江戸川乱歩 『十字路』

江戸川乱歩 著 十字路 江戸川乱歩推理文庫29』(講談社文庫/1988年刊) を読む。

美しい秘書との結婚を夢見る商事会社社長は、逆上した妻を誤って殺してしまった。
友人の商業美術家と自分の妹との結婚に反対する売れない絵描きは、泥酔している。
その夜、神宮外苑の十字路で二つの運命が交錯した!
売れない絵描きと瓜二つの私立探偵・南が、運命の糸を操り始める!


この作品は、探偵作家クラブ会員渡辺剣次氏の考えたプロットを乱歩が執筆した、実質的に合作だったようだ。
倒叙形式で書かれているのが、乱歩的には新味となっている。
話としては、妻を殺してしまった会社社長の事件と、泥酔のうえ頭をぶつけた画家がその後脳内出血で死亡した事件とが交錯するという、なかなか凝った内容。
社長が妻の死体を車で運んでいる時に接触事故を起こし、相手方と示談中に、画家がタクシーと見誤って車に乗り込み、そのまま絶命。
示談が済み、再度車を走らせた社長が、途中点検のために車を止めて、ひょいと後部座席の床に倒れている画家の死体を発見した時の驚きは察するに余りある。
頭の周りに?マークが巡ったであろうなあ。
ついでということで二体の死体を始末するのだが、この辺の描写は焦燥感が伝わるいい場面であった。
死体は、数日後に水入れされるダムの湖底に隠すのだが、これはかなりなアイデアであろう。

各登場人物の造形がどれもイマイチで、魅力的に感じる人物がいなかったのは残念だ。
画家の事件の方面から絡んでくる探偵の南という男は、依頼人である画家の妹に邪な気持ちを抱くが、抱くだけという、この設定いらなくない?と思う男である。
のちに、妻殺しの社長を強請るので、悪漢探偵という人物像なのだろうが、実に中途半端。
しかも社長に殺されるし。

筋立てが乱歩自身の手によるものではない、という先入観があるせいか、物語の進行が淡々としている感じがする。
死体の始末の場面や、探偵と対峙する場面など、手に汗握るところもあるにはあるが、全体的にドライな印象であった。
(2015.11.2読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

山口雅也 『キッド・ピストルズの慢心』

山口雅也 著 キッド・ピストルズの慢心 パンク=マザーグースの事件簿(講談社文庫/2000年刊) を読む。

もうひとつのイギリス、パラレル英国で活躍するパンクス出身の捜査官キッド・ピストルズとピンク・ベラドンナ。
二人の周りで起こる事件は、いつも懐かしい童話《マザーグース》を連想させるのだった。
スタイリッシュな世界、美しい論理で本格の頂点を極める、マザーグース・ミステリ連作シリーズ。


キッド・ピストルズの慢心 ーーキッド最初の事件ーー
キッド・ピストルズが語り手となっているイレギュラーな一篇。
キッドの生い立ちが語られていて、アイルランド人の父と日系二世の母から誕生したそうな。
貧困な家庭に育ち、髄膜炎という病気に患り、いろいろあってパンクスに。
ピンク・ベラドンナとは刑事になる前からの付き合いであったのだね。
17歳の頃に遭遇した事件により、探偵稼業に足を踏み入れたキッドであった。
「未来はない」(ノー フューチャー)とか「可愛い空っぽちゃん」(プリティ ヴェイカント)などというフレーズを出して来るのも憎いところ。

靴の中の死体 ーークリスマスの密室ーー
話の冒頭、眉間に皺を寄せ、両目をきつくつぶり、少し開いた唇を突き出しているピンク・ベラドンナに対して、「気分でも悪いのか?」「吐きたいんじゃねえのか?」「ここでぶちまけるのだけはやめてくれよな」と反応するキッドの冷淡さ。
ピンクってクリスマスだからといって、キス待ちするようなキャラクターだったっけか。
“すっぴんだと笑った猫のように見えるあどけない顔”だというのも意外だった。
以前読んだシリーズから受けた印象では、もっとなんか違う感じだったのだが。
事件解決後、証拠を見つけるきっかけを作ったからとご褒美のキスをねだるピンクに、仕方なく顔を近づけるキッドであったが、二日酔いのピンクが気持ち悪くなり……というのは、期待通りの展開であった。

さらわれた幽霊
ビクトリア朝風な降霊術のシーンが出てきたりして、このパラレル英国は時代がごた混ぜになっていて楽しそう。
キッドが何気に自発的に裏取り捜査をして事件を解明。
名探偵士のブル博士も、重宝がってこのパンク野郎を使うわけですな。

執事の血
いつものブル博士ではなく、メルクール・ボワロオ探偵士と同行しているキッド&ピンク。
ちなみにボワロオ先生はベルギー人ではなくスイス人だそうです。 
訪ねていった先の伯爵とその執事の様子が変なので、「この手の話はこういうトリックだな」と思いながら読んでいて、実際そうだったので、わりと普通だったなあと思っていたら、最後にもう一段階ひねりが入った。
いと悔し。

ピンク・ベラドンナの改心 ーーボンデージ殺人事件ーー
巻末を飾るのは、ピンク姉さんの語りによる、刑事になったいきさつ。
ピンクはイギリス人ではなく、フランス人の母とスカンジナビアのどっかの父からパリにて生を受けたとのこと。
放浪途中、ドイツはハンブルクのSMクラブにて女王様の修行をしたという。
“ピンク・ベラドンナ”というのはクラブでの源氏名だそうな。
その後、ロンドンへ渡り、キッドと知り合ったり、パンク&ボンデージファッションのブティックの店番したり、殺された友人の敵を取るために犯人探しをしたりした。
そして事件で知り合ったドMの探偵士を脅して、キッドともども首都警察に潜り込み刑事になったとさ。 
B・C級映画やボンデージについての蘊蓄が、特にためにはならないだろうが楽しかった。


