R・D・ウィングフィールド 『クリスマスのフロスト』

R・D・ウィングフィールド 著 芹澤恵 訳 クリスマスのフロスト(創元推理文庫/1994年刊)【FROST AT CHRISTMAS:1984】 を読む。

ロンドンから70マイル。ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小さまざまな難問が持ち上がる。
日曜学校からの帰途、突然姿を消した8歳の少女、銀行の玄関を深夜、金梃でこじ開けようとする謎の人物……。
続発する難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品極まる名物警部のフロストが繰り広げる一大奮闘。
抜群の構成力と、不敵な笑いのセンスが冴える、注目の第一弾!


フロスト警部初見参となる本書。
巷の評判通り、面白くてインパクトの強い作品であった。
少女失踪事件の捜査を本筋として、次々に起こる事件に関わりあい解決していくのだが、決して理路整然とした行動で捜査を進めるのではなく、何というかムダの多い動きをする人である。
このシリーズにおいては、謎解き推理とか、もつれた糸をほぐしていくような丹念な捜査ではなく、フロスト警部のジタバタした行動を楽しく観察するのが主眼なのだろう。
わりと直感に基づいて行き当たりばったりな捜査をするスタイルなのだが、「フロスト警部らしいよね」と納得させる作者の技量が凄い。

署の食堂とか、フロストのオフィスとかで、ことあるごとに紅茶を飲んでるところがイギリスらしいと思った。
コーヒーを飲む場面もあるのだが、ほとんどの場合は紅茶を飲んでいて、とても印象に残った。
(2016.5.8読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

コナン・ドイル 『霧の国』

コナン・ドイル 著 瀧口直太郎 訳 霧の国(創元推理文庫/1971年刊)【THE LAND OF MIST:1925】 を読む。

『失われた世界』『毒ガス帯』で大活躍した勇猛果敢な科学者チャレンジャー教授もいまや晩年を迎え、愛娘イーニッドとの二人暮らしだった。
そのイーニッドが「ギャゼット」紙の敏腕記者マローンと共同で心霊教会を取材することになり会合に出席したところ、なんと父親のかつての僚友サマリー教授の霊が現れて父宛てのメッセージを託された。
その話を聞くや、合理主義に徹したチャレンジャー教授は容赦ない毒舌を浴びせて心霊の存在を否定し、霊媒たちを悪党呼ばわりした。
巨匠ドイルが心霊術に取り組んだ晩年の異色作!


物語の骨子としては、バリバリの「物質主義」者であるチャレンジャー教授が、交霊会(セアンス)に乗り込み、心霊術信者と対決するも返り討ちに合い、「精神主義」者へ転向する…というものである。
しかし教授の出番は少なく、今作品では教授と懇意にしている新聞記者のマローン君が主だって活躍している。

作品発表当時においての、合理主義・物質主義が幅を利かせ、スピリチュアリズムが蔑ろにされている現状が書かれ、交霊会の様子が細部に渡ってかなり丁寧に描かれている。
マローン君は心霊術の取材を重ねていくうちに、最初は懐疑的だった立場から、だんだんと擁護する立場へと変わっていく。
チャレンジャー教授の場合は、インチキを暴くと称して乗り込んだ交霊会にて、どんなに頑張ってもインチキと言えないような心霊体験をした為、すっかり心霊信者になったのだった。

この作品、著者の意図としては、小説の姿をまとったスピリチュアリズム啓蒙書なのだと思う。
この当時に比べて、現代ではどれだけスピリチュアリズムは理解度が高まっているのだろうね。
(2015.12.6読了)

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テーマ : スピリチュアル
ジャンル : 心と身体

ディクスン・カー 『アラビアンナイトの殺人』

ディクスン・カー 著 宇野利泰 訳 アラビアンナイトの殺人(創元推理文庫/1961年刊)【THE ARABIAN NIGHTS MURDERS:1936】 を読む。

ある夏の夜、ロンドンの博物館を巡回中の警官が、奇々怪々な出来事に遭遇する。
それはとんでもない大事件の発端だった。
天下の奇書アラビアンナイトの構成にならって、この事件を解説するロンドン警視庁のお歴々は、警部と警視と副総監。
三者三様の観察力と捜査法を駆使したその話の聞き手はフェル博士。
陽光輝くアラビアの幻想と陰鬱な濃霧の流れるロンドンの現実が交錯する謎に、フェル博士はいかなる解決を与えるか?


