新城カズマ 『サマー/タイム/トラベラー2』

新城カズマ 著 サマー/タイム/トラベラー2(ハヤカワ文庫/2005年刊) を読む。

〈プロジェクト〉を通して、自分の時空間跳躍能力に目覚めていく悠有。
一方、辺里の町では不穏な出来事が進行。
続発する放火事件と、悠有に届けられる謎の脅迫状ーーー「モウ オマエニ 未来ハ ナイ」。
涼、コージン、饗子それぞれの想いが交錯するなか、いつしかぼくは微かな不安に囚われていたーーー悠有はなぜ過去へ跳ばないのだろう?
全2巻完結


1巻目がわりとまったりめに進行したのに比べて、2巻目は場面転換が多く、スピーディーに話が進んでいった。
そして、時間についてや宇宙についての考察など、青春小説寄りから理系SF寄りへと比重が傾いている。
いかにも理数系的な会話は、小生意気な高校生が小難しい単語を並べて立てていて、内容についてはちんぷんかんぷんであった。
さて、結局悠有は未来へと旅立っていくのだが、動機が薄弱で、目的もよく理解できなかった。
だが、そのようなもやっとしたところも含めて、話がいいだけ盛り上がったあと、悠有が居なくなった寂寥感がいい雰囲気であった。
なので、必要ではあるとはいえ、30年後のエピソードはもうちょっと短めでも良かったのではないかと思った。
(2016.5.22読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

新城カズマ 『サマー/タイム/トラベラー1』

新城カズマ 著 サマー/タイム/トラベラー1(ハヤカワ文庫/2005年刊) を読む。

あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼なじみの悠有は初めて時空を跳んだーーーたった3秒だけ未来へ。
〈お山〉のお嬢様学校に幽閉された饗子の号令一下、コージンと涼とぼく、それから悠有の高校生5人組は〈時空間跳躍少女開発プロジェクト〉を開始した。
無数の時間SFを分析し、県道での跳躍実験に夢中になったあの夏ーーーけど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった…


登場人物が高校生で、タイムトラベルテーマの物語・・・いいですな!青春SF。
オレは実は“青春SF”だの“青春ミステリ”だのというのがことのほか好きなのだ。

物語の語り手のタクトは超絶ウザい男。
性格が素直じゃないので、人と話す時の受け答えにイライラ。
その幼なじみの悠有は時空を駆ける少女。
いいコではあるのだが天然過ぎるのがマイナス。
ほどよい天然なら可愛く思えるのだが。
一人だけ違う高校のお嬢様・饗子はこれまた強烈なキャラクター。
めちゃくちゃ頭が良くて、物凄くおしゃべり。
この人が主導して何でもかんでも〈プロジェクト〉にしてしまう。
その饗子のことが大好きな涼は、システム手帳に何でも記録するデータ魔。
饗子のことが好きというより崇拝している風に思える。
コージンは頭の回転は速く、腕力も人一倍。
実は前々から悠有のことが好きらしい。

この5人が夏休みの間に時空間跳躍を解明しようとする話に、連続放火事件が絡んでくる。
その他にも、地方都市の閉塞感が語られたり、公害問題や腐敗した市議会の話題や、悠有の兄が罹っているS=Z症候群という病気のことなど、なかなか盛りだくさんの内容である。

時空間跳躍について研究するために内外のタイムトラベルテーマの小説を集めチャート表にするところなどは、作中の人物というよりは作者の感性が出ているようだ。
悠有が時空間移動するのは未来への方向だけな感じに描かれているが、縄文時代とか戦国時代とか明治時代の辺里市の地図が掲載されているところを見ると、何かありそうな気がする。
第1巻では“SFっぽい青春小説”な雰囲気で進んできたが、2巻目はどう展開するのであろうか。
(2016.5.17読了)

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テーマ : SF小説
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アガサ・クリスティー 『ポアロのクリスマス』

アガサ・クリスティー 著 村上啓夫 訳 ポアロのクリスマス(ハヤカワ文庫/1976年刊)【HERCULE POIRT'S CHRISTMAS:1938】 を読む。

クリスマスも近い駅の雑踏をよそに、国外から来て出会ったばかりの男女は、互いに好意を示しながら、それぞれの思惑を内に秘めていた。
男は思う。計画通り実行しよう、これだけを目指して来たのだ。
女が思う。他の事に気をとられてはいけない、念には念を入れて立てた計画なのだから……。
やがて起こったクリスマスの惨劇!
一族再会した富豪の屋敷で当の偏屈な大富豪が血みどろの死体で発見された。
男の思惑とは?女の計画とは?
休暇も返上して捜査を開始したポアロは、事件の鍵は被害者の性格にあると推論する。


先日読んだカーの『アラビアンナイトの殺人』に比べてとても読みやすかった。
どうしてだろうと考えたところ、クリスティーおばさんの情景描写がシンプルなところが良いのだと思った。
あまり説明的にならず、読者が想像できる余地を残すような描き方なのだろう。

さて、作品についてであるが、まず被害者であるこの家の主人が恐ろしく性格の悪い老人で、殺されても気の毒に思わない。
クリスマスのために集まった息子夫婦や孫娘など、犯人は家族の中の誰かであるという状況でポアロのおっさんの捜査が始まる。
警察の捜査担当者と、殺人が起こったとされる時間の各人のアリバイを綿密に検討する過程が、地味なのに面白い。
物理的な捜査だけでなく、被害者の人となりを研究することで犯人に迫れると思っているポアロは、折々に家族各人と会話することによって真相にたどり着く。

読み返してみると、わりと多くヒントが示されていたのだが、当然のようにオレは犯人を当てることはできなかっただよ。
(2015.11.22読了)

