情、そして恋。しかし・・・
「あすなろの詩」が完成したとき恐るべき惨劇が待ち受けていることを、彼らは知る由もなかった!
「本格」青春ミステリー。


「平和の章」「殺戮の章」「解決の章」の三章からなる本書。
「平和の章」では、大学の文芸部を舞台に、ベタベタな青春小説。
6人の文芸部員のそれぞれの人間模様が語られて、なかなか良かった。
だが「殺戮の章」では話が急展開し、連続殺人事件が起こり、「解決の章」でパタパタと事件解決。
はっきり言って、殺人事件は要らなく、青春物語を全うしたほうが良かったのではないかという気がした。
(2014.1.29読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『主な登場人物』

清水義範 著 主な登場人物(角川文庫/1994年刊) を読む。
主な登場人物
それは、チャンドラーの『さらば愛しき女よ』の“主な登場人物”表から始まった正気の沙汰とは思えないゲーム。
本編を読んだことのない作家(=著者)が、“主な登場人物”表から、この名作のストーリーを想像してしまう無茶苦茶さ。
表題作含め全15篇収録。


主な登場人物
<主な登場人物>の紹介文を頼りに、「さらば愛しき女よ」のストーリーをでっち上げようという話。
ハードボイルドのイメージが、大都会に雨が降り、探偵が粋なセリフを吐いたりする、非常にロマンチックな物語だというのはなるほどと思った。
オレのハードボイルド・イメージ表に、これらを追加しておこう。

実用文書承ります
始末書や稟議書や誓約書など、ちょっとした書類の文章を代書する商売の話。
こういうの本当にあったら利用したいわぁ。
報告書だの企画書だのって、書くの苦手なのだよねえ。
特に書き出しがどう書けばいいか悩む。

歴史ショート・ショート 決断
北政所と加藤清正の会話が名古屋弁(笑)。
石田三成などの近江者を、お高くとまった言葉使いだと文句を垂れるのが面白い。 

陽光キラキラ霊場ガイド
女性向け旅行情報誌の仕事を得意とするライターが、霊場ガイドの原稿を依頼される話。
リゾートの紹介のノリで書かれた恐山の紹介が笑える。

註釈物語
小説の本体が無く、別冊になってる註釈集だけを読むという話。
註釈の内容がかなりバカバカしい。
たまぁに、こういう暴走気味のギャグ話があったりするので、とても良い作家だと思う。
(2013.11.21読了)

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

横溝正史 『迷路の花嫁』

横溝正史 著 迷路の花嫁(角川文庫/1976年刊) を読む。
迷路の花嫁
駆け出しの小説家松原浩三は、ふとしたことからとてつもない恐ろしい事件に巻き込まれていった。
暗い夜の町を散策していた彼は、偶然行き会った若い女の異常な様子に不審を抱き、後を追いかけた。
だが通りがかりの警官とともに、女が消えた路地へ踏み込んだ彼は戦慄した!
軒灯にヤモリが這うクモの巣だらけの不気味な家、そして縁側から真っ赤な猫の足跡が続き、血の海と化した座敷には、無数の切り傷から鮮血を滴らす全裸の女の死体が・・・


金田一さんが登場する物語ではあるのだが、金田一さんは積極的にストーリーにからむことのない作品。
新人小説家の松原浩三が主人公となって話が展開する。
金田一さんは物語の途中途中にちらっと出てくるだけで、あとは松原が、殺人事件にいきあい、捜査めいたことをし、悪者と対峙する。
これは金田一さんの見せ場は無いのかなあと思って読んでいると、ちゃんと見せ場はあったのでひと安心。
著者がこの作品に仕掛けたトリックはなかなか味わい深いものはあるけれど、そのトリックのために、ちょっと地味な作品になってしまったと思う。
(2013.4.23読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

半村良 『平家伝説』

半村良 著 平家伝説(角川文庫/1974年刊) を読む。
平家伝説
自家用運転手浜田五郎は、ある春の日の午後、銭湯の主人から、自分の右肩の後ろにある大きなアザが<嘆き鳥>と呼ばれることを教えられた。
嘆き鳥……それは源平の昔、壇の浦の合戦に敗れた平時忠を能登の配所に導いたと伝えられる鳥の名だった……
浜田と恋人敏子の運命をあやつるアザの秘密は何か?


この作品、SF小説を謳ってはいるが、SFっぽいのは最後の数十ページだけ。
ほとんどは高村教授のお抱え運転手・浜田と、教授の娘・敏子の恋愛模様にページが費やされる。
敏子は浜田の、世間から超越したような風情に心ひかれて関係を持ったのだが、浜田のアパートで半同棲生活を送るうち、浜田のほうが世間との関わりを意識し始め、お互いの心がすれ違っていく。
オレが浜田の立場だったら完全にヒモ状態の暮らしを謳歌するところであるが、この浜田という男、根が真面目なゆえか相手に求められてない努力をしちゃうんだよねえ。
当然この関係は破局するのに決まっているのだが、こういうありきたりな恋愛物に、浜田の右肩にある鳥の形をしたアザに平家の落武者伝説をからめ、宇宙まで語る半村師匠の豪腕には、感嘆というよりは呆れてしまうと言ったほうがよい。
(2013.3.25読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

光瀬龍 『所は何処、水師営』

光瀬龍 著 所は何処、水師営 SF<西郷隆盛と日露戦争>(角川文庫/1987年刊) を読む。
所は何処、水師営
明治十年。西南戦争に敗れた西郷隆盛は、鹿児島の城山で自害した。
だが巷では、西郷どんは死んでおらずロシアに逃れ、ロマノフ王朝とともに明治政府顚覆を図っていると噂されていた。
明治三十七年、日露戦争勃発。快進撃をつづける日本軍は勝利を得るかにみえたが、形勢は逆転、水師営で勝者西郷と敗者乃木大将が会見した―――
歪められた歴史の修正をめざす時間局員の闘いが始まる。
そして、謎の背後には、世界的物理学者アインシュタインの影が・・・
動乱の明治期を舞台に展開する波乱万丈の歴史SF!