この物語は、ある殺人事件の捜査の過程を、アイルランド人の所轄署警部、イングランド人の警視庁副総監、スコットランド人の警視庁警視が、フェル博士に語るという構成になっている。
事件捜査の初期、中期、後期を担当した各人の話により、何が起きたのか訳が分からない状態から、殺人事件だというのが分かり、関係者の取調べを整理していく話の流れはなかなか面白かった。
各人の証言を比較検討し、矛盾してるところが無いか整理したり、警部や警視が現場捜査する場面など、読み応えはあった。

だがねぇ、事件が起こるシチュエーションがどうもねえ。
「普段生意気な男を恐がらせるためにいたずらを仕掛ける」ために博物館経営者の息子や娘、その友人の博物館従業員などが変装をする、しかもターゲットは娘の婚約者……

なんかね、シラけるのよねえ。
ミステリーの状況設定には、通常の生活では起こりえない話も多々あるが、この場合、ちょっと種類が違うというか、この登場人物たちの程度の低さがシラける原因になっている。
いいトシした大人がするようなことじゃないことをしてるのがね。
物語の設定がいくらバカバカしくても読者はついていけるが、登場人物のアタマが悪いのは良くない。
トリックやアリバイありきの話作りなのは分かるが、作者ももう少し設定を練ったほうがいいんじゃないかと思った。

あと、捜査の語り手がアイルランド、イングランド、スコットランドの各出身なので、口のきき方から物の考え方まで、際だった対照を示していた、…と解説で中島河太郎氏は述べているが、イギリスの人が読んだら「あー、この人いかにもアイルランドっぽいわぁ」とか思うのだろうか?
(2015.11.19読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

アガサ・クリスチィ 『クリスチィ短編全集1』

アガサ・クリスチィ 著 厚木淳 訳 クリスチィ短編全集1(創元推理文庫/1966年刊)【THE HOUND OF DEATH AND OTHER STORIES:1933】 を読む。

ミステリの女王クリスチィは長編のみならず数多くの珠玉の短編を発表している短編の名手でもある。
本書は『ポワロの事件簿』等に収められた作品を除く9冊の短編集から、英米両版の重複異同を整理して全5冊に編集した待望の決定版全集である。
本邦初訳作品も含め、推理・怪奇・恐怖の三系統にまたがる多彩なクリスチィ短編の全貌に接して、読者はいまさらのようにトリックの創意と話術の妙に感嘆を禁じ得ないだろう。


短編全集第1巻には12篇収録。
怪奇・幻想小説に分類される作品を多数収録。
現代のホラーと比べると微笑ましい感じがしないでもない。
わりとけっこうな本数なので感想は追記にて。
(2015.10.5読了)

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モーリス・ルブラン 『ジェリコ公爵』

モーリス・ルブラン 著 井上勇 訳 ジェリコ公爵(創元推理文庫/1974年刊)【LE PRINCE DE JERICHO:1930】 を読む。

アルセーヌ・リュパンの前半生と後半生のそれぞれの化身をしのばせる二人の人物、海賊ジェリコと剛勇侠気のエレン・ロック。
誇り高い美女と謎のメダルをめぐっての死闘を中心に、ルブランならではの活劇、悲劇、喜劇が、地中海、パリ、ブルターニュの海と街と田園を背景に展開する。
老いてなお、瑞々しい感覚を失わなかった作者晩年66歳、1930年の快作!


アルセーヌ・リュパンの前半生と後半生のそれぞれの化身をしのばせるとあらすじ紹介にあるように、リュパン本人の話ではないのに、“アルセーヌ・リュパン・シリーズ”を謳うのはいかがなものか。
一応、シリーズと銘打たれていたら買ってしまうこちらが間抜けなのだろうか。

エレン・ロックの登場場面は確かにリュパンっぽい雰囲気を出していた。
その後立て続けの冒険的行動も。
むしろ作者が、このような人物造型しか出来ないのではないかという疑いも。

ヒロインであるナタリーはそれほど魅力的には感じなかった。
何というかペラペラと薄い感じではっきりしない印象であった。
ナタリーのいとこのマクシームは、人生に何も心配事のないような浮かれた青年で、気のいい坊ちゃん感が楽しかった。

ストーリーは記憶喪失のエレン・ロックが、記憶を取り戻すまでの冒険活劇を描いた話
で、何も考えず気楽に読める物語。
第一次世界大戦から数年後のヨーロッパ各地の雰囲気を感じ取りながら読むべし。
(2015.9.7読了)

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鯨統一郎 『新・世界の七不思議』

鯨統一郎 著 新・世界の七不思議(創元推理文庫/2005年刊) を読む。
新・世界の七不思議
来日中のペンシルベニア大学教授ジョゼフ・ハートマンは、古代史の世界的権威。
同じく歴史学者である早乙女静香と京都へ旅行しようとしてはキャンセルの憂き目に遭い、毎晩うらぶれたバーで飲むことに。
しかし、バーテンダー松永の供する酒肴に舌鼓を打ちつつ聴く宮田六郎と静香の歴史検証バトルは、不満を補って余りある面白さだった。
アトランティス大陸、ストーンヘンジ、ピラミッド、ノアの方舟、始皇帝、ナスカの地上絵、モアイ像……
宮田の説に耳を傾けながら、歴史に興味を持ち始めた頃のようにワクワクするジョゼフであった。


前作『邪馬台国はどこですか?』に比べ、早乙女さんのキャラが、いい感じのツッコミ属性になっていたので、読みやすさを感じた。
物語としては、定説をひっくり返した推理に終始した印象で、『邪馬台国はどこですか?』よりも面白さは薄かった。

