荒巻義雄 『黄河遺宝の謎を追え!』

2016.06.13(18:21)

荒巻義雄 著 黄河遺宝の謎を追え!(徳間文庫/1994年刊) を読む。

“八光電子”二代目社長・江尻好久の首無し死体が札幌のホテルで発見された。
現場には犯人のメッセージらしき奇怪な記号と麻雀牌の緑発が残されていた。
生前、好久から父久蔵の謎の死について相談を受けていた伝奇作家・牧良男は手掛かりを求め、中国・安陽の殷墟を訪れたが、そこで旧陸軍大尉だった久蔵の意外な事実を知る。
中国古代帝国殷の遺物・甲骨文に秘められた事件の真相とは?


著者のこの手の伝奇推理物は、いつもミステリー部分がちょっと弱い。
だが伝奇についての話がとても面白いので、一応調和は取れている。
オレとしては、いちいちミステリーを絡めなくても良いと思うのだが、著者が描きたいのか編集部の意向なのかわりと発表本数あるのよねえ。

今作品のテーマは“古代殷人が北海道に来た?”
殷の時代は、日本では縄文時代。
なんとロマンあふれる話題であろうか。
実際、岩内に殷代の甲骨文字が彫られた岩があるそうな。
オレは以前勤めていた会社で年に2回くらい岩内方面に出張していたのだが、当時この話題を知ってたら絶対見に行ってたなあ。
北海道にもわりと古代の遺物が発掘されているので、爺さんになったらあちこち見に回ってみたい。
(2016.6.8読了)

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横溝正史 『蜘蛛の巣屋敷』

2015.06.18(18:14)

横溝正史 著 お役者文七捕物暦 蜘蛛の巣屋敷(徳間文庫/2002年刊) を読む。

「何者じゃ」夜回りの老局は思わず誰何した。
奥州棚倉の城主、勝田駿河守の上屋敷の闇に男がうずくまっている。
「土蜘蛛の精…」名乗ったその顔は幽鬼のものであった。
折しも婚儀定まった姫を案じて寝所に踏み入った局の見たものは、無惨な姫の姿。
姫が自害して果てたのは間もなくである。
勝田の家を呪うのは、一体何者か?
もと歌舞伎役者の色男、文七が大陰謀に迫る!


この作品、もともと映画にするための企画だったとのことで、映画は東映にて昭和34年に封切りされている。
主人公の文七に中村錦之介、以下中村一門総出演という豪華作だったらしい。

小説の方は、意外と地味な印象。
推理小説ではなく、サスペンスものであるのだが、文七始め主人公サイドの人たちのピンチがヌルい。
もうちょっとギリギリ感が欲しかった。
事件の舞台となる、勝田家の先代の殿様のご落胤が文七であるのだが、その設定を説明するための今回の話なので、小綺麗にまとめた感がある。
この作品はシリーズの第一作目なので、色々面白くなるのは二作目以降なのだろう。
(2015.6.18読了)

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五味康祐 『如月剣士 下』

2012.06.29(21:27)

五味康祐 著 如月剣士 下(徳間文庫/1986年刊) を読む。
如月剣士 下
将軍職継承問題に端を発した尾張藩津田兵部らの陰謀は熾烈を極めた。
老中水野和泉守らは、奸商備前屋と天下有擾乱の密議を重ねる。
陰謀渦巻く大江戸の武家屋敷街は辻斬りが横行。
隻腕の無類の剣士高田左近は、五ツ目小僧と共に不穏な状勢一掃に立ち上がる。
その頃、大名屋敷に謎の剣士が出没、片目にかけた刀の鍔の眼帯には「如月之剣」と刻まれていた。
金象嵌の鍔に秘められた使命とは?