冒頭、旧会津藩士で現在は警視庁の密行探偵である三原市之進の不思議な体験の描写の後、かなり長い間、ロシアに渡った西郷どんの話が続く。
このまま西郷どんがロシアの将校になって日露戦争を戦う歴史改変ものなのかなと読み進んでいると、いきなり話が現代に跳び、おなじみの「時間監視局」の面々が登場し、かなり嬉しい。
改変された歴史が現実世界に定着してしまう前に、修復作業を行う時間局員の活躍がカッコいい。
歴史改変を企てる敵方が、アインシュタイン博士と勝海舟というのも豪華な感じである。
もう全然忘れたころに、冒頭に登場していた三原市之進が出てくるのだが、ホントに忘れていたので最初のほうを読み返してしまった。
(2013.1.11読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『江勢物語』

清水義範 著 江勢物語(角川文庫/1991年刊) を読む。
江勢物語
えーっと、これは、けして『伊勢物語』と間違えたわけではありません。
“えせ”とは、何かと申しますと…それは、読んでからのお楽しみ。さぁ、扉を開けて下さい。
どれがホントで、どれがウソなのか、貴方に真実をみわけることができますか。
上から見ても、下から見ても、横から見ても、清水ワールド満載のまるごと一冊、福袋。
古今東西のエセを集めた、文庫オリジナル短篇集。全11篇収録。


現代語訳「江勢物語」』は、古典文学を現代語訳した体で進められる話。
和歌の現代語訳がやたら長文であるという、いかにも古文の教科書にあったようなやつがウケた。

スノーカントリー』は、夏休みの宿題で英語の小説を翻訳してきた生徒の訳文を、教師が読みながらツッコミを入れる話。
「スノーカントリー」というのは、川端康成の「雪国」のことで、英訳された「雪国」を高校生が日本語に訳すのだが、訳が進むうちにだんだんエロい感じになっていくのが面白い。
翻訳された小説って、たまに違和感ある文があったりするけど、そういうのって原文のニュアンスが的確に訳されてなかったりするのかもね。

訳者あとがき』は、いかにも翻訳者が書きそうな、あとがきのパロディ作品。
こういうパロディは著者の大得意とするところで、非常に楽しい。
(2012.9.12読了)

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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

半村良 『闇の中の哄笑』

半村良 著 闇の中の哄笑(角川文庫/1979年刊) を読む。
闇の中の哄笑
エリート中のエリートだけが宿泊を許される伊東の名門ホテル。
そこに日本の政財界を動かす三人の男達が顔を揃えていた。
偶然を装った出会いだったが、裏側には権力への激しい執念がどす黒い渦を巻いていた。
“汚れきった”保守政権は、いまや国民に見放されている。
思い切ったスケープゴートを奉げ、大衆の信頼を回復しなければ、現体制は破滅だ。
晴れ渡った空の下、まばゆいグリーンでは、優雅なプレイとは裏腹に、恐ろしい策略が展開されていた。
知恵と策謀が火花を散らして斬りむすぶ時、嘘部の末裔「黒虹会」が日本の将来を賭けた大作戦を開始する!


嘘部シリーズ第三弾!
今回は次期総理の指名をめぐって大嘘を展開。
前作で主人公だった津野田がやはり「黒虹会」に入ってた。
だがこの人、血筋的に嘘部の末裔ではないのであろう、オブザーバー的な立ち位置な感じ。
ストーリーは伊東の高級ホテルで展開されるのであるが、各登場人物がホテルへ集まるまでのエピソードの羅列がおもしろい。
これらの登場人物が、メインストーリーの人なのかサイドストーリーの人なのかは、けっこう初期の段階で読者には分かるのだが、サイドストーリーの人物を浅辺たち黒虹会の面々が、敵のスパイではないか?と勘繰ってあたふたするのが笑える。
今回展開される作戦は、次期総理の椅子を狙う政治家のうちの一人を失脚させるというものなのだが、そのためにこんな大規模なことをしなくてもいいじゃんと思うのであった。
(2012.7.4読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

半村良 『獣人伝説』

半村良 著 獣人伝説(角川文庫/1978年刊) を読む。
獣人伝説
現代社会で最も腐敗した部分、その手の施しようもない汚れの中に生きる“悪”に神は怒ったのだろうか。
ある朝、神崎順一郎は来ているはずのない伊東のホテルで目覚めた。しかもポケットには“G・O・D”と記された一枚の奇妙なカードが入っていた。これは何だ。どこで手に入れたのだろう?
――だがこの日から、神崎は不思議な力を持つようになった。まるで悪魔のように薄気味悪く、いやらしい尾をたらした“有尾人間”が見分けられるようになったのだ。そして彼らに出会った時、神崎はいつの間にか襲い掛かり、首を締め上げていた。
鬼才が現代の悪魔狩りをテーマに描く、会心の伝奇長篇!


冒頭から数十ページに渡って詩が書かれていて、抽象的な言葉で書かれてるので何だかよく解らないのであるが、ある程度物語を読み進めてから、もう一度詩を読み返してみると、その内容が理解できて、「もうっ、半村師匠ったら(ハート)」という気持ちになる。

神から、悪魔狩りをするために天使に任命された神埼順一郎。
と言っても、神から直々に声をかけられた訳ではなく、身の周りに不思議なことが起こり、序々に自己認識していくのであるが、その過程がスリリングで面白い。
読んでると本当に悪魔はイヤな奴らとして描かれているので、悪魔が殺されると、読んでるこちらも気分がよくなる。
だが後半、悪魔側も反撃に出る。その方法が世論に訴えて神崎を社会から孤立させるというもので、悪魔は政治家や財界人として君臨してる奴らなのであるが、もうね、いかにも政治家とかが言いそうな感じで、狡猾なのである。
結局神崎は、悪魔との闘いに敗れてしまうのであるが、天使と悪魔の闘争は遥か昔からも、これからもずっと果てしなく続くことが示唆される。

表紙絵はおなじみ杉本一文画伯。
悪魔のニヤリ顔がホント気味悪いし腹立つわあ。
(2012.5.21読了)

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テーマ : 読書感想
ジャンル : 本・雑誌

小林信彦 『大統領の晩餐』

小林信彦 著 大統領の晩餐(角川文庫/1974年刊) を読む。
大統領の晩餐
猫がエビのシッポを食べる時、大統領の陰謀は崩れる――
大企業に加担して、公害対策事務所の猫に盗聴器を仕掛けた、おなじみオヨヨ大統領、その猫が食あたりで腰をぬかしたと知り、急きょ誘拐を決意した。
港ヨコハマを舞台に、大統領のマヌケな配下、猫解放運動の女史、鬼警部らが入り乱れての猫探し珍騒動!
大統領に悪の心得を説く老二十面相、料理道を求める若者を登場させた求道者小説のパロディ、ウンチクを傾けた中華料理の紹介など趣向も十分な<オヨヨ大統領シリーズ>第5作。