この連作短篇集にて、キッドやピンクの背景について語られたことは、このシリーズの作品世界の広がりを感じることができたが、いつか、この世界のそもそも論である「なぜ事件はいつもマザーグースの歌にちなんでいるのか」ということに言及されることはあるのだろうか?
(2015.9.26読了)

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ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『私は作中の人物である』

清水義範 著 私は作中の人物である(講談社文庫/1996年刊) を読む。

小説の中にある“私”とはいったい誰のことなのか。
小説上のこの正体不明の登場人物に鋭く迫る異色の表題作のほか、著者初の官能小説から食べ物ガイド、時代小説にいたるまで、ものの名称や物語の語り口など“小説の約束事”を次々と壊してみると……。
笑いで切り刻む清水流「ブンガクのススメ」。


私は作中の人物である
小説における「私」について考察する話。
一人称の場合や、ホームズ譚におけるワトスン君などの事例などはすんなり読めたが、私小説の説明以降は何やらよく分からん感じになった。
こういう、意味があるのか無いのかどうでもいいことを面白く語る天才だと思う。

魚の名前
その土地ごとに呼び名が違うものについて考察する話。
前半に、いかにもありそうな例を出しておいて、後になるにつれて違いがエスカレートする安定の展開。

どえりゃあ婿さ
木下藤吉郎の舅(つまりねねの父)浅野範右衛門の物語。
婿殿が思いがけない程の大出世をしてしまい、ちょっとうろたえ気味な感じが微笑ましい。
会話部分が名古屋弁なのが、土着的な雰囲気を出していてとても良い。

全国まずいものマップ
“名物にうまいものなし”がテーマ。
「今、郷土料理と言われているものは、全国には広まらずに、その地方だけにとどまっているマイナー料理であり、あんまりうまくないから広がらない」という考察は説得力あり。

重箱の隅
懐かしの「カルトQ」をパロった作品。
クイズのテーマが、ある会社の社宅に関することで、超プライベートなことも正解を出す解答者がとても怖い。
笑いと恐怖は紙一重なことを具体的に例示した作品。

保毛田岩の由来
素人郷土史家の論文という体裁をとった話。
清水義範という作家は何事も面白おかしく茶化す天才だなあと思う。

文字化けの悦楽
官能小説家が、原稿をフロッピーにて編集部に送るも、文字化けしている話。
ワープロだのフロッピーだのという単語がえらく懐かしく感じる。
文字化けしてワケ分からん文章になっているにも関わらず、どんな事が書かれているのかなんとなく分かるというのは、官能小説というジャンルの偉大なところだよなあ。

とねちり
落語のいろんな噺から題材を持ってきてゴチャゴチャとくっつけたような作品。
何がなんだか内容もよく分からんのだが、テンポが良くて思わず読み終えてしまった。

船が州を上へ行く
柳瀬尚紀訳『フィネガンズウェイク』が出版されたことに呼応して発表したのであろうなというパロディ作品。
置き換えに使用する漢字のチョイスを下ネタにする作業は大変だったろうなあと感心。
読むというより、文を追っかけるだけで精一杯である。
元ネタの『フィネガンズウェイク』を読んでみようとは決して思わない。

観戦記
夫婦喧嘩の内容を、囲碁の棋譜のスタイルで解説。
言い回しに囲碁の用語がふんだんに盛り込まれてて異常に面白い。
囲碁のことを知らないオレでも楽しいと思ったのだから、囲碁が趣味の人がこの作品を読んだら、のたうち回るほど面白いのではなかろうか。
(2015.8.19読了)

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森雅裕 『椿姫を見ませんか』

森雅裕 著 椿姫を見ませんか(講談社文庫/1989年刊) を読む。

注目の“椿姫”が、大学オペラ練習中に毒死し、実在の“椿姫”を描いたマリー・デュプレシ像贋作事件が23年ぶりに浮上する。
鍵を握る画家は、日本画学生守泉音彦と気まぐれプリマ鮎村尋深の目前で息絶え、第二の“椿姫”も公演初日に死んだ。
そして、第三の“椿姫”尋深が死を仕掛けられた舞台に上がるーーー。


探偵役の主人公・守泉音彦。
新芸術学園大学美術学部絵画科日本画専攻4年。
新芸付属高校時代は声楽をやっていたが、大学で美術に転向。
作者の勢いのある文章だと、何でもないことのような感じなので途中までスイスイ読んでしまったが、高校で声楽やってて大学で絵画(しかも学費免除の特待生!)て、スーパー芸術野郎じゃないか。
だが意外にも、全然イヤな感じがしない好青年な守泉君である。

ヒロイン鮎村尋深。
新芸術学園大学音楽学部声楽科4年。
口の悪いのを顔とスタイルで補って、なお、お釣りがくるような超絶美女。
節々で守泉君に対する好き好き感が出てるのが可愛らしい。

俺たちは互いの存在に対する異性としての認識を故意に無視したがるところがあった。
簡単にいってしまえば、男として女として、意識していることを相手に悟られまいと平気な顔で身体に触れる習慣だったのである。

なんてことを言ってる守泉君の痩せ我慢ぶりに叱咤激励したいところであるが、殺人事件やマネの贋作事件を追わなきゃならなく、何かと忙しいのでしょうがない。

贋作絵が何枚も出てきたり、尋深を狙ったのに違う人物が殺されてしまったり、事件が錯綜して読み応えのある物語であった。
それとともに、オペラの練習風景、日本画についてのウンチクと、読みどころ満載で面白かった。
(2015.7.23読了)

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高橋克彦 『総門谷R 白骨篇』

高橋克彦 著 総門谷R 白骨篇(講談社文庫/2005年刊) を読む。
総門谷R 白骨篇
無残に踏み殺された聆雲の仇を討つべく、総門谷のある早池峰山に向かった和気諒たち。
そこで出会ったのは、冥界の王によって肉体のみを甦らせられた聆雲だった。
魂を失い魔童児となった仲間が、白骨女となった怨魔シバと諒たちを襲う!
伝奇SF傑作シリーズ、哀切の第4幕。