物語も後半戦。
下巻には、上巻には出てこなかった佐竹求馬という秋田藩の殿様が登場、重要な役回りを演ずる。
上巻にて活躍していた三日月藩主・森安芸守が幼少の頃、身柄を預けられていた先が佐竹家。
で、そのつながりで吉宗方の剣士として活躍するのだが、安芸守と同じで殿様なのに剣術はんぱ無し。
敵味方入り乱れての闘いの最中、安芸守が命を落とし、その後、求馬と高田左近が吉宗方の為に活躍する。

読者はとしては、この作品が歴史改変SFではないことを知ってて読んでるから、尾張藩の陰謀が成功しないことは分かってるんだけど、吉宗方の人たちがピンチに陥るとやはりハラハラしてしまう。
安芸守が殺される場面とか高田左近が敵と闘う場面とか、描写がいちいちカッコよくて、やはり闘う物語というのはバトルシーンの充実が重要なのだねえ。

結局、事件の幕を引くのは、最後の最後で再登場の柳生兵庫。
「柳生」ってだけで別格の存在感なんだけど、これって結局作者柳生大好きってことなのか。
(2012.6.28読了)

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五味康祐 『如月剣士 上』

2012.06.11(18:25)

五味康祐 著 如月剣士 上(徳間文庫/1986年刊) を読む。
如月剣士 上
紀伊藩主・吉宗が八代将軍職を継いだ。
だが、六代将軍・家宣が尾張家のために遺したという御墨付を手に入れ、吉宗の失政を画策する尾張藩の強硬派・津田兵部の宿怨は深い。
大岡越前守は怪盗五ツ目小僧を密偵にし、尾張藩の野望を阻止せんと秘策を練る。
また、播州三日月城主・森安芸守は、吉宗方の密命を帯びて江戸へ。
一方、江戸下谷に道場を構える元紀州藩士・立花隼人正は尾張藩邸に乗り込むが・・・・・・


超おもしれぇ~!
吉宗が将軍になったことが面白くない尾張藩が、様々な陰謀を巡らし、天下を乱さんとする話。

登場人物がそれぞれ魅力的に描かれている。
三日月藩の藩主・森安芸守は殿様なのに剣技に優れ、人柄も良いというナイスガイ。
老中・久世大和守に託され、虚無僧姿で事件に関わる。

元紀伊藩兵法指南役・立花隼人正は妻を愛し、妻に愛される町道場の主。
すごい達人だと描かれているが、誰とも相対することなく尾張藩邸にて切腹するハメになる。
尾張藩邸に向かう時、途中まで妻と連れ立って行くのだが、道中の会話がなかなか良い。
天下安泰の為死にに行く夫と、送り出す妻。味わい深い場面だった。

そして尾張藩邸で立花を迎える柳生兵庫。
柳生一族はいつの時期の人もカッコよいが、兵庫もまたいい感じだ。
実際に誰かと闘う場面はなく、天井裏に潜む曲者を槍で突くのであるが迫力がある。
そして切腹をする立花に対して、大名並みの処遇(座敷内で切腹)をする。
介錯した兵庫の息子・柳生三之丞の腕前も確かなもののようだ。

元旗本の高田左近というのも魅力的な人物。
剣の腕は物凄い。
居合いの達人なので描写はあっという間だが、とにかく強いのだ!
隻腕になり旗本を廃嫡しているのだが、将軍家の安泰の為奔走する。

蒲生鉄閑という剣客も勇ましい。
過去に高田左近の腕を切り落としたのはこの人で、立花隼人正を宿敵としている。
立花、高田と闘うために尾張方の客分となるが、なんか色々な所で色々やってるうちに、立花は切腹したので闘えてないし、高田ともまだ会えてない。

その他にも怪盗五ツ目小僧、森安芸守の弟桔梗哲之介と和之進、大岡越前守など、重要な人物がたくさん出てくる。
エピソードごとに、チャンバラ場面や政治的な小面倒くさい描写が出てきて、読むのがちょっと疲れるが思わず次へと読み進めてしまう。
下巻でどういう展開になっていくのかとても楽しみ。
(2012.6.9読了)

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梶尾真治 『ゑゐり庵綺譚』

2012.06.07(17:20)

梶尾真治 著 ゑゐり庵綺譚(徳間文庫/1992年刊) を読む。
ゑゐり庵綺譚
他星系へつながる穴が交差するアトランダムジャンクション近くの惑星ズヴゥフルVは、中継宇宙空港としてさまざまな宇宙人でごった返していた。
その宇宙港の片隅に、地球人の末裔アピ・北川の経営するソバ屋<ゑゐり庵>があった。
“銀河版食べ歩きガイド”にも名を連ねる評判のこの店では、今日もてんやわんやの大騒ぎ。
ユーモアとペーソスあふれる会心作!