オヨヨ大統領の組織は、子供向け作品に描かれていた頃に比べてかなり大きく、より悪の組織っぽく描かれている。
だが、物語の本筋に出てくる大統領の部下たちは、例によってニコライ、ニコラスのコンビなど、相変わらずドジな面々で安心だ。
怪人二十面相が登場し、オヨヨ大統領に説教というか犯罪王としての心得みたいなことを述べる場面が楽しい。
大統領がピンチの時にも登場し脱出を助けるのだが、その方法がアドバルーンにつかまって空へ逃げるという、由緒正しき(?)方法というのがよい。
また、メインストーリーとは違う筋で、求道小説(というジャンルがあるというのを初めて知った)のパロディとして、若い料理人が料理の道を究めようとする話も挿入されているのだが、思いっきりパロディなので、話が大げさでとても笑える。

あと、作者のウンチクがいろいろと発揮されているのだが、へぇと思ったのが、映画「網走番外地」って、東映が制作する前に日活でも作られていたということ。
東映より5年前の封切りで、小高雄二、浅丘ルリ子の出演とのこと。
そして日活アクション映画についての考察が語られていて、とても興味深く読んだ。
(2012.5.17読了)

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星新一 『おかしな先祖』

星新一 著 おかしな先祖(角川文庫/1985年刊) を読む。
おかしな先祖
ある日の午後、にぎやかな街の中に二人の男女が出現した。
彼らは突然そこへ出てきたのであった、しかも裸で。
警察の取調べに、男はアダム、女はイブと名のった・・・
目立ちたがり屋の芸術かぶれか、それとも少し頭がおかしいのか?
やがてテレビ局が二人に目をつけ、新聞社もやってくる。
いつのまにか二人は本物のアダムとイブだと決まり、学者がいろんな説を唱え始めた。
そして事件が発生した――
表題作「おかしな先祖」を含め全10篇収録。


あとがきによると、SF落語を試みようと書いた作品集とのこと。
1篇の分量が、ショートショートよりも少し長めである。
面白かったもの、あんま面白くなかったもの、いろいろあるが、一応全作品に感想を。
(2012.3.3読了)

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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 『テロリスト』

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 著 高見浩 訳 テロリスト(角川文庫/1983年刊)【TERRORIST:1975】 を読む。
テロリスト
タカ派で知られる米国上院議員のストックホルム訪問。
マルティン・ベックは特別警護の責任者に任ぜられる。
最大の懸念は、国際テロ組織ULAGの動きである。
要人の無差別暗殺を世界各地で決行しているこのグループが、上院議員のストックホルム訪問を絶好の機会と見なしていることは想像に難くない。
ラーソンやルンら、精鋭を集めた特捜班といえども、正体不明の暗殺者の侵入をどのように防ぐのか?
過去の手口からして遠隔操作の爆弾使用が考えられるが、その設置場所は?
ベックたちが暗殺阻止の大トリックを編み出した頃、テロリスト市内に潜入の報がもたらされた!


シリーズ10作目にして、堂々の完結。感慨深い。
最終作ということで、出るは出るは、過去の登場人物があちらこちらに。

今作品のメインストーリーは、スウェーデンを訪問するアメリカ上院議員が暗殺されないように身辺警護するというもの。
警護の特別作戦部が立ち上がり、チーフにベックが就任。
本部詰めの面々はベック以下、ラーソン、ルン、スカッケ、そしてメランデル。
メランデルって1作目からベック組の主要人物として登場していたが、途中からあまり出てこなくなったなあと思っていたら、殺人課から暴力課、窃盗課と異動していたらしい。
何作目かの時に警察組織の再編があった(市警単位から国家警察への変更)ので、あのあたりで所属の変更があったのだろう。オレは読んでたのに全然覚えていない。

前作で警察を辞めたコルベリも登場。今は陸軍博物館で働いている。
『サボイ・ホテルの殺人』の時にベックがたいへんいい思いをしたオーサ・トーレルも、ベックが捜査に関わった違う事件のエピソードで登場してた。
過去に何度も出てきたマヌケな警官クリスチャンソンもチラッと登場したし、ブルドーザー・オルソン検事も「特別出演」的な扱いで登場。
前作『警官殺し』でベックと共に捜査に携わったアンダスレーヴの駐在員ヘルゴット・オーライも、上院議員警備の人員として動員されてベックと再会。警備終了後ベックと晩飯を食う。
8作目『密室』の時に知り合って以来つきあっているレア・ニールセンとは、順調なご様子で、全篇に渡っていちゃいちゃしてるし、ベック親分、私生活は充実してます。

ストーリーは、前半部分では18歳女性による銀行強盗事件や、ポルノ映画監督殺人事件の捜査を通して、スウェーデンの社会福祉制度のひずみを抉り出し、後半部分では対テロリストとの闘いを通して、高度資本主義社会が内包する暴力への傾斜という問題を提出している。
そして当然、クライマックスで前半と後半のエピソードは融合していくのだが、この辺の手際はとてもいい。
作品発表年は1975年なのだが、ここに描かれているテーマは2012年の今でも課題としなければならないものである。
ひとつ注文つけたいのは、構成が緊密なゆえ、ゆとりがあまり無いところか。
ベックの趣味である「船」に関するマニアックな話題が出てこなかったのが唯一不満。

テロリストグループに日本人が二人登場するのであるが、二人のコードネームが「カイテン(回天)」と「カミカゼ」。
神風はともかく、人間魚雷の名前を持ってくるところがシューヴァル/ヴァールー夫妻のセンスを感じる。
北欧の人が「回天」を知ってるのが驚き。

ラーソンが運転するパトカーで、ポルシェが出てきたのがカッコよかった。
スウェーデン国内でも数台しかない特別車のようだ。
スウェーデンの通常のパトカーってどんな車なのかね?
ボルボやサーヴなら、それはそれでカッコいいのだが。
日本にも以前フェアレディZのパトカーがあったが、今でもあるのだろうか。
(2012.2.24読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

半村良 『闇の中の黄金』

半村良 著 『闇の中の黄金』(角川文庫/1979年刊) を読む。
闇の中の黄金
<嘘だ!奴が自分から死を選ぶなんて>
邪馬台国を取材中、親友の自殺を知らされた津野田は、その原因を探るべく調査を開始した。
そして死の直前、彼もまた邪馬台国の在処を追って、国東半島を訪れていたのを知った。
国東に向かった津野田は、そこで見た、世界の金市場を牛耳る黄金商人の集まりで、
日本の歴史の中に隠された重大な秘密に気づいた。
邪馬台国の秘密に繋がる莫大な黄金の夢を取り巻く人々と、背後に暗躍する“嘘部”一族。
古代より、日本の歴史を陰から動かす謎の一族「嘘部」の活動を、雄大な構想で描くシリーズ第二弾!