前の巻の「小町変妖篇」を読んだのは、調べてみたら2007年12月だった。
もうすっかりこのシリーズの内容なんかほとんど忘れてるのであるが、そんなことは関係なしに楽しく読めた。
前巻で主人公の和気諒と久遠縄人が、怨魔王に銀河に飛ばされるも復活したらしいのだが、まったく覚えていなく、ずいぶんハチャメチャな物語だなぁと再認識。
今巻では巨大な白骨の化け物と死闘を繰り広げる。
闘いの場面が面白いのは言うまでもないのだが、それ以外の会話だったり情景描写だったりとかも地味に面白く、ワクワク感を掻き立てる物語である。

このシリーズ、どれくらいまで続くのか分からないが、ある程度冊数たまったら通して読まないと全体の構成がよく解らない。
あるいは通して読んでも理解できないかもしれない。
まあ、こういう所が長編伝奇小説の醍醐味でもある。
(2014.5.3読了)

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高橋克彦 『ゴッホ殺人事件(下)』

高橋克彦 著 ゴッホ殺人事件(下)(講談社文庫/2005年刊) を読む。
ゴッホ殺人事件下
盗聴器を自宅に仕掛けられた元恋人・由梨子の身を案じ、塔馬双太郎はパリへ飛んだ。
ゴッホ作品リストの周辺で次々と人が死んでいくなか、日本人画商からオルセーにゴッホの真贋鑑定の依頼が。
塔馬は東京に戻り、数々の謎の真相に迫る。
壮大な国際謀略サスペンスかつ、美術史を揺るがす傑作ミステリー!


上巻は舞台がオランダ、フランスだったのだが、下巻で日本に舞台が移り、話の進み方が勢いよくなってきた。
上巻の最後のほうで登場した塔馬双太郎が、日本に戻ってからきびきびと事件を追う。
一緒に日本に来たモサドエージェントのアジム氏も霞んでしまうフットワークの良さ&推理の冴え。
何かのエッセイで、口調や物の考え方は高橋センセー自身を反映していると書いてるそうであるが、ちょっとカッコ良く描き過ぎでないかい?

物語が進んで、事件の核心に近づいていくにつれ、早く読み進めたいと思わせるところは高橋ミステリーの好きなところだ。

塔馬双太郎よりも、塔馬の片腕となって行動する美術雑誌編集者の杉原の活躍ぶりが楽しい。
まあ、印象としては脂っこい料理をたらふく食ってるだけの中年男なのだが。
(2014.4.11読了)

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高橋克彦 『ゴッホ殺人事件(上)』

高橋克彦 著 ゴッホ殺人事件(上)(講談社文庫/2005年刊) を読む。
ゴッホ殺人事件上 
貸金庫に母が遺した謎のリストは何を意味するのか?
パリ在住の美術品修復家・加納由梨子は「ヴィンセント」の文字を手掛かりに調査するうち、存在すら知られていない膨大なゴッホ作品のリストだと知る。
さらにゴッホの死因について、衝撃的な新説にも辿り着く。
だが同時に由梨子の身に危険が忍び寄る……


相変わらず、“画家+殺人事件”のタイトル作品は大変面白い印象。
ただ今作は上下巻なので読むのが大変。
ゴッホの死の真相についての推理のくだりは、読むとそうとしか思えてこないのがすごい。
ゴッホの死については研究され尽くしていると思うのだが、その間隙を縫うように定説を覆す話をでっち上げる作者の力量に感服。

上巻では一通りの謎が出っきったと思われるので、下巻では事件の追求~謎解きへと一気呵成にいってもらいたいものであるが、まあ二転三転するのであろうね。
(2014.4.4読了)

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森雅裕 『モーツァルトは子守唄を歌わない』

森雅裕 著 モーツァルトは子守唄を歌わない(講談社文庫/1988年刊) を読む。
モーツァルトは子守唄を歌わない
モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死に様を晒す・・・
その陰に策動するウィーン宮廷やフリーメイソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄が秘めたメッセージを解読。
1791年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。
乱歩賞受賞作。


あらすじを読んで、暗号解読がテーマの一つということは解っていた。
で、読み進めていくと、確かに暗号解読する場面はあったのだが、どうもあっさりとした感じで、山場的な扱いじゃないなあと思いながら読んだ。
オレの勝手な想像で、芸術家ベートーベンの突飛な推理や行動で話が進んでいくものと思っていたのだが、“探偵ベートーベン”は丹念に謎を追っていくのであった。
かなり読み進めてから漸く解ったのであるが、この作品はかなりガチなハードボイルド物であった。

オレのイメージするハードボイルドの様式
①物語は一人称
②捜査は足で稼ぐ
③美女のヒロインが出てくる
 概ねその美女とパフパフする

このうち今作品では①②が当てはまっていた。

謹厳実直なベートーベンと、チャラいイメージのチェルニーという師弟のやりとりはユーモラスで、抜群のコンビ芸を見せていた。
このコンビで、例えば「欧州道中膝栗毛」みたいな滑稽本を描いて欲しいと思うほどだ。
(2013.11.12読了)

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山口雅也 『続・垂里冴子のお見合いと推理』

山口雅也 著 続・垂里冴子のお見合いと推理(講談社文庫/2004年刊) を読む。
続・垂里冴子のお見合いと推理
見合いの度に怪事件が発生し、破談になってしまう和風美人の垂里冴子。
続編でも4回のお見合いに四つの事件がついてきた!
老舗旅館に出没する幽霊の正体、肌が荒れるエステティック、七福神盗難事件、象の靴の謎。
史上最も縁遠い美人探偵の活躍が心地よい極上の連作ミステリ。