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田中啓文 『蹴りたい田中』

田中啓文 著 蹴りたい田中(ハヤカワ文庫/2004年刊) を読む。

第二次大戦下で鬱屈する少年兵たちの、複雑な子心象を描破した珠玉作「蹴りたい田中」で第130回茶川賞受賞後、突如消息を絶った伝説の作家・田中啓文。
以来10年、その稀有なる才能を偲び、幼少時から出奔までの偉大なる生涯を辿る単行本未収録+αを精選、山田正紀、菅浩江、恩田陸などゆかりの作家・翻訳家・編集者らによる証言、茶川賞受賞時の貴重なインタビュー「未到の明日に向かって」までを収録した遺稿集。


初出の後、ほったらかしにされてた作品を寄せ集めてまとめたような短篇集。
っていうか、行き場のない短篇が溜まったのを企画としてまとめていて、好作品集に仕上がっている。
『蹴りたい田中』というタイトルは、もちろん『蹴りたい背中』をもじっているが、内容はもちろん全然関係ない。
にもかかわらず、ちゃっかり綿矢さんへ献辞してるのが笑える。
わりと分量が多いので感想は追記にて。
(2015.10.24読了)

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テーマ : SF
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坂本康宏 『逆境戦隊バツ[×]2』

坂本康宏 著 逆境戦隊バツ[×]2(ハヤカワ文庫/2006年刊) を読む。
逆境戦隊バツ2

騎馬武秀の体が光を放つと、彼は赤い戦士に変身していたーーー
サド女王様のお局OL実報寺延恵、昔はイケメンだったが今は巨デブの先輩・花井泰明とともに、戦隊ヒーローとして平和を脅かす怪人に日夜戦いを挑むのだった。
しかし、幸福になって劣等感がなくなると変身能力まで失ってしまう彼らに、真の幸せが訪れる日は来るのだろうか。
ガンバレ騎馬武秀!戦え逆境戦隊!いつか輝く明日を掴むのだ!!


第1巻はわりとおもしろSFな感じで話が進んでいたのだが、第2巻では、けっこう重めの家族愛物語になった印象。
真面目に行動してるのが逆に笑いを誘う種類のコメディが、ガチなシリアスストーリーになってしまったかのよう。
なので、たいへん読みやすくはあるのだが、笑える場面がなく、ちょっと重苦しい読後感であった。
(2014.7.26読了)

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坂本康宏 『逆境戦隊バツ[×]1』

坂本康宏 著 逆境戦隊バツ[×]1(ハヤカワ文庫/2006年刊) を読む。
逆境戦隊バツ1
株式会社来見食品に勤める落ちこぼれ研究員、騎馬式秀はオタクである。
雑務に追われながらも、コミックとフィギュアの即売会を唯一の楽しみとして日々を送っていた。
彼が勤める来見食品は、次世代タンパク源として新商品を開発する会社である。
ある日、新商品開発に関わっていた親友、鞍瀬のマンションを訪ねた騎馬は、凄惨な事件現場に遭遇してしまう。
コンプレックスだらけのヒーローを描く熱血SF!


コメディ系のSFで、わりと面白かった。
培養していたタンパク質が人間に取り憑いて怪物化するのだが、稀にコンプレックスが強い人間に取り憑くと正義のヒーローになるという。
主人公の騎馬武秀(25)はチビ、キモオタ、運痴、若ハゲ、童貞という、まあ客観的にみて気の毒な人で、ヒーローになる資格は十二分にある。
ヒーローになるのは嬉しいが、条件を満たすほどのコンプレックスがあるのは結構辛いものがある。
来見食品(くるみしょくひん)という会社の社員なので、クルミレンジャーという名がつけられているのだが、とても弱そうな印象だ。
もう一人、女性のレンジャーがいて、実報寺延恵(27)という隊員は騎馬より先にクルミレンジャーとして活動していて、イメージカラーはピンクである。
ちなみに騎馬のカラーはレッドであった。
あと、今巻では敵のような振る舞いを見せていたブラックのレンジャーも登場していて、どうやら騎馬の職場の上司らしいのだが、正体は明らかにされてはいない。

おもしろSFで、メッセージ性のあるような深い物語ではないのだが、この後話はどのように展開するのか気になるので、早めに第2巻を読みたいと思った。
(2014.6.11読了)

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田中哲弥 『やみなべの陰謀』

田中哲弥 著 やみなべの陰謀(ハヤカワ文庫/2006年刊) を読む。
やみなべの陰謀
時は現代、大学生の栗原守は初対面の立秋茜といきなり宿命の恋に落ち、いっぽう過去では、下級武士の吉岡信次郎と幼馴染み・るりとの恋が悲劇的な結末をむかえ、さらに未来では、大阪府知事によるお笑いファシズム体制下、レジスタンス組織が決死の知事暗殺計画を遂行しようとしていた――
そしてあらゆる因果の中心には、アロハシャツの大男と謎の千両箱の存在が……
5つの物語が時空を超えて絡み合う時間SFの傑作。


独立した5つの短篇がそれぞれ絡み合い、ひとつの長篇を構成する本書。
面白かったのは、第2話のラブコメ話。
著者の描く女の子の性格のディティールというのは、もう何と言うか、オレ好みなのだよね。
基本ツンデレなのだが、ちょっとしたしぐさとか、セリフの言い回しとか、実になんとも。
著者の趣味とオレの趣味がほとんど一致してるかのようだ。

この作品、時間SFなので実はけっこう入り組んでいるというか、手の込んだ構成になっているのだが、全体的なバカバカしさのおかげで、考え込むことなく読み飛ばせるような創りになっているのが嬉しい。
最終話で、それまでバラバラに書かれていた過去から未来までのエピソードのつじつまが合うのであるが、まあ何となくフンワリと読んで了解したような気分になるので、事細かに読み込まなくてもいいので助かる。
(2012.11.5読了)