嘘部シリーズ二作目は、嘘をつかれる側が主人公となって話がすすむ。
編集者の津野田が、邪馬台国の所在地を九州の宇佐であると推理し、
宇佐説を展開させていくところは、いちいち説得力がある。

で、邪馬台国宇佐説と、マルコ・ポーロとを結びつけて、
日本に莫大な黄金が眠っているのではないか?と思わせるのが“嘘部”の手腕。
実際、本を読んでる間はつりこまれているので、邪馬台国=ジパングであると思ってしまう。
“嘘部”の手にかかると、読者をも簡単にダマせるのだ(笑)

前作で主人公だった浅辺宏一が、今作での作戦の指揮をとっていたことが
物語の最後の最後で分かるという趣向が心憎い。
で、今回嘘を仕掛けられた津野田が、嘘部ファミリーにスカウトされるところで物語は終了。
津野田は態度を保留したままで終わるのだが、浅辺と津野田のコンビで創る嘘話というのも読んでみたい。
(2011.2.5読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『ジャンケン入門』

清水義範 著 『ジャンケン入門』(角川文庫/1994年刊) を読む。
ジャンケン入門
石=グウ
鋏=チョキ
紙=パア
さあ、これがジャンケンの基本の形です。さて、そのつぎは・・・
ここから先は本書をお読みください。
きっと貴方をスバラシイジャンケンの世界へと導いてくれるはずです。
表題作含め全7篇収録。ユーモアとウィットに富んだ清水ワールド満載の短篇集。


ジャンケン入門
“ジャンケン連盟”が発行した、入門者用の冊子という体裁の小説。
「ジャンケンは心理の裏を読む競技」として解説されているが
けっこう本当っぽいことが書かれている。
初級・中級・上級の技についても書かれているが、
上級の技の名称で「レインボー作戦」「十二段抜き」ってのはそれっぽいけど
「仏壇返し」て(笑)
まあ、技は技ですけど。

窮理オレンジ教の教え
よく新興宗教が配ってるリーフレットをパロッた作品。
信者の体験談は、オレがよく印刷物をもらったりポストに入ってたりする
○○や△△や××などの宗教みたいなこと書いてあって面白かった。

チャンバラ・ギャング
悪役専門の時代劇俳優が主人公。
悪役しかできない恐そうな顔つきなのに、
監督や仲間の俳優に対して腰が低かったり、
家庭では娘に弱い父親だったり、ギャップで笑わせる作品。

実りの秋に
中産階級のオヤジが、軽く挫折を感ずるも、前向きになっていく過程を描いた作品。
労働者階級のワタクシからすれば、どうでもいい話。

こわい話
「恐怖」に対する考察をエッセイ風に描いた作品。
子どもの頃の怪談話や、S・キングのホラーへの考察が面白い。
オチの味わいも良い。

筑波の恋
熱力学の研究者がお見合いの後、デートしたことの顛末。
理系男子が、得意分野のことを語り始めて、止まらなくなっちゃうのを
面白おかしく描いているのだが、
理系の人ばかりではなく、文系の人もこうなります。
とても思い当たります。

待合室
とある地方都市の鉄道駅を舞台に、行き来する人々をスケッチした作品。
早朝の行商婆さまの会話から始まって、敬老センターへ出かける老人、
旅行者、高校生、サラリーマンなど、いろいろな年代、職業の人たちの
行動や会話などが描かれる。
地味だけど、自分が利用する駅なんかに当てはめてイメージできて、
かなり面白い作品であった。
(2011.1.30読了)

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山田風太郎 『くノ一紅騎兵』

山田風太郎 著 『くノ一紅騎兵』(角川文庫/1979年刊) を読む。
くノ一紅騎兵
謙信亡きあとも諸国に威信を示す猛将上杉景勝は、重臣直江山城守の推挙で一人の小姓を召抱えた。
女と見紛うばかりの美童だが恐るべき剣技の持ち主で、景勝は連日連夜寵愛した。
やがて風雲急を告げ、上杉家としても大坂方に就くか徳川方に就くかの決断の時を迎えた。
その時、直江山城守が一人の赤ん坊を抱いて登城し、「上杉家のおん嫡子である」と言上した。
豪胆な景勝もさすがに仰天。
女を抱かない彼に子どもが生まれるはずがない。はて・・・
母親は意外にも、景勝が溺愛したあの美童だったのだ!――
“くノ一”ものの傑作を精選した読者必読の忍法帖、全7篇収録。


くノ一紅騎兵
真田のくノ一が、若侍に化けて上杉景勝と契り、若君を産むという話。
そしてその若君が真田家に人質に取られるのだが、この一連の出来事の黒幕が直江兼続であり、これにより景勝を打倒徳川への挑戦に踏み切らせた・・・
とするストーリーに持ってく手腕は著者ならでは。

忍法聖千姫
・湯浴みに濡れているとしか思われない長い黒髪
・うす蒼い翳をおとす睫毛
・この世の空気を他とひとしく呼吸しているとも見えぬ蝋細工のような鼻
・柔い花弁を二枚重ねたような唇
・象牙色の光沢を仄かに照り返す頸
・二つの玉椀を伏せたような乳房
・なよなよとくびれたまるい胴からむっちりと張った腰

想像しようとしてもピンとこない程の絶世の美女ぶりですな、千姫。
この作品は、そんな千姫に、服部半蔵の娘・夕波が化けて、坂崎出羽守家中の武士にウ○コを食わせる話。
スカトロ時代小説というものを初めて読んだ。

倒の忍法帖
松平忠輝vs伊賀くノ一の闘い。
くノ一の繰り出すエロ忍法を次々撃破する上総介忠輝!
こういう闘いなら参加してみたい。

くノ一地獄変
三人の甲賀者が完璧なる忍者になるため色道修行をする。相手は伊賀くノ一。
「忍法大陰体」~女性性器を人間の下半身大にまで膨隆させて男の顔の上に鎮座してしまう。
「忍法卵液逆流れ」~卵子を男の体内に逆流させる。逆流させた分だけ女は老いる。
イヤな思いをして女嫌いになった→女に対する執着や煩悩などから脱却した甲賀者であったが、数ヵ月後、駿河大納言忠長卿の件で、くノ一と敵味方として闘うことに。
そして・・・煩悩から脱却してなかった(笑)