この巻では我らが空美姉さんが大活躍!
湯煙のごとき事件』では、温泉旅館で死にそうな目にあい、
薫は香を以って』では、冴子姉さんに間違えられて殺されそうになり、
靴男と象の靴』では、駅の階段でてっ転んでヒールが折れてデートに行きそびれたり、死体を発見したりと大忙し。
末っ子の京一も、大学受験に失敗し、浪人中のさなか『動く七福神』では、事件の渦中に巻き込まれたり失恋したりと気の毒な役回り。
それらすべてのエピソードに、主人公たる冴子姉さんは、フワフワと浮世離れした様子でピシピシと事件を解決。
これだけフンワリした主人公もなかなかいないと思うが、主人公だけあって存在感は十分にあるのが嬉しい。
今後冴子姉さんが結婚できるのかどうかは分からないが、歳を取ってもミス・マープルのような感じの名探偵であり続けるような気がする。
(2012.10.6読了)

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江戸川乱歩 『化人幻戯 江戸川乱歩推理文庫26』

江戸川乱歩 著 化人幻戯 江戸川乱歩推理文庫26(講談社文庫/1987年刊) を読む。
化人幻戯
大河原元侯爵夫妻の双眼鏡に映った投身自殺を発端に、次々に起こる青年の変死。
遺留品の中に暗号で書かれた日記を見つけ、それを手がかりに明智名探偵は事件究明に乗りだす。
妖しい侯爵夫人・由美子の存在が浮かぶが・・・
トリック研究の成果を織り込み、1人2役、変身願望を描いた長篇。


乱歩が還暦を機に、若返って小説を書こうと決意し、前々から乱歩の新作を所望していた「宝石」誌にて連載した本格長篇。
発表当時ほとんど反響が無かったのがこたえたようで、数年後「私のすべての長篇と同じく、これも失敗作であった」と自虐的に回想している。

そういう前知識があったので、どんなにヒドイ作品なのだろうかとあまり期待しないで読み始めたのであるが、いやいやけっこう面白かったよ乱歩おじさん。
新味はないかもしれないがトリックもいいと思うし、話の展開もしっかりと本格物であったし。
まあ、わりとすぐに犯人の見当ついちゃうかもしれないけど、物語としても面白かった。

50歳になった明智さんは、相変らずハツラツとしてたのが良かった。
奥さんは病気療養中ということで小林君と二人暮しなのであるが、小林君が少年探偵団の頃と同じイメージなのはなぜなのだろうか?明智さんも年取ったんだから、小林君も青年助手というイメージで活躍させてほしかった。
(2012.7.6読了)

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阿佐田哲也 『先天性極楽伝』

阿佐田哲也 著 先天性極楽伝(講談社文庫/1988年刊) を読む。
先天性極楽伝
究極の悪の道をめざす、痛快ユーモア長篇。
競馬のノミ屋を生業とし、同級生のカン子と結婚した小学生ハルこと春巻信一の新婚旅行先はネリカン(練馬少年鑑別所)だった。
5年後、悪の教室・ガーピー塾を巣立ったハルは、プクプク爺さん、スットン親分、チン夫人らと、3億円をめぐっての死闘を展開する。
青春ピカレスク傑作。


のっけから小学生同士で結婚て!と思って読んだが、別に何か凄い描写があるわけでもなく(あっても困るが)、二人で東京から静岡まで家出した時、ハルが盲腸で入院しカン子が東京に戻り、離ればなれになってしまう。
それから5年後、ハルが東京に戻ってきて物語の本筋が始まる。
物語はカン子がプクプク爺さんから貰った3億円をめぐって、ハルやガーピー先生たちが争奪戦を繰り広げるという、いたって単純な構成。
ハルは行き当たりばったりな行動をしてるくせに、行く先々で知り合った女性とイイことをするという、うらやましいストーリー展開なのであるが、うまいこと話が運びすぎるので、もうひとつ読み応えがなかった気がする。
(2012.5.9読了)

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高橋克彦 『時宗 巻の四 戦星』

高橋克彦 著 『時宗 巻の四 戦星』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
時宗 四
ついに蒙古が来襲した。対馬沖に現れた三万数千人の大船団。
国の命運を賭け、時宗は、時頼の遺した途方もない秘策に出た。
兄・時輔らが率いる九州武士団を軸に、日本軍は蒙古軍と激闘を重ねていく。
誰のため国を守るのか。国とはなにか。
歴史の転換期を生きた男たちを圧倒的迫力で描く怒涛の完結篇!


いよいよ蒙古襲来。
日本史の授業で習った元寇が、こんなにもドラマチックな出来事であったとは。

一回目の襲来(文永の役)の時の日本の作戦は、元軍を大宰府に誘い込むこと。
そのためには対馬、壱岐、博多を見殺しにしなければならないのだ。
闘いつつも負けなければならない作戦なので、悲壮感が漂う。
鎌倉時代の武士の性根のすわったいくさ振りは読み応えあり。
博多での戦闘までは持ってきたものの、元軍が撤退したため、
この襲来では勝ち負けの決着を見ず。

文永の役の後、時輔と謝太郎が元に潜入して、諜報活動をおこなう。
再度大宰府に攻め込ませようとするために、大宰府には黄金が蓄えられているとの偽情報を、
ヴェネツィアから元にやって来て、クビライに仕えているマルコ・ポーロに流す。
黄金の島・ジパング伝説は幻影であった!
そんなこんなで敵の状況なども調べて時輔たちは帰国する。

二回目(弘安の役)の襲来では、高麗からと南宋からの船団の合流がうまくいかず、
おりからの大嵐にも遭い、元軍は(勝手に)全滅する。
ちょっと消化不良な結末であるがしょうがないよね。

時宗は執権という立場だから、鎌倉を離れて戦場に行くことができないので、華々しい見せ場はない。
だが、日蓮と対面するエピソードとか、御家人を鎌倉に集めて演説するところとか、
偉大な人物であるところは十分描写されている。
(2011.5.24読了)

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高橋克彦 『時宗 巻の参 震星』

高橋克彦 著 『時宗 巻の参 震星』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
時宗 参
幕府の重鎮・北条時頼が世を去り、不気味な長い尾を引く彗星が空を流れた。
一族内の暗闘、将軍との対立。重なる試練が若き時宗を襲う。
一方、海を越えて届けられた一通の国書。すでに高麗を手中にしたクビライの狙いはこの国に定まった。
いかに国をまとめ、蒙古軍を迎え撃つか。あとのない戦いがはじまる。