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眉村卓 『サロンは終った』

眉村卓 著 サロンは終った (ハヤカワ文庫/1974年刊) を読む。
サロンは終った
傑作SF短篇集。5篇収録。

テキュニット
極度に管理化された火星都市群。
包括名称“テキュニット”と呼ばれるこの都市群は、恐るべき全体主義社会で、そこに住む人間はこまかく階級づけされて、ろくに自由も与えられていない。
しかも成員自身は自分達が不自由だとも不幸だとも考えていない。
なんか北朝鮮あたりがこういう社会状況に近いのだろうかなあと思わせる。
しかもこの作品では、死んだ人間や、社会不適合者と判定された人間は、最下層成員である「共同使用人」と呼ばれる人造人間的なものに加工されてしまう。
何とも重苦しい話で、結末もハッピーエンドにならないのが余計重苦しい。

ぼくの場合
社会が発達しすぎて、いくつもの仕事をこなしながら、さらに次の職のために勉強しなければならなくなった世界。
世の中に遅れまいとする人間は誰もが幻覚に悩まされながら生きている。
かなりイヤな世界であるが、この作品の執筆時期(1968年)の社会状況が、そういう雰囲気だったのだろうなあ。

よじのぼる
著者の名作『EXPO '87』に登場していたビッグ・タレントをテーマにした作品。
ビッグタレントとして成りあがろうとする若者が打ちのめされる話なのだが、挫折した後にもまだ這い上がろうとする姿は、みじめではあるが凄みを感じる。

緋と銀のバラード
犯人あて懸賞小説として発表されたSFミステリー。
けっこうズルイ創り方をしてるので、ミステリーとしては疑問符がつくが、幻覚を体験する「実感装置」という機械のアイデアはおもしろい。
どうでもいいけどタイトルの意味するところがちっとも分からなかった。

サロンは終った
時代に乗り遅れた人間の哀しさを描いた作品。
自分が一番充実していた若い頃の気分を引きずったまま、歳を食ってしまった主人公が痛々しい。
(2012.9.29読了)

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エラリイ・クイーン 『クイーン警視自身の事件』

エラリイ・クイーン 著 青田勝 訳 『クイーン警視自身の事件』(ハヤカワ文庫/1976年刊)【INSPECTOR QUEEN'S OWN CASE:1956】 を読む。
クイーン警視自身の事件
夜更け、不吉な胸騒ぎを覚えて飛ぶように帰ってきた看護婦のジェシイ・シャーウッドは、
育児室に飛び込むなり思わずそこに立ちつくした。
大富豪ハンフリイ氏の養子の赤ん坊が、顔の上に枕をのせたまま冷たくなっていたのだ!
たまたま現場に立ち会うことになった退職直後のクイーン警視は、殺人を主張するジェシイを助けて、
エラリイの手を借りずに単独で大胆不敵な犯人に立ち向かう・・・


クイーン警視が定年退職した後を描く、番外篇的な作品。
エラリイがヨーロッパに取材旅行に行っていて不在の時に
事件に関わるので、捜査の進め方は足で稼ぐ方式。
クイーン元警視は、退職警官を組織して尾行や張り込みなどを行う。
まあ、言わば「87分署シリーズ」の超加齢臭バージョンw

退職後、ヒマを持て余していたかつての仕事人間共が、
嬉々として捜査をしているさまは物悲しい。

クイーン作品らしくドンデン返しはあるものの、
ドンデン返しへ向けての展開がバレバレであった。

あと、もう一つ“老年の恋”というテーマが描かれていて、
クイーン氏は看護婦のジェシィとお互いに惹かれあう中
一緒に事件を捜査する。
で、最後、婚約してこの作品は終了するのだが、
ジェシィからプロポーズさせるなよ、ジジィ!
はい、これでかかぁ天下決定(笑)
(2011.1.5読了)

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田中哲弥 『ミッションスクール』

田中哲弥 著 『ミッションスクール』(ハヤカワ文庫/2006年刊) を読む。
ミッションスクール
「下痢のため一刻も早く排便したいのです」
――謎の符牒とともに教室から姿を消した聖メヒラス学園一の美少女・山岸香織は、MI6の潜入工作員だった。
国連事務総長直属の諜報員・吹石雄作は香織と接触、イラク軍のテロ活動を阻止するため極秘任務を開始する・・・
華麗なる諜報戦を描く表題作ほか、ホラー、ファンタジイ、アメコミ、純愛ロマンという5つのジャンルフィクションの定型による、規格外の学園ラブストーリー。


全5篇からなる短篇集。

ミッションスクール』 初出:「電撃hp」2001年Vol.11
聖メヒラス学園高校は、生徒・教師とも各陣営のスパイが多数おり、地球上の様々な国際紛争の舞台となっている・・・という、めちゃくちゃなお話。
ハンサム君と学園一の美少女がイチャイチャしながら敵をやっつける愉快痛快な物語。

ポルターガイスト』 初出:「電撃hp」2001年Vol.13
聖ペガツサ学園高校の旧校舎西側のトイレは呪われていて、利用すると恥ずかしい音が学校中に響き渡る・・・という、めちゃくちゃなお話。
排便や屁の音といった、他人に聞かれたくない音だけが大きくなっちゃうのはとても怖い。
そして呪いは学校全体に浸透してしまい、他人に聞かれたくない恥ずかしいと思うことを大声で言ってしまう。
実は相当怖い話なはずなのだが、作者が作者なので愉快話になっている。

ステーショナリー・クエスト』 初出:「電撃hp」2004年Vol.30
聖キユラソ学園の美術部の備品が数少なくなり、総務部に備品を取りに行くのだが、総務部へ行くには数々の困難を乗り越える冒険をしなければならない・・・という、めちゃくちゃなお話。
ヒロインのことが好きな男子生徒が、ことあるごとに言い寄ってくるのに対して、照れながら悪態をつくさまがよい。
著者の描く女子は、見た目が美しいだけでなく、性格もこっちのツボをついてくるように描くので素晴しい。