ソバ屋に来る客が起こす事件や、客が語るエピソードを紹介する形で進められていく連作短篇集。
読み始めてすぐ、『21エモン』の絵柄が頭の中に浮かんできた。
いろんな星からくる人たちが、地球人のような外見もいれば、動物型もいたり、機械みたいなのもいたりするので、21エモンがソバ屋になった感じに思って読んだ。

記録してある味覚が再現される「擬似味覚体験ディスク」とか、憎悪エネルギーを弾丸にして憎たらしい奴を射殺できる「憎悪銃」など、藤子Fチックな話もあれば、聖書をモチーフにしたような話もあったり、地球人が開拓に行った星で経験した男と女のドラマがあったりと、いろんな傾向の話があってまことに楽しかった。
(2012.6.1読了)

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横溝正史 『比丘尼御殿』

2012.02.06(23:46)

横溝正史 著 比丘尼御殿 お役者文七捕物暦(徳間文庫/2002年刊) を読む。
比丘尼御殿
お江戸八百八町に淫らな噂が乱れ飛んでいた。
市中に比丘尼御殿なるものがあり、主の尼御前が家来に見目のよい男をさらってこさせ、精を吸い尽くしたあげくに捨てさせる、というのだ。
だが、いかに調べても、尼御前の正体も屋敷も判然としない。
大岡越前守を悩ます怪事究明に乗り出した、元歌舞伎役者の文七は、事件の背後にただならぬものを感じた・・・


元歌舞伎役者“お役者文七”シリーズ第二弾。
この文七という人、元をただせばさる殿様のご落胤で大道寺主水という名前の武士、さらに阪東蓑次という女狂言師にもなり、作中では一人三役で活躍する。

ストーリー的には、どこかで読んだことありそうなトリックを、上手く時代劇にアレンジしたような、わりとあっさりした出来映え。
そこに尼御前と世之助という若者との濡れ場を挿入したり、文七が居候してる岡っ引きの金兵衛の娘・お小夜の身に危険が迫る場面を作ったりして、ワクワク感を演出している。
この作品、連載が「週刊漫画Times」だったとのことなので、ガチなミステリーファン以外の読者に楽しんでもらえるように、本格推理じゃない話にしているようだ。
あくまで主人公の文七の活躍ぶりを前面に出したつくりになっている。

ところどころ
わかった、わかった。この三尺の投げ紐は・・・(以下略)
ああ、そうだったのか。それでは・・・(以下略)

などと乱歩チックな文体も垣間見せて、横溝師自身も大いに楽しんで描いてたようだ。
(2012.2.2読了)

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五味康祐 『続 色の道教えます』

2012.01.25(17:56)

五味康祐 著 続 色の道教えます(徳間文庫/1990年刊) を読む。
続 色の道教えます
裏店の先生月瀬右馬丞、実は老中の密命で浪人に身をやつし、諸大名・旗本の動静を探る、歴とした松平家の次男坊・松平豊三郎。
その先生がある日、お衿と五郎太に、老中の書簡を携えた無刻飛脚として、将軍家献上の御茶壺の道中奉行石尾阿波守に喧嘩を売れと命じた。斬首覚悟、なぜ先生は?
市井には石尾阿波守、奥女中を相手の淫靡な嗜癖ありとの噂が流れていた――(「壺泣かせ」)
色道に武士道を見る痛快時代小説。


性にまつわる話題を集めた連作短篇集。
一応、松平豊三郎が主人公として登場するのだが、エピソードによっては豊三郎がまったく出てこない話もある。
各篇とも非常に短く、とても読みやすいのだが、あまりに短すぎて結局わけが解らないというような話もあった。