時頼の死去により、北条一族の中で内紛が勃発。
将軍をも巻き込んで(将軍家はいつも執権職とは対立関係にある)
ドロドロとした身内の争い。
戦国時代とか江戸時代のお家騒動なんかに比べると、
公家がからんできての内紛なので、陰湿な印象が濃い。
公家ってのはこういう、足の引っ張り合いの時、
異常に力を発揮する人種だよね。

一族の争いに決着をつけ、時宗執権体制をようやく落ち着かせたが、
いよいよ蒙古から使者が来たり、とにかく慌ただしい。
蒙古は高麗を属国にするは、宋もやっつけつつあるはと凄い勢い。
こっちの方はかまわないでヨーロッパの方にもっと拡大していけばいいのにね(笑)

時宗の兄・時輔は六波羅探題の南方長官として都に赴任。
人員を「百人組」として忍び的な軍団に!
時宗よりも時輔のほうが、読者にとっては胸ワクワクな存在だ。
この巻の最後、「大元」と国号を改めた蒙古に潜入しようと決意する時輔。
ゆけ時輔!がんばれ時輔!!

あ、時宗もそこそこ頑張ってたよ。主人公だもんね。
(2011.5.19読了)

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高橋克彦 『時宗 巻の弐 連星』

高橋克彦 著 『時宗 巻の弐 連星』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
時宗 弐
磐石の執権政治を確立し、幕府の結束を固めた北条時頼。
だが、巨大騎馬国家・蒙古の王クビライが、海を越えてこの国を狙う。
かつてない戦がはじまろうとしていた。
天変地異続く巷では、法華経を説く日蓮が民の熱狂を呼ぶ。
父の志を受け、真に国をまとめる者となれ!少年時宗は若き棟梁として歩みだした。


時頼・時宗父子が、十三湊の安藤氏、博多の松浦党を訪れ、
蒙古襲来に備えるために手を結ぶエピソードが前半のハイライト。
奥州までは徒歩、十三湊から博多までは船と、けっこうきつい旅程。
昔の人は体力あるねえ。

辻説法をしてる日蓮との対面も味のあるエピソードだった。
日蓮という坊さんは、いろいろ凄いね。
頭が良すぎて、世間と軋轢を生むタイプの人だったんだろうな。

時宗は次男なのであるが、次期北条家得宗(一族の一番偉い人)に指名されている。
長男としては面白くないところではあるのだが、
この長男・時輔という男がいい奴なんだよねえ。
時頼と時輔の対談の模様はかなりの感動をよびます。

この巻で時頼死去。
次巻よりいよいよ時宗が主人公となるのか?
(2011.5.18読了)

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高橋克彦 『時宗 巻の壱 乱星』

高橋克彦 著 『時宗 巻の壱 乱星』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
時宗 壱
源頼朝亡き後、北条氏に権力が移り、抗争が続く鎌倉。
若き北条時頼は、病に臥した兄の経時に、棟梁になれと告げられた。
北条を継ぐ者に安寧はない、地獄の道だ――
内部闘争に血を流しても、国のあるべき姿を求めねばならぬ。
武家政治を築いた父子を描き、「国を守るとは」を問う巨編、ここにはじまる!


『時宗』というタイトルではあるのだが、1,2巻は父親の時頼が主人公。
で、時頼というひとが、まるで小説のような政治家(笑)
国を思い、民を思い・・・・
ま、現代の政治家諸氏に対する強烈な皮肉ともとれる人物造形ですな。

第1巻の物語は、執権職を兄の経時(毒を盛られて死にそう)から受け継ぎ、
体制を磐石なものへとしていく途中までを描く。

前将軍と、同じ北条一族と、三浦氏が組んで、経時-時頼系統をひっくり返そうとするのを
逆にやっつけるのであるが、政治的駆け引きがたいへん面白い。
時頼のブレーンである北条実時の策略家ぶりや、弟分の安達泰盛の憎めない性格がよい。
それと、博多と宋を股にかける海賊の謝太郎(しゃ・たろう)。
宋人と日本人の混血である太郎の活躍は見逃せない。
裏柳生と服部組を合わせたような裏舞台での活躍ぶりは最高である。

第1巻の冒頭から克彦ワールドに一気に引き込まれる作品だ。
ちなみに時宗はこの巻の最後の方で産まれた。
(2011.5.16読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『世にも珍妙な物語集』

清水義範 著 『世にも珍妙な物語集』(講談社文庫/2004年刊) を読む。
世にも珍妙な物語集
新聞集金人やファミレスのウェイトレスをつとめるお年寄りたちが、客と絶妙な掛け合いを繰り広げる『接客セブンティーズ』
繁華街にできた不思議な行列にとりあえず並ぶ『マツノギョウレツケムシ』
他、CM、心理テスト、旅行など、日常生活の中にひそむ面白さをつかみ出した会心のユーモア小説。
全13篇収録。


一応、全部の作品に感想を述べました。
(2011.1.21読了)

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ジョルジュ・シムノン 『メグレ警視のクリスマス』

ジョルジュ・シムノン 著 長島良三 訳 『メグレ警視のクリスマス』(講談社文庫/1978年刊) を読む。
メグレ警視のクリスマス
クリスマスの朝、メグレ警視は向かい側のアパルトマンに住む二人の夫人の訪問を受けた。
足の骨折で寝ている少女の寝室にサンタクロース姿の人物が侵入し、
奇怪な行動をとった形跡があるというのだ。
メグレは捜査を開始した・・・
表題作含め全3篇収録。


メグレ警視のクリスマス
自宅の向かいのアパルトマンで起きた事件を捜査するメグレ警視。
家から電話で捜査の指揮を執るメグレ。
というか、クリスマス休暇中までお仕事ご苦労さまです。
この作品にはメグレの他に、リュカ、トランス両刑事が登場するが、相変わらず皆さん捜査中に飲んでますなあ。
りんぼく酒ってどういう酒なんだろう。