フォクシーガール』 初出:「SFマガジン」2006年5月号
スーパー・フォックスと名づけられた子狐の有するウィルス「SFウィルス」に感染し、スーパーヒロインとなった女子高生・菜々美が、次から次に襲ってくる敵をばったばったと倒すお話。
他人の思考を読み取れる能力で、幼馴染みの恭平の自分に対する愛情の深さに接した菜々美が、それ以来恭平に対してことさら偉そうな態度を取るようになるというくだりは、めちゃ可愛い。

スクーリング・インフェルノ』 書き下ろし
超巨大豪華学府・聖メトロン学園の入学式当日、学校が沈み始め、学内が主要6か国による戦争に巻き込まれたパニックをえがくお話。
この作品だけ結末が物悲しいのが逆にバカバカしくて面白い。


表紙&本文イラストは橋本晋氏。
この人の絵、すごく好き。
この人の描く女の子はとても可愛い。
(2010.12.9読了)

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ジャンル : 本・雑誌

エラリイ・クイーン 『緋文字』

エラリイ・クイーン 著 青田勝 訳 『緋文字』(ハヤカワ文庫/1976年刊)【THE SCARLET LETTERS:1953】 を読む。
緋文字
探偵小説家ローレンスと女流演出家マーサは、誰もが羨む幸福な夫婦だった。
しかし、結婚3年目から二人の仲が悪くなり、やがて毎日のようにトラブルが起こるようになった。
エラリイと秘書のニッキーは何度か仲裁に入っては、諦めて手を引こうとしているうちに“緋文字殺人事件”とよばれる姦通事件に巻き込まれていった。
死者の残したダイイング・メッセージ、XYの謎とは?
ホーソーンの同名小説に因んだ中期の代表作。


この作品はかなり実験的な作品だ。
なんせエラリイ&ニッキーの共通の友人であるローレンス夫妻の、不倫疑惑を調査する話が全体の4/5とか5/6くらいの分量を占めているのだ。
そして最後の数十ページまで来てようやく犯罪が発生するのだが、エラリイが見ている前で夫が妻と不倫相手を撃つという、きわめて明快な殺人事件。
舞台演出家のマーサが、不倫相手と目される俳優のヴァン・ハリスンと待ち合わせするのに暗号を用いるところはあるものの、起きた事件を捜査する話じゃないので全く推理小説らしくない。
そして殺人にしても、エラリイが見ている前で起こった出来事なので、推理の仕様がない。

はずなのだが、推理しますなあ、エラリイ氏。
エラリイの腕の中で死んでいったハリスンが残したダイイング・メッセージ(喉を撃たれているので声が出せない)から推理を組み立て、事件の真相に到達するエラリイ。
偉いぞエラリイ、すごいぞエラリイ。

前半、というか物語の大部分の不倫疑惑調査の話も、決してつまらないわけではなく、けっこうコメディタッチに描かれていて厭きさせない。
国名シリーズのようなファンタジックな作品も面白いけど、こういう作品も地味に良い。
(2010.11.1読了)

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エド・マクベイン 『ノクターン』

エド・マクベイン著 井上一夫訳 『ノクターン』(ハヤカワ文庫/2004年刊)【NOCTURNE:1997】 を読む。
ノクターン
安アパートの一室で、老女が胸を撃たれ横たわっていた。
捜査に出向いたキャレラとホースは、老女が元有名ピアニストで、今は酒と猫を友とする孤独な日々を送っていたことを知る。
わずかな金を狙った犯行か、あるいは・・・?
やがて、老女が孫娘に大金を遺していたことが判明、その金をめぐって争奪戦が展開する――


以前より文庫本の文字が大きくなったこともあるのだろうが、内容のわりにやたらページ数があるなあ。
オレの好きなキャレラ&ホースのコンビの話だったが、今回はあまりキレのいい捜査ぶりではなかった。
むしろ、でぶっちょオリーのほうがテキパキと活動してた。
被害者の孫娘と仲間の話が分量が多かったので、その分キャレラ達の話が薄かったのかな。
あと、この作品は翻訳しずらい文体で書かれていたようで、どうもテンポよく読むことができなかった。
アイソラの風景描写が少なかったのも物足りなかったなあ。
数あるシリーズ作品なので、こういう、あまり心に響かない作品があるのも仕方ないか。
(2010.8.9読了)

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桜坂洋 『スラムオンライン』

桜坂洋著 『スラムオンライン』(ハヤカワ文庫/2005年刊) を読む。
スラムオンライン
Aボタンをクリック。ぼくはテツオになる――
現実への違和感を抱えた大学1年の坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲーム<バーサス・タウン>のカラテ使い・テツオとして、最強の格闘家を目指している。
大学で知り合った薙原布美子との仲は進展せず、無敵と噂される辻斬りジャックの探索に明け暮れる日々。
リアルとバーチャルの狭間で揺れる悦郎は、ついに最強の敵・ジャックと対峙するが・・・・


ゲーマー大学生の、リアルライフとバーチャルライフを描く青春小説。
現実の日常生活の話と、オンラインゲームをしている話が交互に章立てされているので、読みやすかった。
オレは格闘ゲームはしないので、レバーやボタンの入力操作の描写はちょっとわかり辛かったが。
日常生活の話では、悦郎と布美子の、つき合うちょい前の感じがほどよくイライラさせて好い。