「早乗り」というエピソードでは、大聖寺藩の“別式女”という、女性の武芸指南役の紹介をし、その別式女と藩士が道場にて立合いしてる所を目撃した松平豊三郎によって、大聖寺藩二百三十有余年の治世を通じて、唯一の疑獄事件が明るみに出る―― 何がなんだか解らなかった。

「壺泣かせ」という話は、旗本の間で流行った遊びにまつわるものだが、まあ、この遊びがエゲツない。
湯文字ひとつで四つ這いになり、前後左右に腰を振り動かす女を、後方から狙って槍で突くのだ。

「猫ぐるま」という話は、大垣藩を浪人した原田久右衛門夫妻の仲睦まじさを紹介した話。
なのだが、最後に猫ぐるまによって、奥方が絶叫するという・・・
猫ぐるまとは、あの、工事現場なんかでよく見かける一輪車のことです。
どういう体位かは分かるでしょ?

そのほか、人情話、滑稽話、剣術譚等々、バラエティに富んだ短篇集であった。
(2012.1.21読了)

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荒巻義雄 『シルクロードの秘宝』

2011.02.20(00:26)

荒巻義雄 著 『シルクロードの秘宝』(徳間文庫/1989年刊) を読む。
シルクロードの秘宝
政財界に人脈を持ち、回教徒の永遠四姉妹を妻にもつ経済研究所経営者・土方巌雄は、訪れた網走で、うら若い未亡人・平丘文子と吹雪の夜を供にした。
彼女の夫で大学講師をしていた秀雄は3年前、旅先のトルファン交河故城の断崖から転落したという。
文子は寝物語に、“シルクロードの秘宝”にまつわる不思議な歌謡を口ずさみ、夫の死に不審があると打ち明けた・・・
長篇冒険伝奇SF好評シリーズ。


この“秘宝シリーズ”、一作目の『ソロモンの秘宝』を読んだ記憶があるのだが、かなり昔に読んだので内容はほとんど覚えていない。
なので作品設定もなんとなくしか把握していないで読んだのであるが・・・

作者のあとがきに、“永遠家四姉妹の神女を妻とする、好漢、土方巌雄を主人公にした~”などと書いているが、好漢などとんでもない、このおっさん、出会う女性と片っ端から関係しちゃうという、ただの好色漢(笑)
一応、神秘的なおこない(宇宙的な本質エネルギーを体内に取り入れる)であるという設定のうえで、度々まぐあうシーンが出てくるのだが、ただ単にうらやましいぞ、おい。

殺人事件と秘宝探しというテーマもあるのだが、殺人のほうはご都合主義的に凶器が見つかったりしてツッコミどころ満載だし、秘宝も結局は土方氏は見つけることができず・・・とグッダグダ。
結局は“神女”である妻たちが、裏ですべて事件を解決していた(笑)
(2011.2.13読了)

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高橋克彦 『刻謎宮』

2010.03.11(06:52)

高橋克彦著 『刻謎宮』(徳間文庫/1997年刊) を読む。
刻謎宮
幕末の横浜を訪れたシュリーマンが勝海舟に贈った金時計が、12年後に彼が発掘したミケーネ遺跡の王墓から発見された。
歪められた歴史を修復するという使命をもって“管理センター”により沖田総司が蘇生される。
時空を超えて古代ギリシアでアンネ・フランク、マタハリと合流した沖田は、歴史が狂い始めた金時計の謎を追って各地を転戦し、ギリシア神話の世界を創り出していく・・・


とてつもなく面白かった。
雰囲気としては『竜の棺』『総門谷R』と同じ感じの歴史SF巨編。
舞台がギリシア神話時代であるのと、キャストが沖田総司、アンネ・フランク、マタハリ、ヘラクレスなどビッグネーム揃いなので豪華絢爛だ。
ギリシア神話のエピソードに沿って沖田たちが次々に襲い掛かる敵をやっつけていく展開が痛快だ。
歴史修復のために“管理センター”によって生き返った沖田であるが、センターに対抗する勢力があって、そっちの方には坂本龍馬が!
沖田と龍馬が、お互いに正体を知らないで相対する場面があるのだが、これがよい。
  「天然理心流か・・・・」
  「しかも・・・捨身返しとは」
  「お主、まさか・・・新撰組の沖田総司ではあるまいな」