メグレと溺死人の宿
パリからさほど離れていないヌムールという町に来ていて事件に関わったメグレ。
短篇なので、丹念という感じではないが、丁寧に一つづつ疑問を解いていくメグレ警視。
地味ながらも本格物。いい作品だ。

メグレのパイプ
メグレのオフィスに面会にきた母子が帰ったあと、お気に入りのパイプが紛失。
ほとんどパイプを取り返すのが目的で事件を捜査。
10年前にメグレ夫人から誕プレでもらった愛用の品なのだ。
個人的利害に関わることなので、不機嫌ながらも推理は冴える(笑)
クライマックスでは珍しく格闘場面もあり、体を張って事件解決。
メグレ夫人が警視に対して「気にかかっていることがあるみたいね、メグレ」
などと自分の夫を苗字で呼んでいたが、自分だってメグレじゃん(笑)
(2011.1.16読了)

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江戸川乱歩 『吸血鬼 江戸川乱歩推理文庫12』

江戸川乱歩 著 『吸血鬼 江戸川乱歩推理文庫⑫』(講談社文庫/1988年刊) を読む。
吸血鬼
消える死体、暴かれる墓地、盗まれる棺、花氷にされた美女、怪しの菊人形・蝋人形、風船での逃走、モーターボートでの追っかけっこ・・・
無気味に美男美女を脅かす、唇のない骸骨怪人の飽くなき執念!
名探偵明智小五郎、恋人の文代さん、小林少年が謎に挑んで大活躍するホラー活劇小説の傑作。


初出は報知新聞:昭和5(1930)年9月~昭和6年3月
『魔術師』事件のヒロイン・文代さんが助手として登場
(今回の事件後に、婚約していることが新聞に載る。ヒューヒュー
そして小林少年が初登場!
〔明智物〕の中でも重要な1冊だ。

ストーリーのほうは――
新聞連載による通俗物ということでハチャメチャな感じになっちゃってるのでは?
と危惧していたのであるが、意外とちゃんとしてた(笑)
ただ、物語冒頭の温泉宿のエピソードと、舞台が東京に移ってからの話が
スムーズに連結してないというか、方向性が違っていってる気がする。
ちょ~っと手探りで連載始めすぎなんでないかい?

乱歩の悪いクセが十分に出てるというか、次々に派手な演出で犯人と明智さんの対決を描くのだが、そしてそれは明智さんのカッコよさが存分に描かれていて気持ち良いのだが、結局犯人が分かり動機が明かされる段になると、とたんに物語がショボくなってしまう。
動機が普通なんだよね。
途中の犯人vs明智さんの対決が荒唐無稽なハデハデ路線で描かれているので、最後拍子抜けしてしまうのだよねぇ。
(2011.1.1読了)

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清水義範 『お金物語』

清水義範著 『お金物語』(講談社文庫/1994年刊) を読む。
お金物語
金(かね)を発明したときから、人類のさまざまな不幸せは始まった―― 
ひとの儲けを皮算用する「他人の懐」や相続をめぐるドタバタを描く「被相続人」ほか恋愛、結婚、形見分けとお金が生み出すペーソスを明るく笑いのめす12篇。


お金をテーマにした短篇集。ストレートな小説あり、エッセイ風小説あり、寓話スタイルあり、まあいつものようにいろいろなスタイルで楽しませてくれている。
初出の時期がバブル期だったのだろう、『貧乏な彼』の内容は当時を思い出させる。オレも実際、この物語の登場人物のように、社会人1年目よりも学生の頃のほうが金まわりがよかった。
『他人の懐』という話はサラリーマンSF。こういう毒にも薬にもならない話は大好きだ。
『被相続人』のようなドタバタ小説も面白い。物語を楽しみながら相続に関する知識も得られた。
『愛と希望』のような、哀しい話は苦手だ。

お金って、無いよりは有るほうが絶対幸せだよねえ。
オレは “世の中金で概ね解決できる” “金で買えない物はほとんど無い” 党です。
「金があり過ぎるってのも不幸なものだよ」とか言う身分に、なれるものならなってみたい。
(2010.9.28読了)

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諸田玲子 『笠雲』

諸田玲子著 『笠雲』(講談社文庫/2004年刊) を読む。
笠雲
明治維新後、富士山麓の開拓に乗り出した清水次郎長。
一の子分の大政こと政五郎は新時代の中で「夏火鉢」扱いに甘んじていたが、開墾現場の仕切りを任され一筋縄ではいかない男どもをまとめあげていく。
だが動員された囚人の脱走騒ぎに続き、古参の子分・相撲常が変死。
事件のからくりに気づいた政五郎の怒りが爆発する!


幕末の大侠客、次郎長一家が維新後、富士の裾野の開拓に乗り出す物語。
「開拓」という言葉を見ると、こちとら原生林を切り拓き、真冬の猛吹雪に震えるという、北海道式なイメージを持ってしまうが、さすが静岡県は温暖な地域だねえ、北海道開拓よりも早いスピードで開墾が進んでいきます。
維新後すっかり脱力してしまっていた大政が、次郎長から開拓の仕切り役に指名され、慣れない仕事ながらも開墾事業をすすめていく様子はなかなかのものである。
相撲常が騙されたうえに犬死にする場面から最後までは、息もつかせぬ感じで読ませる。
テーマが地味なわりには面白く読める作品であった。
(2010.8.27読了)

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山口雅也 『垂里冴子のお見合いと推理』

山口雅也著 『垂里冴子のお見合いと推理』(講談社文庫/2002年刊) を読む。
垂里冴子のお見合いと推理
垂里家の長女・冴子、当年とって33歳、未婚。
美しく聡明、なおかつ控えめな彼女に縁談が持ち込まれるたびに起こる事件。
冴子は事件を解決するが、縁談は流れてしまう・・・・
見合いはすれども嫁には行かぬ、数奇な冴子の運命と奇妙な事件たちを名人上手の筆で描きだす、特上の連作ミステリー。