薙原布美子の人物造形は、オレにはドハマリのキャラであった。

布美子が上目遣いにぼくを睨みつける。
   気の強い女子が大好きなオレは、これだけでも好い。
少年向けアニメに出てくるヒロイン系の声。
   これはオプションだね。絶対アニメ声でなくちゃならないということはない。
笑うと、八重歯が見えた。   
   これは重要。かなりポイント高し。
   あと、笑顔がすごくいいという描写もあり、これもくるよね。
「はじめてあった日は、このブラウスじゃなかったよ」
   こんなこと言われたら、オレなら100%勘違いします(笑)
ぼくのシャツを左手でつまんで、布美子がついてくる。
   オレはこのような状況の時は、顔は無表情だが、内心ではニマニマしている。

あと、ショートヘアであったり、「~だぞ」語を使ったり、メガネをかけたりかけなかったり、桜坂氏、かなり心得てるな~。
ただ、「キミ」と呼ばれるのだけはちょっと嫌かな。「キミ」と言われるよりは苗字呼び捨ての方がよい。


ところで、この本、著者のサイン入りだった。
印刷日前日の日付け入りなので、おそらく出版記念イベントでのものだと思うのだが。
こういうのってちょっと複雑な気分になるよね。この本をブックオフで105円で購入したオレとしては。
それはそれとして、桜坂氏はオレと同い年ということもあり、活躍を願う作家の一人である。
(2010.4.4読了)

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テーマ : 読書
ジャンル : 本・雑誌

梶尾真治 『チョコレート・パフェ浄土』

梶尾真治著 『チョコレート・パフェ浄土』(ハヤカワ文庫/1988年刊) を読む。
チョコレート・パフェ浄土
ある日、ふと口にした子供の残りもののチョコレート・パフェ。
その味は、中年男の心をとらえ、恥ずかしさをかえりみさせず、喫茶店へと走らせる。
だが、そのチョコレート・パフェのために、男はとんでもない運命に・・・
表題作含め、全10篇収録の短篇集。


『“希望基地”にて――』
観光地化された金星開拓の基地を訪れた、水星開拓者の心の葛藤を描く。
・・・と書くとハードな感じだが、けっこうさらっとしたストーリー。
人類の宇宙進出への、夢も疑問も提示されていて、味わい深い作品。

『チョコレート・パフェ浄土』
パフェを注文するオッサンを小馬鹿にする喫茶店従業員に憤りを感じずにはいられない。
だって、この主人公のオッサン、今のオレと同じ年齢なんだもん。

『魔窟萬寿荘』
プルトニウムによる突然変異でモンスター化したミズムシ菌との闘い。
ドタバタSFで面白いのであるが、結末がシリアスなのがちょっと不満。
ばかばかしい話は、ばかばかしく終わってくれないと、気分がスッキリしない。
(2009.9.1読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

田中啓文 『UMAハンター馬子 完全版2』

田中啓文著 『UMAハンター馬子 完全版2』(ハヤカワ文庫/2005年刊) を読む。
UMAハンター馬子2
雪男、グロブスター、チュパカブラ、クラーケン――UMA(未知生物)を追う蘇我家馬子と、弟子イルカの旅は続いた。イルカは、馬子がUMAに寄せる痛切なまでの共感の情に気づいていく。
いっぽう、世界の終わり<ヨミカヘリ>の刻が迫るなか、山野千太郎のUMA探索も熾烈さを極めていた。朗々と響き渡る“おんびき祭文”とともに、世界の命運を懸けた最後の闘いが始まる・・・


第2巻は第4話の後半~第8話で完結。
また行く先々で、まぐわったり野グソしたりと、やりたい放題の馬子。
野グソするのがなんと、馬子の正体が明かされる伏線だったとは(笑) どんな伏線の張り方をする作家なのだろうか。
最終話で巨大化したヤマタノオロチと闘うのだが、お互いの体が変化して、巨大男根対巨大女陰の戦闘に(笑) 著者“らしさ”が見られて嬉しかった。
でもこれが世界の命運を懸けた闘いというのがとてもマヌケだ。
(2009.7.31読了)

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テーマ : SF小説
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田中啓文 『UMAハンター馬子 完全版1』

田中啓文著 『UMAハンター馬子 完全版1』(ハヤカワ文庫/2005年刊) を読む。
UMAハンター馬子1
どケチでど派手、傲慢かつ淫乱な“大阪のおばはん”蘇我家馬子。
伝統芸能“おんびき祭文”の語り部たる彼女と、弟子のイルカの営業先にはなぜかUMA(未知生物)と不老不死伝説、そして謎の男・山野千太郎の影がつきまとう。
ネッシー、ツチノコ、雪男――驚異の民俗学的知識と珍推理でUMAの正体をあばいていく馬子とイルカの活躍!


本巻には第1話から第4話の前半までを収録。
主人公たる蘇我家馬子がすごい。見た目は40歳代で服装は“一分の隙もない完璧な大阪のおばはん”。口は悪いし態度も悪い。さらにすごいのが性欲。第1話では二人を喰っちゃうし、第2話と第4話ではレズッちゃうしと、かなりエゲツない。そして野グソする描写が多い。こんなにウンコ垂れる主人公も珍しい(笑) ってか普通ありえない。

UMAに関する知識を手っ取り早く得るにはオススメな本。
細かいところまでデータを紹介するところに著者のこだわりを感じる。
ストーリーに重点を置きすぎた為であろうか、ダジャレ落ちのキレが悪いのが少し残念。
(2009.7.30読了)

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飛浩隆 『象られた力』

飛浩隆著 『象られた力』(ハヤカワ文庫/2004年刊) を読む。
象られた力
惑星<百合洋>が謎の消失を遂げてから1年、近傍の<シジック>に住むイコノグラファー、クドウ圓は、百合洋の言語体系に秘められた“見えない図形”の解明を依頼される。
だがそれは、世界認識を介した恐るべき災厄の先触れにすぎなかった・・・・
異星社会を舞台に“かたち”と“ちから”の相克を描いた表題作含む中篇全4篇収録。