神話時代のギリシアの地でも侍はかっこいいなあ。

あと、ヘラクレスが戦国武士のような言葉遣いなのが笑える。読んでて妙にしっくりくるのだよね。
(2010.3.5読了)

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梶尾真治 『躁宇宙・箱宇宙』

2009.04.23(23:05)

梶尾真治著 『躁宇宙・箱宇宙』(徳間文庫/1985年刊) を読む。
躁宇宙・箱宇宙
「ぬまざきさゆりです。おひさしぶりです」という女性からの電話をきっかけに、私は現実と非現実の狭間をさまよい始めた――(『鏡の国の胎児』)
ちょっとしたはずみから、ゴルフのゴの字も知らない自動車セールスマンの俺は、シングルプレイヤーの客とスクラッチで1打1万円というとてつもない賭けの約束をしてしまった――(即席ゴルフ上達法)
ユーモア、怪奇、幻想、ロマン――単行本未発表作品を集めた珠玉短篇集。全8篇収録。


久しぶりに読んだカジシンの短篇集。とても充実した時間を過ごせた。

『即席ゴルフ上達法』は、営業マンが客と賭けゴルフをするハメになるのだが、なぜか米ソ間の代理ゲームに発展して・・・最終的に古代日本へタイムスリップしてしまう。
なんともハチャメチャで楽しい話。

『鏡の中の胎児』はホラー。
読んだ後にジワジワと怖くなる系の作品。
自分が実は幻の存在だったとしたら・・・
いやほんとイヤだなあ。

『ファース・オブ・フローズン・ピクルス』は、著者のお家芸であるロマンスSF。
宇宙での恋愛を語らせたらカジシンが随一。
主人公に思いっきり感情移入して読める。

『包茎牧場の決闘』は、タイトルからフザケてるし、内容も下ネタのオンパレード。
掲載が「綺譚」ということで、思いきった下ネタをたくさん描けている。
そのくせ最後は哲学的なフィナーレ。
う~ん、面白かった。
(2009.4.20読了)

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横田順彌 『惜別の宴』

2009.03.04(23:09)

横田順彌著 『惜別の宴』(徳間文庫/1995年刊) を読む。
惜別の宴
明治末。皮膚が鱗状になった少年が急死し、調査依頼が、科学小説作家の鵜沢龍岳と〈武侠世界〉主筆の押川春浪に持ち込まれた。
同じ頃、明治天皇の病状が悪化。
二人の調査では、侍医の田上が少年と接触した形跡があり、伊藤博文と、大逆事件の管野スガの遺体にも鱗があった。
そして今、乃木大将にもその兆候があらわれた・・・


明治もののうち、〈春浪&龍岳〉シリーズと呼ばれるものの一篇。
押川春浪は実在した人物だが、鵜沢龍岳は著者の創造したキャラクターで、実在と非実在の人物たちが入り混じって活躍するこのシリーズは好きだ。
題材が、パラレルワールドからの爬虫人類による侵略ものと、純然たるSFであるのが嬉しい。
そして事件に登場するのが、乃木大将はじめ、実在の明治時代の偉いさんであるのも楽しい。
なにより、当時の地名であったり、〔ポテートオムレツ〕〔ホネムーン〕などの言葉遣いなど、時代を細かく写し取る作風がとてもオレ好み。
ヨコジュン作品の中でも充実の一冊。
(2009.3.4読了)

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横田順彌 『混線乱線殺人事件』

2008.11.07(22:44)