著者の作品世界においては異常ともいうべき「普通」な作品。
オレは主人公の冴子姉さんよりも、次女の空美姉さんに魅かれた。

ホームドラマに推理要素を加えた感じの世界観で、ともすれば地味な作品になるのだろうが(いや実際、著者の作品の中では地味なほうだと思うが)、ちらちらと笑いも入れて楽しい雰囲気になっている。

全体的にふわっとしていて、のんびり読める作品であった。

(2010.8.15読了)

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山口雅也 『マニアックス』

山口雅也著 『マニアックス』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
マニアックス
孤島で独り漂着物を収集する女性。不気味なコレクションに秘められた彼女の正体と過去の真実とは?(「孤独の島の島」)
少年が目撃した異星人による殺人事件の真相は?(「次号につづく」)
団地で頻発する幼児墜落死の謎とは?(「割れた卵のような」)
他、恐怖と驚愕に彩られた絶妙巧緻の傑作短篇集。7篇収録。


この本に収録の作品は、多くSF寄りのもので、非常に面白かった。
特に「次号につづく」「割れた卵のような」「エド・ウッドの主題による変奏曲」といったところが、SF味が強くよろしい。
「人形の館の館」は、密室物の本格短篇の装いであるが、SF的なオチになっていて、これもよかった。
ドールハウスについてのウンチクもふんだんで、自分に興味の無いものの知識を補充できてためになった。
(2010.7.26読了)

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清水義範 『似ッ非イ教室』

清水義範著 『似ッ非イ教室』(講談社文庫/1997年刊) を読む。
似ッ非イ教室
英語には何故、単数と複数があるのか。
美容院に行く男は前もって洗髪すべきか否か。
日常生活にはびこる素朴な疑問やいじましい矛盾について、名物コラムや辛口批評のスタイルをパスティーシュして綴ったエッセイまがいの異色短篇集。
28の作品に練りあげられた嘘と真実の駆引きが巻き起こす笑いの大洪水。


さまざまな傾向のエッセイの体裁をとった小説集。
いかにもホントっぽい感じの話があったり、完全にネタだとわかる話があったりバラエティに富んでいる。
何回か見たことのある、丸谷才一氏の文体模写もあった。
出だしは普通に始まって、だんだんホラ話になっていくタイプの話が面白かった。
最初っからネタだなと分かるものは、オチが弱い気がした。
身辺の腹の立つことを語っていたのに、パラレルワールドネタで終わる『けしからん』、雑誌の登場作家近況欄に載せる話題が無くて困っているという『近況』といった話が楽しかった。
(2010.4.9読了)

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山本一力 『深川黄表紙掛取り帖』

山本一力著 『深川黄表紙掛取り帖』(講談社文庫/2005年刊) を読む。
深川黄表紙掛取り帖
カッコイイ奴らが、金に絡んだ江戸の厄介ごとを知恵で解決する裏稼業。
定斎売りの蔵秀、長身男装の絵師・雅乃、文師・辰次郎、飾り行灯師・宗佑の4人が力を合わせ、豪商・紀伊国屋文左衛門とも渡り合う連作短篇集。
全5篇収録。


時代は元禄。江戸バブルの真っ只中。第一話「端午のとうふ」で颯爽とデビューした蔵秀チーム。
仕入れすぎた大豆の処理を雑穀問屋から相談されて、イベントを仕掛けて全部売り切ってしまう話。
いってみれば江戸時代版の広告代理店だ。
仕入れ過ぎの理由に恐喝がからんでいたり、裏取り調査に侠客の親分に頼ったりと、ミステリーの趣向もあり、小気味よい物語になっている。

第二話「水晴れの渡し」では、いくつもの事件が一本の線につながるという、もうこれは完全に推理小説だ。
永代橋建設に伴う、渡し舟屋の株売買の顛末が面白い。

第三話「夏負け大尽」では紀伊国屋文左衛門が登場。
紀文が持つ材木を、別の材木商に売る仲介をする蔵秀。この話ではブローカーだね。
まっとうな商取引の裏に、紀文の思惑を見破る蔵秀。なかなか鋭い。

元禄期を象徴する一人、柳沢吉保も登場。
時代劇の経済小説は生々しさが薄れるのでいいかも。
歴史とお金について学べるので一石二鳥だし。
(2010.3.11読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

筒井康隆 『ウィークエンド・シャッフル』

筒井康隆著 『ウィークエンド・シャッフル』(講談社文庫/1978年刊) を読む。
ウイークエンドシャッフル
表題作をはじめ、いずれ劣らぬ抱腹絶倒、奇想天外、13の傑作短篇。
ドタバタ、狂気、ナンセンス、のなかに隠された社会批評、未来への洞察、そして人間の理性や感情への鋭い風刺!
読む人の想像力によって、どのようにも読める類い稀な作品集。


表題作『ウィークエンド・シャッフル』は、まるでアドリブで書いているような展開が魅力的な作品。
かなりテンションが高く、この作品を執筆するのはかなり体力使っただろうなあ。
こういう傾向の作品には必ずエロネタが含まれる気がする。

『佇むひと』『さなぎ』はワンアイデア作品であるが、社会風刺作。
著者の社会風刺はとても鋭いので、読むとかなり心が痛む。

『「蝶」の硫黄島』のようなドタバタ作品を読むのは楽しい。
といっても、風刺の精神はしっかり含まれてるけどね。
(2010.2.21読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

高橋克彦 『浮世絵鑑賞事典』

高橋克彦著 『浮世絵鑑賞事典』(講談社文庫/1987年刊) を読む。
浮世絵鑑賞事典
世界に誇るべき近世日本の文化財である浮世絵は、日本特有の、そして庶民の芸術である。
その歴史、代表的絵師のプロフィールと作品、技術用語など、浮世絵鑑賞に最小限必要でかつ充分な事項を読み物風に展開。
事典としても、いつでもどこでも使えるユニークな「浮世絵ハンドブック」