『デュオ』
ある人物の手記の形をとって描かれた、シャム双子の天才ピアニストをめぐる音楽SF。
シャム双子がほんとは三つ子だったというのと、その一人が“テレパシーフィールド”の中で生き続けているという設定が面白い。
この作品、作品自体にトリックが仕掛けられているミステリーでもあるのでぜひ一読を。

『呪界のほとり』
宇宙を感じられる作品。
こういうのを読むと、SFっていいなと再認識できる。

『夜と泥の』
地球化(テラフォーミング)した惑星を国家や民族にリースするというリットン&ステインズビー協会という設定がいい。
内容的には哲学的ストーリーで、オレにはちょっと難しい。

『象られた力』
“図形”というものだけでここまで話を広げる著者の脳の構造に感心(笑)
描いてることを頭の中でイメージしやすく、著者の文章はオレにとってはとても読みやすい。
苔のステーキとか、菌類の温かいサラダというのは気味が悪かったが。
(2009.7.23読了)

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

田中啓文 『銀河帝国の弘法も筆の誤り』

田中啓文著 『銀河帝国の弘法も筆の誤り』(ハヤカワ文庫/2001年刊) を読む。
銀河帝国の弘法も筆の誤り
「ブラックホールの中にホトケはいるかおらぬか、そもさん」
史上初めて傍受された知的生命体からのメッセージは、なぜか禅問答であった!?――
<人類圏>存亡の危機に立ち向かう伝説の高僧・弘法大師の勇姿を描く表題作、大量のゲロとともに銀河を遍歴した男の記録など、おぞましくも愉快な遠未来宇宙の日常と神話、5篇を収録。


表題作含めすべての作品が駄洒落、汚い描写で満載のSF作品集。
著者が関西出身であるので、やはりギャグの質感が関西的であるなあ。
笑いの仕掛け方が粘着感があるのよね。
オレはどちらかというと江戸的な笑わせ方が好きなのであるが、しつこく迫ってくるこういう感じも、もちろん好きである。
世界の宗教の名前とか、一般的になじみのない動物の名前とか、変なところに異様な知識を持っているところがよい。
ただ、SFに理解のある読者にしか認めてもらえなさそうな作品集であるので、読者層は恐ろしく狭いこと請け合いである。
(2009.6.25読了)

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テーマ : SF小説
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エラリイ・クイーン 『顔』

エラリイ・クイーン著 尾坂力訳 『顔』(ハヤカワ文庫/1979年刊)【FACE TO FACE:1967】 を読む。
顔
波瀾に富んだ人生を送ってきた歌手グローリー・ギルドは、その激情と哀愁のこもった歌声で一世を風靡し、巨万の富を築いた。
そして今は、栄光の思い出をかみしめながら、自叙伝の執筆にかかっていた。
そんなある日、彼女が何者かに心臓を撃ち抜かれた死体となって発見された。
死に際に残された文字は――「顔」。
エラリイ・クイーンの名推理が光る!


クイーンの活躍譚といえば第二次世界大戦の前後という印象が強いので、この作品に出てくる「ビートルズ」「ベトナム」「公民権」といった単語を目にすると、とても違和感を覚える。
さすがのクイーン君も年取ったみたいで、行動にハツラツとしたところが見受けられず、読者を撹乱する思わせぶりな物言いもほとんど無い。
おかげで割りとすんなり犯人が分かってしまう。
“あの”J・Jマック(本作品ではマッキューと表示)が最後の方に登場したのは一応読者サービスなのだろうか?
やはりどうも晩年のクイーン作品はキレが無いなあ・・・
(2009.5.26読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
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エラリイ・クイーン 『帝王死す』

エラリイ・クイーン著 大庭忠男訳 『帝王死す』(ハヤカワ文庫/1977年刊)【THE KING IS DEAD:1952】 を読む。
帝王死す
第二次大戦当時の機密島を買い取り、私設軍隊を持つベンディゴ帝国に君臨する軍需工業界の怪物キング・ベンディゴ―
彼の許に舞込んだ脅迫状について捜査するため、クイーン父子はある朝突然拉致同様にベンディゴ島に連れていかれた。
その強引なやり方と島の奇妙な雰囲気に戸惑いながらも、エラリイはついに犯人を突き止めた・・・しかし次の瞬間、クイーン父子の眼の前で不可解な密室殺人が!


のっけから気の遠くなるような富豪ぶり&社会的地位ぶりを見せつけられるが、そんなに荒唐無稽に感じず、「アメリカならありえるのでは?」と思わせるところがU.S.Aという国家の恐ろしさだ。
ま、それはともかく、世界的な軍需王の島に連れてこられたクイーン父子の、いつもとは勝手の違う中での捜査であるが、初期作品によく見られたようなもったいつけたところが無いエラリイに、人間的な成長を感じる(笑)

ベンディゴ島という舞台装置といい、密室殺人が行われた状況といい、なにかと劇的なこの作品、ミステリというより冒険小説のようなおもむきであった。
トリックについては、なかなかいい出来なのではないか。登場人物が限られているため、予告殺人という手法をとり、そうそうに犯人が分かるようになっているが、どのように殺したか?凶器の始末は?というところに興味を持っていった作者の手腕は円熟味が感じられた。

ベンディゴ家の出身がライツヴィルで、事件の鍵を求めてエラリィがライツヴィルで捜査するくだりは、作者のライツヴィルへの思い入れが感じられるのだが、物語的にはベンディゴの出身がライツヴィルである必要はない(むしろ違う土地なほうが自然だとオレは思う)。
『災厄の町』以来何度もライツヴィルに滞在しているエラリイが、ベンディゴがライツヴィル出身だということを知らなかったというのは整合性がとれない気がするもんね。

この本は解説を先に読まないように。「○○のトリックはさすがである」と訳者の大庭氏、ぶっちゃけちゃってます。
(2008.12.9読了)