捧げつつ試合
上野国沼田藩に潜入した甲賀隠密が、正体がばれて深傷を負う。
「甲賀秘伝、忍法はぐれ雁」~切り取った男根を女人の体中に置けば、その女人は懐胎する。
男根を江戸まで運ぶ命を受けた女隠密おふうの運命やいかに!
シチュエーションは間抜けなのに、サスペンス溢れる作品だった。

忍法幻羅吊り
甲賀くノ一が、殺された姉夫婦の仇を討つ復讐譚。
エロ描写は多いのだが、ちょっと話が重いので心の底から楽しめる作品ではない。

忍法穴ひとつ
この忍法はとても恐い!
尿意を覚えると精汁を放出し、性欲が高まると放尿してしまうのだ。
「忍法穴ひとつ」なんてネーミング、よく考えつくよね。
“精汁”って言葉、すごく濃そう。
(2011.1.12読了)

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星新一 『城のなかの人』

星新一 著 『城のなかの人』(角川文庫/1977年刊) を読む。
城のなかの人
城が愛してくれたのは、このわたしだけのはずだ・・・
絢爛たる人工の色彩のなかで育った秀頼にとって、大坂城のなかだけが現実であり、安らぎに満ちた世界だった。
だが太閤が逝ったあと、母である淀君がすべてを取り仕切り、関白になるためだけの優雅な公卿教育を受けてきた秀頼は、恵まれていたといえるだろうか。
表題作含め全5篇収録の時代小説。


著者には珍しい、純然たる時代小説。

城のなかの人
主人公は豊臣秀頼。
作中、本人も周りの人も「あと十年早く生まれてきていれば」と思う場面が再三あるのが印象深い。
どんな作品に登場してもカッコいい男・真田幸村。この作品においても男前だった。

春風のあげく
お城にあがることになった幼馴染みと情を通じてしまった忠之進。
やがて生まれてきた若君は実は忠之進の子どもであった・・・・
こういう話ってたいてい一発必中だよね。
若君が実は自分の息子であることを心の中で励みにして城代家老まで出世していく忠之進のバイタリティはすごい。
皮肉なラストは著者の真骨頂だ。

正雪と弟子
由比正雪が口八丁のみで〈張孔堂〉を開設したり、正雪の弟子がのちの紀伊国屋文左衛門だったり、正雪の計画を応用して江戸に大火を起こして紀文が材木王になったり、その火事が「振袖火事」と呼ばれたりする、おもしろ時代劇。
史実にのっとらない、こういう雰囲気の作品は楽しいなあ。

すずしい夏
タイトルを見ると純文学とかにありそうな題名だが、抽象的な意味付けは全然なく、ストレートに冷害で米が不作な話(笑)
冷害で飢饉になりかけた折、幕府の諸国巡検使が来ることになり、一行が通る道筋一帯だけを見栄えよくして巡検使を迎える場面があるのだが、まるでピョンヤンだね。

はんぱもの維新
オレはいままで小栗上野介という人を気にかけていなかったのだが、偉い人だねぇ~。
幕閣に頼りにされて、勘定奉行やら外国奉行やら江戸町奉行やらいろんな役職を歴任し実績を上げているし、洋式軍隊を編成したり、横須賀にドックを建設したり、あの当時おそらく一番開明的だったんだろうね。
何しろ日本初の株式会社「兵庫商社」というのを設立したとのこと。
物語の中で、幕府の人間や薩長の人間を問わず「はんぱもの」とののしり苛立っているが、業績をみれば分かる気がする。
結局、官軍によって処刑されてしまうが、明治の世まで生きていて欲しかった一人である。
小栗が主人公の長篇小説探して読みたくなった。
(2010.12.21読了)

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マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 『警官殺し』

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 著 高見浩 訳 『警官殺し』(角川文庫/1983年刊)【COP KILLER:1974】 を読む。
警官殺し
ベックとコルベリは出張捜査を命じられた。スウェーデン南端の田舎町で起きた失踪事件の捜査である。
失踪したのはシグフリート・モードという独り暮らしの女。年齢は38歳、離婚歴あり。警察はもはや彼女は生きていまいと見ていた。
シグフリードの近所に住む男、ベンクトソンが第一の容疑者だった。彼にはセックス殺人の前科があるのだ。それも、かつてベックたちが捜査・逮捕した人物だった・・・
ベックにはベンクトソンの犯行とは信じられなかった。その直感どおり、ストックホルムで発生した警官殺害事件が、解決への足がかりとなる――


シリーズ第9作。
過去の作品の犯人が再登場をはたすという、シリーズ作品ならではの賑やかさを感じさせつつ、物語の内容はいたって地味(笑)な作品。

アンダスレーヴというド田舎で起きた殺人事件。
被害者の隣の家に住んでいるのがシリーズ第1作『ロゼアンナ』の犯人だった男。
新聞記者としてシリーズ第2作『蒸発した男』の犯人も登場。
どちらの元犯人も、今は更生して暮らしているが、犯罪者だった影を引きずって生きていかざるを得ないようだ。

長らくベックの相棒として活躍してきたコルベリが、刑事稼業から足を洗う決意をする。
コルベリの考えによると、市警単位から国家警察へと組織が変更されてから、スウェーデンの警察組織は悪い方向へ向かっているらしい。
というか、このへんのくだりは著者の思いがダイレクトに表れている感じで、まさに著者がもっとも訴えたかったことなのだなあと分かる。

シリーズ第7作『唾棄すべき男』で相棒が殉職した、パトロール警官のクリスチャンセンも登場。
この人、出てくるたび勤務地が違うような。
物語の終盤に、ラーソン、メランデルといった人たちも登場。
この人たちは過去のレギュラーがゲストとして出演したような扱いだな。
忘れちゃいけないマルメのモーンソンも登場。
こうしてみると、ほんと過去作品の登場人物が大挙出てきて豪華な作品のはずなのだが。

ベックが、前作で知りあったレア・ニールセンと今だにつき合ってて(半同棲してるんだってさ)、ラブラブ電話してる場面がちょいちょい出てきてうらやましい。

ベックが出張先で読んでた本。
〈栄光の客船シリーズ〉『ターボエレクトリック四発推進客船“ノルマンディー”』
帆船とか軍艦とかっていうならともかく、普通の船の本を読むとは、ベックの趣味はかなり深いところまで来ているようだ。
(2010.11.13読了)