高橋センセーがまだ作家になる前に著わした、浮世絵に関する事典。
それぞれの絵師のプロフィールや作品紹介などは、やや類型的な言葉遣いがみられるものの何か新しいことをしてやろうという気概が伝わってくる。
素人にもおなじみの絵師の紹介もさることながら、この本で初めて知ったような人物の紹介にもより力を入れてるようで好感のもてる作りに仕上がっている。
「浮世絵の知識」の章では、絵ではなく彫りの技法についてや、紙の版型と寸法についての解説など、マニア度が深い項目が並んでいたりして、キメの細かい事典となっている。
何より文章が読みやすく書かれていて、後年売れっ子作家になる下地はこの頃からできていたのだなあと納得。
文庫なので絵の迫力は薄いけれども、手元に置いてて後悔のない一冊だ。
(2009.12.3読了)

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テーマ : 専門書
ジャンル : 本・雑誌

清水義範 『「青春小説」』

清水義範著 『「青春小説」』(講談社文庫/1992年刊) を読む。
「青春小説」
タイムスリップした過去は、あの三億円事件の直前だった。犯人からカローラを奪うことは可能なのか?
レトロも魅力の『三億の郷愁』に、作家になる覚悟を決めて上京した青年のドタバタを描いた『灰色のノートからⅠ・Ⅱ』を収録。


『三億の郷愁』
昭和59年から昭和43年にタイムスリップしてしまう主人公二人組。
近い過去にスリップする話は、登場人物がその時代の世の中のことを記憶していたり、生活するのもある程度支障なくできたりするので、わりと好きな設定だ。
この作品では昭和43年夏~冬の世相とか流行とかいろいろ描かれていて、(自分が生まれる前のことだが)何となく懐かしさを感じる。
三億円事件の犯人から三億円を奪うくだりは、スリリングでかなり面白かった。

『灰色のノートから』
『Ⅰ』は大学四年の、『Ⅱ』は卒業後のことを描いた著者の自伝的小説。
学生から社会人になろうとする時期のフワフワ感などが、自分もかなりフワフワしていたので、いろいろ当時の自分を思い出しながら読んだ。
今振り返ると、「ああすればよかった」「こうすればよかった」ことがたくさんありすぎて、あまり思い出したくはない時期なのだけど。
(2009.11.18読了)

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高橋克彦 『京伝怪異帖 巻の下』

高橋克彦著 『京伝怪異帖 巻の下』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
京伝怪異帖 下
いまや希代の人気戯作者・山東京伝となった伝蔵。
吉原の馴染みの遊女・菊園と所帯をもったが、その恋女房の様子がおかしい。蔵の中で眠りこけたり、「墓参りに行く」と叫んだり。悪霊の仕業か物の怪の導きか・・・
伝蔵の活躍が光る江戸の怪奇事件簿。


巻の下では二つのエピソードを収録。
「悪魂」は怪談噺。伝蔵の女房のお菊に、吉原時代の知り合い萩野の怨霊がとりつく。
体を張って怨霊を成仏させようとする平賀源内たち。
この話はちょっと怖かった。

「神隠し」は佐竹藩で起こった神隠しのからくりを源内が解く。
占いをする修験者のインチキは、よく必殺シリーズなどで見受けられる時代劇の定番ネタ。
そのインチキに乗っかって源内は今度は神隠しにあったことにしてもらう。
死んだことにしたり、神隠しにあったことにしたりと、源内先生もいろいろ大変である。
若き日の平田篤胤もちらっと登場。
(2009.11.15読了)

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高橋克彦 『京伝怪異帖 巻の上』

高橋克彦著 『京伝怪異帖 巻の上』(講談社文庫/2003年刊) を読む。
京伝怪異帖 上
戯作者に憧れる伝蔵は、風来山人・平賀源内の獄死の噂を耳にした。
源内秘蔵の天狗髑髏をひと目みたいと忍び込んだ先には幽霊が・・・
伝蔵こと若き山東京伝が出会う奇怪な事件の数々。世の魑魅魍魎を怪奇小説の祖・京伝が斬る!


まず、平賀源内が獄死せず密かに生きている設定が面白い。
で、山東京伝が源内と組んで隠密したり幽霊屋敷をプロデュースしたり。
江戸っ子弁の会話も小気味よい。
こんな面白おかしい毎日なら自分も江戸時代に行きたいと思わせる。
単に冒険話なだけでなく、いちいちミステリー仕立てなところ、欲張り感のある作品になっていて、高橋センセーの巧さというのは尋常ではない。
(2009.11.8読了)

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高橋克彦 『倫敦暗殺塔』

高橋克彦著 『倫敦暗殺塔』(講談社文庫/1988年刊) を読む。
倫敦暗殺塔
明治18年のロンドンは日本ブーム。市民生活をナマで見せる日本人村が好評を博す。
一方、国際的信用を得るのにあと一歩の明治政府では、井上馨、伊藤博文、山縣有朋らが何やら密謀を。そこへロンドンで日本人への殺人が起きた。
政府と日本人村にどんな接点があるのか?絶妙で壮大な構成の歴史ミステリー。


明治18年(1885)1月10日~5月1日まで、ロンドンにて「日本風俗博覧会」という催しがあったそうだ。本書はそれを題材にして、博覧会会場の日本人村を舞台に起こる連続殺人事件に、明治政府の世界に仕掛けたトリックを絡め、魅力的なミステリーに仕上がっている。
さらに暗号トリックあり、戊辰戦争の因縁ありと、非常に盛りだくさん。これは脱稿するまで長時間かかっただろうなあ。
歴史上の実在の人物を動かす手腕も見事で、山田風太郎の明治物からかなり学んだのではないかなと思わせる。
井上馨が、「天下などは預かっているだけのものだ」、それは大久保からであったり、高杉や久坂、松陰からであった・・・という部分、実に印象的だなあ。
ポーツマスで医者をしている時代のドイルも登場。ドイルに“バリツ”と言わせるところなど、ミステリファンが喜ぶ演出である。
(2009.9.21読了)

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筒涸屋

Author:筒涸屋
札幌市出身・在住
戌年 射手座 B型 
右投右打 右四つ
好きな言葉:小春日和
2008.3.6開設

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