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半村良 『半村良コレクション』

半村良著 『半村良コレクション』(ハヤカワ文庫/1995年刊) を読む。
半村良コレクション
デビュー直後の貴重な短篇から、半村SFの到達点をしめす最新中篇までの32篇に加え、幻の名作『赤い酒場を訪れたまえ』を収録、現代エンタメの巨人の30年間を俯瞰。
ブックガイドを兼ねる詳細な解説と著作リスト付き。


四部構成によるボリュームたっぷりの作品集。
第一部はデビュー直後の短篇が8篇。『ジンクス』や『年始回り』の、著者が作家になる前に経験した職業が出てくる作品が面白い。パロディSFの『浦島』もオレ好み。
第二部の『赤い酒場を訪れたまえ』は、かの『石の血脈』の原型で、この短篇を書いた後『石の血脈』の着想を得たとのこと。オレはまだ『石の血脈』は未読なのだが、『赤い~』がかなり面白かったので、期待大である。
第三部は、1970~89年の間に書かれたショートショートのうち、単行本未収録のものを全て収録。人情SFやら実験小説、怪談、架空書評、落語、はては著者には珍しいジュヴナイルと、SFのごった煮の状況を呈している。『考証・重蓮上人』のテンションは圧倒されるよ。『電話研究』もオレ好みのテイスト。街並みの描写が穏やかで、なおかつ読後に不思議な感覚がのこる『環章』もよい。
第四部は本格SF2篇。そのうち『無人画廊』はショートショートなのだが、時間テーマの小説として重い作品。正直言って理解できたとは思わないが、SFの醍醐味を味あわせてくれる。

この一冊を読めば、かなり広い範囲で半村良の作品世界を堪能できるお得感にあふれた作品集。
(2008.10.27読了)

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エラリイ・クイーン 『三角形の第四辺』

エラリイ・クイーン著 青田勝訳 『三角形の第四辺』(ハヤカワ文庫/1979年刊)【THE FOURTH SIDE OF THE TRIANGLE:1965】 を読む。
三角形の第四辺
売り出し中の作家デイン・マッケルは、厳格な大実業家の父に女ができたという母の打明け話にわが耳を疑った。
デインは父の浮気をやめさせるため、問題の女シーラに近づく。ところがデートを重ねるうち、デインはシーラの魅力の虜となってしまう。そんな矢先、シーラが自宅で何者かに射殺された!
男女の愛憎のもつれが引き起こした難事件に挑んだクイーンが苦慮熟考ののちに探り当てた意外な手掛かりとは?


今回のクイーンは骨折のため入院しており、いわゆる安楽椅子探偵として事件に挑んでいる。それはそれで面白かったのだが、いかんせん出番が少ないので、あまり活躍した印象がない。しかも、登場場面が少ないにもかかわらず一度間違えるし(笑)
なにせ第一章はマッケル家の人々と、被害者のシーラしか登場しないし、犯罪が起きるまでグダグダした話が続くばかりで、読むのが途中でイヤになった。さすがにクイーンが登場したあとはスピード感がでてきたけど。
この作品、ミステリマニアの人ならすぐ犯人当てちゃうと思うよ。オレはいつものように最後にやっと解ったけど。
どうも60年代の作品は気の抜けた感じがするなあ。そういや、クイーンの家の場面にジューナが登場しなかったのだが、彼は独立してしまったのだろうか?脇のレギュラーが好きなオレはちょっとがっかり。
(2008.8.27読了)

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エラリイ・クイーン 『二百万ドルの死者』

エラリイ・クイーン著 青田勝訳 『二百万ドルの死者』(ハヤカワ文庫/1979年刊)【DEAD MAN'S TALE:1961】 を読む。
二百万ドルの死者
ギャングの親分バーニー・ストリートが殺され、二百万ドルの遺産が残された。
当然自分の手に入ると思っていた妻のエステルは、遺言書を見て愕然とする。
遺産全てを、戦時中命を救ってくれたチェコ人ミーロ・ハーハに遺贈するというのだ。
この男はいったい何者なのか?エステルは愛人スティーヴにハーハの調査を依頼する。
チェコへ飛んだスティーヴとアンディの兄弟を待ち受けていたものは?


クイーンには珍しく非本格物。なぜこの作品を書いたのだろう?作者としては書きたい理由があって書いたのだろうが、読者としてはクイーン=本格物を期待するだけに、正直拍子抜け。
サスペンス物なら、他にもっと上手な人がたくさんいるわけで、クイーンが書いてもしようがないと思うんだけどね。実際、たいして面白くなかったし。
発表当時は冷戦の真っ最中だったから、社会主義国家の内幕を描いたというのが、かろうじてこの作品の取柄であろうか。まあ、それにしたって、アメリカ人の視点でしか描かれてないように思えるけどね。
(2008.8.19読了)

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アガサ・クリスティー 『ひらいたトランプ』

アガサ・クリスティー著 加島祥造訳 『ひらいたトランプ』(ハヤカワ文庫/1976年刊)【CARDS ON THE TABLE:1936】 を読む。
ひらいたトランプ
“生きた犯罪コレクションを見せましょう”シャイタナ氏の奇妙な申し出はポワロの興味を引いた。殺人の前歴のある人間たちを集めてパーティを催すというのだ。
不気味なパーティは何事もなく進んだ。だが食後、客たちがブリッジに熱中している間に、客間でシャイタナ氏が刺殺体となって発見された!
ブリッジの点数表を通して殺人者の心理を読み、真犯人を追うポアロの推理が冴える、クリスティー中期の名作。