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小林信彦 『つむじ曲りの世界地図』

小林信彦著 『つむじ曲りの世界地図』(角川文庫/1979年刊) を読む。
つむじ曲りの世界地図
ガイドブックと絵葉書を抱えて自室にこもること数日。するとあなたはたちまちその土地の通に。
このド・セルビイ方式、“旅に出ずして旅をする法”を長年実践してきた著者が、ある日突然世界漫遊の旅に出た。
出発前の大騒動、機内と旅先で持ち上がる珍事の数々。ブロードウェイではミュージカルと映画三昧。ウィーンで『第三の男』を回想、リヒテンシュタインではギャビン・ライアルを。香港にてパックツアーの考察。
該博な知識と旺盛な批評精神を縦横にふるった、ユーモア旅行記。


初出はミステリマガジン1974年1月号~75年2月号とのこと。
旅行についてのあれこれとした話や、著者が香港やアメリカへ行った時の話などがざらっと語られている。
前半戦、ガイドブックについての考察や、自分や他人の旅先でのエピソードなどは、とても軽妙に書かれているのだが、ブロードウェイで観たミュージカルやコメディ・ショー、映画について語る段になると、とたんに熱を帯びてくるのがよい。

あと、『演劇と映画の日々』というエッセイも併録されていて、1974~75年頃のアメリカ映画や、ブロードウェイで観た芝居のことを語っている。
著者が語る映画や舞台についての批評や薀蓄は、いつ読んでも興味深く、とてもタメになる。
(2010.10.18読了)

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山田風太郎 『秘戯書争奪』

山田風太郎著 『秘戯書争奪』(角川文庫/1986年刊) を読む。
秘戯書争奪
13代将軍家定は“癇症公方”といわれ、虚弱体質で凡愚、最低クラスの将軍であったらしい。
31歳にもなるのに世嗣ぎがいないのは「子どものつくり方」を知らなかったというのだ。
すわっ、徳川家の一大事、なんとしても将軍様にお世嗣ぎを!
そこで城中奥医師の多紀法印は秘策を練った。それは古来から宮中に伝わる門外不出の奇書『医心方』を入手すること。これには、陰萎早漏を治す秘術が網羅されているという。
かくして、稀代の奇書をめぐって、甲賀忍法VS伊賀忍法の死闘が始まる・・・


全篇エロネタ満載の忍法帖。
『医心方 房内篇』という、房中術に関することが書かれた性医学書を争奪するという話なので、必然的にそうなるのだ・・・と思ったが、よく考えたら忍者がエロ忍法で闘う必然性は実はまったく無い(笑)
そこを無理やり、伊賀者が甲賀くノ一を犯してから殺すというルールを設定するという作者の豪腕!
『房内篇』に書かれている房術を実践して闘うのだが、書かれている言葉が小難しい。
例えば「三十法の第十一、空翻蝶。・・・・・男仰むけに臥して両足をのばし、女、男の上に座して正面す。両脚、床に拠り手を以って力を助け・・・・・」
そのあと、分かりやすく「対向前座位、つまり腹やぐらじゃ」と用語解説が。

最終的に忍者は、甲賀も伊賀も全滅するのだが、幕府が『医心方』を手に入れる目的は達せられる。
忍者同士の闘いの結果とはまったく関係ない感じで。
忍者が使い捨てにされる感が、他の忍法帖よりも際立つ物語であった。
(2010.5.24読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

半村良 『都市の仮面』

半村良著 『都市の仮面』(角川文庫/1979年刊) を読む。
都市の仮面
事務機を扱う中小企業のセールスマン駒井は、味気ない毎日から抜け出たいと願っていた。
そんな時、思わぬ幸運が舞い込んだ。ただ優雅に暮らし、遊ぶことだけを条件に、一流商社から引き抜かれたのだ。
都心に豪華マンションを与えられた駒井は、とびきりの美女から奇妙な研修を受けたあと、流行のファッションに身を包み、毎夜遊び歩いていた。
だが、享楽の果てに彼を待っていたものは・・・・
何げない日常生活にひそむ恐怖を描く短篇集。全6篇収録。


『都市の仮面』
社会を支配する、指導的階級の裏社会によって人生を狂わされる話。
半村師匠はこの手の、闇社会モノの作品を多く発表しているが、たいへん面白い。
主人公は美女二人をあてがわられて、さんざんイイコトしたあげく、路上生活者へ転落させられる。
だが、意外と絶望感がない終わり方をしてるのがいい感じだ。

『静かなる市民』
これも支配者階級の陰謀を垣間見てしまった一市民の話。
正義にかられて告発しようとするも、逆に追い込まれてしまう。
正義は必ずしも勝たないという話は、非常にリアルだよね。

『生命取立人』
男女が性交した時、快感をより多く与えた側が、与えられた側から残存年齢値(=寿命)を吸い取る・・・
という設定の医学的SF。
“交接は命のやりとりだったのである”という一文に、妙に迫力を感じた。


表紙カバーの絵は杉本一文画伯。
冷静な顔をしたピエロがとても不気味。
(2010.4.23読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

横溝正史 『魔女の暦』

横溝正史著 『魔女の暦』(角川文庫/1975年刊) を読む。
魔女の暦
しらせを受けて現場へ駆けつけた金田一耕助は、思わず「あっ」と声を上げた。舞台中央には、つくり物の蛇の頭髪が揺れ動き、血まみれになった女の生首がころがっていた・・・・
浅草のレビュー小屋、紅薔薇座に出演していた3人の魔女役が次々と惨殺された!
不敵な予告をする犯人「魔女の暦」の狙いは何か?
たえず後手に回り苦戦する名探偵の胸に、激しい怒りがこみ上げる。


『魔女の暦』
第一の殺人事件の前に、予告状を受け取る金田一さん。
等々力警部と合流して事件の捜査にあたる。
殺人が起こるたびに関係者一同に尋問し、ようやく真相にたどりつく金田一さん。
いつも思うのだが、殺されるべき人たちが殺されてから金田一さんは真相にたどり着くけれども(この作品では3人殺される)、どこか途中で事件を解決することは出来ないものか。
作者のさじ加減で可能だと思うのだが、どうだろうか。
金田一さんが可哀想だといつも思う。

『火の十字架』
事件の背景となった出来事~東京大空襲の日に、男女6人が乱交パーティをしていた~がエグい。
この作品は、著者が何度もテーマにしている「顔のない死体」もので、かなり完成度が高いと思う。
余計に殺人が起こる前に金田一さんが事件を解決してくれたので、オレも嬉しい。
(2010.3.23読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