横田順彌著 『混線乱線殺人事件』(徳間文庫/1993年刊) を読む。
混線乱線殺人事件
俺の名前は早乙女ボンド之介。職業は村立探偵。
明るい農村の平和を守るため、スイカ泥棒や鶏姦犯人を追うのが仕事だ。したがって収入はほとんど無い。時々、警視庁の真暮警部の持ち込んでくる事件を手がけ、やっと生活している。
今日も松戸博士と名乗る老人と妙な連中がやって来て、犯人も被害者も見当たらない殺人事件を解決して欲しいと言うのだが・・・(「支離滅裂殺人事件」)
抱腹絶倒の連作短篇集。全6篇収録。


ヨコジュンファンにはめちゃくちゃ嬉しい一冊。氏の“ハチャハチャSF”時代の作品のキャラクターが総登場!ファン的には何とも贅沢な気分になれる。
全篇に渡って繰り広げられるダジャレ、またダジャレ。解りやすいものから、やや難解なものまでたくさんのダジャレが楽しめる。
ヨコジュンワールド全開の作品なので、ヨコジュンビギナーの人にもぜひ読んでみてほしい本である。

以前にも書いたことがあるが、今回も書かせてもらいます。

ヨコジュンの全著作をぜひ文庫化すべし!

(2008.11.5読了)

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光瀬龍 『吹雪の虹』

2008.10.17(00:23)

光瀬龍著 『吹雪の虹』(徳間文庫/1989年刊) を読む。
吹雪の虹
柏木秀人はバイトをしながら流浪の旅を続けていた。新宮寺笙子の行方を捜しているのだ。
孤児だった秀人は笙子の両親に引き取られ、笙子とは兄妹のように育てられたのだった。
だが、秀人がアメリカに行っている間、笙子の一家は交通事故にあい、両親は死亡、笙子は記憶喪失に。それを知って秀人は帰国したのだった。
笙子の姿を求める秀人、そしてひとり必死に生きる笙子―長篇青春小説。


あとがきによると、この作品は著者の青春時代に、身近に起こった出来事をもとに創作したとのこと。
なるほど、登場人物たちの悩み方がなんとなしにレトロなわけだ(笑)
今までの生活が崩壊し不幸な境遇になったり、恋愛のもつれにイライラする、この手の物語はオレの得意なジャンルではない。あまり感情移入できないというか。
商売をしていた父親が死んで借金が残されたとか、高校生にもなって好きな女子にイジワルをするとか、どうにも読んでて困ってしまう。
ドタバタ青春小説なら読んでて楽しめるんだけどね。こういうマジなスタイルの作品って、読んでていろいろ突っ込みたくなるからめんどくさいんだよねえ・・・
って、実は思いっきり作品に入り込んでるじゃん(笑)
(2008.10.15読了)

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横田順彌 『小惑星帯遊侠伝』

2008.09.02(18:04)

横田順彌著 『小惑星帯遊侠伝』(徳間文庫/1990年刊) を読む。
小惑星帯遊侠伝
光輝3年、火星に生まれた真継龍一郎は8歳で両親を失い孤児に。養父母になってくれたのは小惑星帯の任侠集団寺島組の組長夫妻。我が子のように愛されて育った龍一郎は、26歳の時、組主催の賭場で起きた殺人事件の身代わりとなり、流刑星タイタン送りとなる。10年後、刑を了えた龍一郎を待っていたのは組長の訃報だった・・・

任侠映画のエッセンスとSFを組み合わせた娯楽作。
任侠映画の世界観をそのまま宇宙に当てはめて描かれているので、話の内容的にはハードというかシリアスな感じなのだが、全体をユーモア感が包んでいる。
これってヨコジュン氏の資質だよねえ。ナンセンスのためのナンセンス。ここまで徹底してくれるのは爽快である。
「SFを知りすぎた男」と評されるヨコジュン氏だけに、ちょっとしたアイテムにも宇宙SFらしい名称にしてあったりして、とても楽しい。
(2008.8.28読了)

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荒巻義雄 『神撃つ朱い荒野に』

2008.04.11(12:31)