この作品、最初から容疑者と殺人の動機がはっきりと読者に提示されている点が面白い。容疑者は絞られているので、その中から今回の殺人(ナイフによる刺殺)を行うだけの度胸がある人物が誰なのか探すというのがテーマ。
ブリッジの成績表をもとに容疑者たちの性格を分析し、捜査を進めるポワロ。物語的には派手な展開があるわけではないのだが、容疑者それぞれの性格が解きほぐされていく過程は読み応えあり。
容疑者4人に対し、捜査側も4人(警察、軍の諜報関係者、女流探偵作家、ポワロ)と対抗戦のような感じにしているのも楽しい。
解説にもあるように、ブリッジのルールを知っていて読むと楽しさが倍増するのだろうね。成績表から性格や、犯行当時の真犯人の心理的動向をも導き出すポワロの洞察力は見事なものである。
(2008.7.23読了)

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エド・マクベイン 『死んだ耳の男』

エド・マクベイン著 井上一夫訳 『死んだ耳の男』(ハヤカワ文庫/1986年刊)【LET'S HEAR IT FOR THE DEAF MAN:1973】 を読む。
死んだ耳の男

アイソラは4月、のどかな春。だが刑事部屋ののんびりした気分は一本の電話で破られた。
「わたしは帰ってきたよ」過去に二度も煮え湯を飲まされた天才的犯罪者が帰ってきたのだ!
やがて犯行を予告する、意味不明の写真が次々と87分署へ送られてくる。フーヴァー元FBI長官、ジョージ・ワシントン・・・・
宿命の好敵手と87分署精鋭の対決!


今作は87分署シリーズおなじみの悪役デフ・マンが登場。この男、初登場時はモロに“つんぼ男”と訳されていたが、時代の要請で日本語表記ではなく、英語読みのままの表記に。何やら日本人にはヒーロー的な語感ですな。
デフ・マンの犯行予告はクイズ的要素が強くて、あれこれ議論する刑事たちがマヌケに見えて非常に楽しい。
その他にも空巣狙いの事件(この事件でクリングが第2の恋人オーガスタ・ブレアと出会う!)やら、身元不明の男の殺人事件やらと、あいかわらず物騒な87分署管内。
ところどころに差し込まれる街の風景描写も、いつもながらのマクベイン節。
デフ・マンの犯罪者としての頭のよさに脱帽しつつ、キャレラの活躍にも胸躍る一篇。
(2008.6.14読了)
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光瀬龍 『アンドロメダ・シティ』

光瀬龍著 『アンドロメダ・シティ』(ハヤカワ文庫/1980年刊)を読む。
アンドロメダ・シティ

絶対的に非人間的な空間-----宇宙。
そこに乗り出していった人類が、いや一人一人の男たちが出会う非情な運命を透徹した筆致で描ききる。
<都市>シリーズ完結篇、幻の名作といわれた表題作「アンドロメダ・シティ」他、宇宙小説から時代小説までを収める。全5篇収録。


『アンドロメダ・シティ』
バリバリに硬派な宇宙SF。ラストの一文がまた光瀬節さく裂。オレのようなドタバタSF愛好家をも感動させる正統派。読後の余韻がタマラナイ。
この作品を読んでる最中に、「アンドロメダの涙」の正体を突き止めたという新聞記事を読む。こういう偶然って、ままあることだけど、何となく嬉しいよね。

『出帆旗、宜侯!』
宇宙年代記シリーズでおなじみの東キャナル市!職を失っていたスペース・マン(宇宙船乗り)が久し振りに船に乗ることとなる。行先はアルファ・ケンタウリで、目的は有人観測。
サイボーグである主人公のリュウと、サイボーグに憧れるヒラノとのやり取り。泣かせるねえ。

『宇宙飛行士たち』
またしても失業スペース・マンが主役。この作品はジャンク屋(解体業者)に雇われて宇宙船を回収する話。
宇宙開発が行き詰まり、宇宙船がひんぱんに飛ばなくなってしまった時代の、スペース・マンの哀愁を描く前半から、後半は全く違うテーマの話に変わるのだが、展開がいいねえ。
タイトルから内容まで、SF者の心を熱くしてしまうぞ。

『西キャナル市2703年』
東キャナル市に比べて印象の薄い西キャナル市。っていうかオレの記憶の中では初めて出てきた感じ。他の短篇に出てきたかもしれないけど覚えがない。
もっともこの2703年で西キャナル市は壊滅してしまうので、以後の年代記では登場しないのだろうね。

『化仏往生』
江戸時代のUFO譚。
宮本武蔵が主人公の作品(純然たる時代小説である)をいくつも書いていたりする著者なので、語り口もなめらか。
UFOが出てこようが、異星人が出てこようが、全く違和感なく時代劇として楽しめる。・・・と、SF者には思える。
(2008.4.28読了)
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ロバート・A・ハインライン 『夏への扉』

ロバート・A・ハインライン著 福島正美訳 『夏への扉』(ハヤカワ文庫/1979年刊)【THE DOOR INTO SUMMUR:1957】 を読む。
夏への扉

ダンの飼っている猫のピートは冬になるときまって夏への扉を探し始める。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのだ。
1970年12月3日、ダンも夏への扉を探していた。恋人に裏切られ、仕事は取り上げられ、生命から二番目に大切な発明さえ騙しとられてしまったダンの心は12月の空同様に凍てついていたのだ!
そんな現在から逃げ出そうと、冷凍睡眠で30年後へ行こうと決心したダンであった・・・


巨匠の傑作である。発表当時によんでいたらまちがいなくワクワクの連続で読めたであろうと思う。
しかし悲しいかな、ガキの頃から「ドラえもん」などに親しみ、「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」なんかも観てしまっているオレたちには新鮮な驚きをもって読めないのが悲しい。
古典的名作を読んだという満足感は残るのであるが・・・
(2007.12.25読了)
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筒涸屋

Author:筒涸屋
札幌市出身・在住
戌年 射手座 B型 
右投右打 右四つ
好きな言葉:小春日和
2008.3.6開設

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