小林信彦 『大統領の密使』

小林信彦著 『大統領の密使』(角川文庫/1974年刊) を読む。
大統領の密使
「バイブルだよ・・・・・」押し殺したような声が聞こえた。
深夜放送の人気アナ今似見手郎が、ホテルの部屋から備え付けの聖書を一冊失敬して帰宅した晩、不気味な電話を受けたのがすべての事の始まりだった。
バイブルに秘められた謎とは?
殺し屋きのうのジョー、冒険狂のテレビ作家南洋一、ハレンチ番組ディレクター細井忠邦、007の落し子鈴木ボンド、MI6、CIA、推理マニア中原弓彦にオヨヨ大統領・・・・。
奇人・変人・善玉・悪玉入り乱れての怪事件を奇想天外なトリックで描く、笑いと冒険の<オヨヨ大統領シリーズ>第4作。


シリーズ第4作で、一般向けには1冊目となる作品。
基本的にはドタバタ喜劇。
ただ、その中に昭和の風俗史(特に戦後の)みたいな事柄をネタにしているので、発表当時は「“戦後”という時代への一種の鎮魂歌」といった批評が多かったという。
そしてこの作品、ミステリの要素も含んでいて、オヨヨ大統領がある登場人物の一人としてずっと事件に関わっているのである。
まあ、あくまでも推理小説ではなく喜劇として読書できるので、あまりアタマを使うことなく、ただ単純にドタバタぶりを楽しめる作品である。
(2010.1.15読了)

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小林信彦 『オヨヨ城の秘密』

小林信彦著 『オヨヨ城の秘密』(角川文庫/1975年刊) を読む。
オヨヨ城の秘密
大沢ルミ中学1年を終えた春休み。
放送作家のパパとパリ旅行に出発したが、その機内でとんでもないハプニング、そしてパリのホテルに到着早々、スーツケースの中から白い粉袋が!
ヨーロッパに秘密の本拠地を持つ麻薬組織〈オヨヨコネクション〉を追う、仏・日・米・英の腕利き刑事と、ルミ親子を待ち受けるオヨヨ大統領の奸計。
ルーマニアの夜空に不気味に流れる、吸血鬼の召使いルゴールの歌声とは?
奇怪な廃墟オヨヨ城が秘める謎は何か?
〈オヨヨ大統領シリーズ〉第3作。


今回の巻にルミの妹のリサがいきなり登場。この子の活躍が今回の見所のひとつでもある。
オヨヨ大統領がルーマニアの貴族の末裔だったり、オヨヨコネクションという麻薬ルートを組織していたり、いろいろ人となりが明らかになってきた。
オヨヨ大統領ってのは宇宙の支配者になろうとしているそうだ。それにしてはなかなかマヌケなところがあり、あまり憎たらしくない。部下もマヌケな人材揃いだしね。

この3作目で、子供向け作品としては完結。残りは4作品あるが大人向けのものとのこと。
大人向け作品の方がオヨヨ大統領の活躍する余地がありそうな気がする。
ともあれ、以後の作品を読むのが楽しみである。
(2009.12.26読了)

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テーマ : 児童書
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小林信彦 『怪人オヨヨ大統領』

小林信彦著 『怪人オヨヨ大統領』(角川文庫/1974年刊) を読む。
怪人オヨヨ大統領
大沢ルミが小学校6年生になった夏休み――
テレビドラマ作家のパパは、女性週刊誌「ギャング・レディ自身」の依頼で、東南アジア、ズビズバ国から内乱をさけて日本に亡命したジャン・ジャン姫にインタビュー、ある銀行の地下金庫から一枚の絵を盗むことを頼まれた。
冒険心に駆られたパパは大張切り、首尾よく計画に成功したが・・・・またもや姿を現したオヨヨ大統領。
秘密組織<スカンク>を率いて地球征服を目指す変幻自在の大統領、おかしな名探偵グルニヨン、ズビズバ国の反逆者ワル・ノリ首相・・・・・・4個のダイヤをめぐる三つ巴の争いは始まった。
「オヨヨ大統領シリーズ」第2作。


最初からおしまいまでドタバタの連続で息をつかせぬ展開。
今作で登場のグルニヨン探偵がインチキ臭くバカバカしいのが良かった。
オヨヨ大統領もけっこう活躍してはいたのだが、完全にグルニヨン探偵に食われちゃった感じで印象が薄かった。
前作にも出ていたニコライ、ニコラスのコンビも登場し、彩りを加えていた。
もうちょっとオヨヨ大統領を前面にフューチャーして、いろいろな悪企みをする話も読んでみたい。
作中ではジャン・ジャン姫は美女だと書かれているのだが、イラストを見るかぎりではどうも美女に見えないのが笑えた。
(2009.12.13読了)

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横溝正史 『芙蓉屋敷の秘密』

横溝正史著 『芙蓉屋敷の秘密』(角川文庫/1978年刊) を読む。
芙蓉屋敷の秘密
夜目にも鮮やかに咲き誇る白い芙蓉の花に包まれた石畳を踏みしめながら、巡査は玄関へ入った。人の気配はない。暗がりの中をマッチの明かりで探りつつ、巡査は問題の部屋にたどり着いた。
手探りでスイッチを押すと、バラ色の光が部屋いっぱいにあふれる。だが次の瞬間、彼は殴られたような驚愕に打たれた。
敷き詰められた派手な模様の絨毯の上に、体をくの字に折り曲げ、胸から鮮血をしたたらせた女の変死体が・・・
表題作含め、全8篇収録。


『芙蓉屋敷の秘密』(初出:昭和5年5月~8月 新青年)
素人探偵・都築欣哉と、小説家・那珂省造が、ホームズ&ワトスンよろしく殺人事件に挑む。
「しばらく待ってくれたまえ。ぼくは自分の眼で見とどけたことでないといいたくないんだ」みたいに、ホームズが言いそうなセリフをちりばめて、スイスイと事件を解決。
モダンな味わいな探偵小説。

『富籤紳士』(初出:昭和2年3月 朝日)
自堕落な生活をしている青年が、結婚相談所のおかみにそそのかされ、富籤結婚というのをさせられる。富籤を買うのは、なるべく縁遠そうな女。こういうナンセンスな感じ、いいなあ。

『生首事件』(初出:昭和3年5月 講談雑誌)
女の生首が小包で配達される。当然○○トリックの話なのだが、ずいぶん以前から首切りの話書くの好きだったのだねえ。
(2009.9.24読了)