荒巻義雄著 『神撃つ朱い荒野に』(徳間文庫/1993年刊) を読む。
神撃つ朱い荒野に

人類と神々との戦争が始まって以来、人類は随所に敵を撃破し、順調に戦果をあげていた。が、突然、神々の猛反攻が開始される・・・
亜空歓喜海佐は、地上大型巡洋艦“青葉”の艦橋にあった。神々に制圧された“楽園高原”奪還のために夜襲作戦が決定されたのだ!
「ビッグ・ウォーズ」枝篇、火星戦記。


実は「ビッグ・ウォーズ」主篇(Ⅰ~Ⅳ)を読んでいないので、全体の流れがわからないのであるが、戦争終結の一つのエピソードとして、巡洋艦“青葉”の戦歴を語った作品なのであろう。
このシリーズから「ニセコ要塞」シリーズへの構想が出来上がったのだろうね。今回の作品を読むだけでもニセコ要塞的な臭いがするもんね。
久しぶりに宇宙を舞台にしたSFを読んだのだが、やはりいいねえ。オレは本来宇宙SFはそんなに好まないのであるが、たまに読むと作品に入り込める。たて続けに何冊も読むのはシンドイけど。
主篇を読んでいないから、神々の正体や、この戦争の目的といったことは何一つ解ってないので、そのうち主篇も読んでみようと思う。
(2008.4.10読了)
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五味康祐 『柳生稚児帖』

2008.03.14(08:30)

五味康祐著 『柳生稚児帖』(徳間文庫/1987年刊) を読む。
柳生稚児帖

尾張家兵法師範役 柳生新陰流当主兵庫厳蕃の嫡男・兵介は、町中で同僚に喧嘩を売られ一命を落とした。兵介の刀がいつの間にか折れやすい贋刀にすり替えられていたのだ。
この事件の背後に、幕府の開国主義に反対する藩主・慶恕を失脚させようとする陰謀を嗅ぎ取った厳蕃は、ひそかに女忍・蘭を放つが・・・
幕末の暗闘を、贋刀事件を軸に痛快無比に描く、剣豪小説巨篇。


時代が幕末であっても「柳生もの」はサイコーに面白い!
まるで『柳生武芸帳』の幕末版とでもいうような『柳生稚児帖』の書面。
だが、この稚児帖のことが紹介されるのは300ページ以上過ぎたあたり。この本、本文は533ページまでなので何と物語が始まって半分以上もかかってようやく稚児帖のことが出てくるのだ。だがそこに至るまでのストーリー展開がこれまた面白い。
だいたい幕末の暗殺事件に柳生がからんでいるという設定からしてゾクゾクしてしまう。特に姉小路卿暗殺が柳生によるものというアイデアはさすが著者ならでは。

実はこの作品、未完の大作であるので(そこん所も「武芸帳」と同じだね)、完結するにはこの2倍も3倍も分量が必要なのかも。
このような伝奇小説って未完のままでもカッコいいよね。
(2008.2.22読了)
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徳間文庫

  1. 荒巻義雄 『黄河遺宝の謎を追え!』(06/13)
  2. 横溝正史 『蜘蛛の巣屋敷』(06/18)
  3. 五味康祐 『如月剣士 下』(06/29)
  4. 五味康祐 『如月剣士 上』(06/11)
  5. 梶尾真治 『ゑゐり庵綺譚』(06/07)
  6. 横溝正史 『比丘尼御殿』(02/06)
  7. 五味康祐 『続 色の道教えます』(01/25)
  8. 荒巻義雄 『シルクロードの秘宝』(02/20)
  9. 高橋克彦 『刻謎宮』(03/11)
  10. 梶尾真治 『躁宇宙・箱宇宙』(04/23)
  11. 横田順彌 『惜別の宴』(03/04)
  12. 横田順彌 『混線乱線殺人事件』(11/07)
  13. 光瀬龍 『吹雪の虹』(10/17)
  14. 横田順彌 『小惑星帯遊侠伝』(09/02)
  15. 荒巻義雄 『神撃つ朱い荒野に』(04/11)
  16. 五味康祐 『柳生稚児帖』(03/14)