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横溝正史 『仮面舞踏会』

横溝正史著 『仮面舞踏会』(角川文庫/1976年刊) を読む。
仮面舞踏会
夏の軽井沢で起こった殺人事件。被害者は画家の槇恭吾で、有名な映画女優鳳千代子の三番目の夫である。死因は青酸中毒だった。
華麗なスキャンダルをまき散らす鳳千代子は五番目の恋人、大財閥の飛鳥忠熈の別荘でこの事件を知り愕然とした。過去二年間、毎年一人彼女の夫だった男が謎の死を遂げていたからだ。
たまたま知人の招待で軽井沢に来ていた金田一耕助は、早速事件解決に乗り出してゆく・・・


物語の最初から、解決直前まで、張り巡らせる伏線につぐ伏線。細かい伏線まで、最後にはきちんと処理しているのは、さすが横溝正史であると思った。
この作品では、金田一さんが事件に関わってから、新たに殺人が起きなかったのでほっとした(笑)
主要な登場人物の中から犯人を捜せばよいので、けっこう分かりやすくはあったけど、途中に挟み込まれる色々なエピソードが楽しく、けっこうな長篇のわりには読み飽きない。

犯人が分かる場面、金田一さんが関係者を一同に集めて・・・というのではなく、なんとなく皆が「あいつが」と分かってしまう。金田一さんにもっと見せ場を作ってあげればいいのにね。
そういや、興奮してどもってる場面はあったけど、フケを飛び散らす場面が無かったなあ。
(2009.9.9読了)

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半村良 『闇の中の系図』

半村良著 『闇の中の系図』(角川文庫/1979年刊) を読む。
闇の中の系図
天才的な嘘つき朝辺宏一は、味気ない工員暮らしの毎日から逃れるため、嘘を繰り出し自分を飾っていた。
ある日、そんな宏一の才能を必要とする秘密組織があらわれた。
それは古代より日本の歴史を陰からあやつる謎の一族“嘘部”の集団〈黒虹会〉だった。
そして宏一もまた、闇の中に続く血筋の一人であることを知らされた・・・
現代に蘇った“嘘部”の活動が開始され、日本の永続的繁栄を目指した雄大な嘘が、いまや国際的なスケールで展開されていった――


著者会心の嘘部シリーズ第一弾!
プラスチック工場に勤める宏一が、嘘部一族の組織に入るまでがいいねえ。
日本にも階級社会が存在するのだということを、実に的確に、そして否が応でも読者に認識させ、そこを脱出させるために用意されている“嘘部”という闇の組織。
読む者をワクワクさせるテクニックを心得ている。

そして“嘘部”の歴史講義のくだり。
これでもかと史実の中に“嘘部”の痕跡を提出する。
よく考えつくなあと思いながら、楽しく読める。
仏教が、古代朝廷の統治システムとして輸入されたという話や、「白雉」という年号の由来から嘘部の存在を示唆するなど、一読した限りでは無理のない説のように感じる。
この、“ウソ小説”の中の最大のウソがこの部分で、リアル感のあるウソというのは本当に始末に負えない。だって、信じてしまうように描いてるんだもんなあ。

めでたく嘘部組織の一員になった宏一が仕掛ける国際的スケールの嘘は、虚構感がアリアリすぎるので読んでる緊張感がゆるんでしまうきらいがある。
この作品では組織の全貌がしっかりと描き表されていない印象が。続篇でそこらのことがしっかりと出てくるのかな。
(2009.2.20読了)

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小林信彦 『オヨヨ島の冒険』

小林信彦著 『オヨヨ島の冒険』(角川文庫/1974年刊) を読む。
オヨヨ島の冒険
小学5年生の大沢ルミは、冬休みも間近いある日、ニコライ、ニコラスという変な外国人に誘拐されたが、あやうく難を逃れた。
その翌日、今度はルミの父親・和彦が誘拐された。
大沢家に魔手をのばす〈秘密組織〉は何か?その首領オヨヨ大統領とは?
「オヨヨ大統領シリーズ」第1作。


この作品、初出は1970年3月に朝日ソノラマから。ということは執筆は1969年かな。
というのは、出てくるギャグが古い!TV-CMのフレーズや流行語などが、多分ふんだんに出ているのであるが、伝わってこない。
多分というのは、オレがおぼろげながら聞いたことのある言葉は少しで、あとは知らない言葉がギャグとして使われているため。
笑いどころが掴みきれなく、そうそう笑えなかったのは残念であった。
ゆうきまさみ著『究極超人あ~る』に描かれてあったが、CMネタというのは風化が早い。実におそろしい。
今作は第1作目なので、オヨヨ大統領の人となりがまだよく解らなかった。2作目以降に期待したい。
(2009.2.18読了)

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テーマ : 児童書
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マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー 『密室』

マイ・シューヴァル/ペール・ヴァールー著 『密室』(角川文庫/1983年刊) を読む。
密室
銃創も癒え、ベックは15ヶ月ぶりに登庁した。
警視庁は連続強盗事件の発生で大騒ぎの最中。
ベックは特捜班の激務から外され、比較的らくな、孤老の変死事件の捜査を担当。
その腐乱死体はアパートの一室で発見された。
初動捜査で自殺と考えられていたのだが、ベックはきわめて重大なことが見落とされていることに気が付いた。
部屋は完全な密室だったのに、老人の胸を撃ちぬいた拳銃が室内になかったのだ。
社会からも捜査陣からも忘れ去られた事件を、ベックは丹念に洗ってゆく。
一方、神出鬼没のギャングを相手に、コルベリやラーソンたちの苦闘が続く。
そして二つの事件は意外な方向に進展して――


現代スウェーデン社会を切り取ったシリーズ第8作。
原著の出版は1972年だが、福祉国家として知られるスウェーデンの貧困について描かれていたりして、いづこも同じという感慨が湧く。
この作品でのベックは、完全に脇役にされた感じがする。
主役はシリーズ初登場のステン・“ブルドーザー”・オルソンという地方検事。
銀行強盗事件が大好きなこの人物、シリーズレギュラーのコルベリやラーソンを従えて堂々たる怪演ぶりを発揮して、大いなる存在感をみせていた。
ブルドーザー・オルソンが派手に活躍している一方、ベックは単独捜査で地味に活動。
そのくせちゃっかりと、捜査で知り合うレア・ニールセンという女性といい雰囲気になる。
だが一緒にベッドに入るも、「でもお楽しみはここまでね」と言われて何もせず寝ていた。
人間五十過ぎると裸でもプラトニックになれるのか・・・
別々の事件が、意外な展開によって繋がりをみせていく、警察小説によくあるパターンの話であるが、ひとひねりあるので面白い。
シリーズでも上位の人気作品だというのもうなずける。
(2009.2.5読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
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筒涸屋

Author:筒涸屋
札幌市出身・在住
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