その中では「始皇帝の不思議」は面白かった。
ここで語られた始皇帝=徐福説はどっかで読んだことあるなあ。
始皇帝は暴君ではなく、とても慕われてたっていうのは説得力がある。

盆踊りの話題になる場面があったのだが、使われてた曲が『好きになった人』『ラッコは海の子』『一人の手』などと話す場面が出てきたが、盆踊りの曲って各々の地域の民謡だと思ってたんだが違うのか。
因みに北海道では『子ども盆踊り』と『北海盆唄』しか掛からない。
(2014.3.3読了)

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モーリス・ルブラン 『リュパンの冒険』

モーリス・ルブラン 著 南洋一郎 訳 リュパンの冒険(創元推理文庫/1965年刊)【ARSENE LUPIN:1908】 を読む。
リュパンの冒険
過去十年に渡ってフランス警察を手こずらせてきた怪盗リュパンは、いまや一種の国民的英雄の観さえ呈するにいたった。
この間、シャーロック・ホームズも名刑事ガニマールも、ことごとくリュパンに敗北を喫している。
そのリュパンが、今度はシャルムラース公爵の居城にある貴重な古美術品を頂戴するとの警告状を発した。
大胆不敵なリュパンの挑戦に対し、フランス警察は、その面目にかけても彼を事前に逮捕しようと緊張する。
痛快無類のリュパン・シリーズの特色をこの一冊に盛った会心作!


この作品は戯曲として発表したものを、のちにノヴェライズしたものなのだそうだ。
もとが演劇作品なので、物語の進行はほぼ家の中という、展開としては地味なことこの上なし。
だが、解説で中島河太郎氏も述べてる通り、目新しいトリックなどは無いがリュパン物語の特色を盛り合わせた話作りになっている。

主要人物の一人であるシャルムラース公爵は、その人物像が語られるだけで、読者すべてが「はいはい」と思うだろうし、ヒロインのソーニアの描写はいかにもリュパン好みであったりする。

今回の事件を捜査するのはゲルシャール警部というのだが、これは舞台用に考案された名前で、おなじみのガニマールと同一人物であるらしい。
長らく、ゲルシャールの捜査と、それに茶々を入れたりするシャルムラース公爵の場面が続き、正直だれてくるのだが、リュパンが正体を現してからはスリリングに話が展開する。

オレが子供の頃読んだポプラ社版の本の記憶では、けっこうリュパンは派手な活躍してたように思ってたんだが、この本は作品全体が地味なんだよねえ。
ポプラ社版では南洋一郎氏、自身のセンスを大いに発揮したんだろうなあ(笑)
(2014.1.9読了)

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鯨統一郎 『邪馬台国はどこですか?』

鯨統一郎 著 邪馬台国はどこですか?(創元推理文庫/1998年刊) を読む。
邪馬台国はどこですか?
カウンター席だけの地下一階のバーに客が三人。
三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。
初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いていない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった……。
回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。
ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活――
を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵、奇想天外なデビュー作品集。


主に論戦をする宮田六郎と早乙女静香の二人、どちらの人物もオレにはちょっと苦手な感じの性格なので、変に物語に入り込むことなく淡々と読んだ。

全6篇の作品が収められてる中で、インパクトのあるのはやはり表題作の『邪馬台国はどこですか?』であろう。
この中で語られている説は、オレは初めて目にした説だった。
ここで語られる説は恐らくネタなのであろうが、引き込まれるに十分な内容ではあるので、ホントにこの線で研究してみる価値はあるのではと思った。

聖徳太子はだれですか?』も面白かった。
この時代はロマンを感じるねえ。
やっぱりこの時代については、大怪物の藤原不比等の人物像の研究に尽きるだろうなあ。

維新が起きたのはなぜですか?』も面白かった。
いや、収録されたどの作品も面白かったのだが、一段とね。
この作品で語られている説は、かなり破天荒な内容だとは思うのだが、「意外と言い当てちゃってんじゃないか」と思わせるのがいい。

歴史ミステリとして、申し分のない出来の作品集であった。
(2013.1.15読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

コナン・ドイル 『勇将ジェラールの冒険』

コナン・ドイル 著 上野景福 訳 勇将ジェラールの冒険(創元推理文庫/1972年刊)【ADVENTURES OF GERARD:1903】 を読む。
勇将ジェラールの冒険
ナポレオン庇下の軽騎兵第十旅団きっての名剣士ジェラールが語る数々の武勇談。
皇帝には忠誠無類、剣には強くカワイコちゃんには弱い男一匹。
まさに「三銃士」のダルタニアンの再来を思わせる明朗闊達なガスコン生まれの快男児獅子奮迅の大活躍。
マルボ将軍をモデルにナポレオン時代の戦史に基づいて西洋騎士道の本流を描く痛快無比の歴史小説!


前作『勇将ジェラールの回想』に続く老准将の思い出話第2弾!
今巻も、自分がいかに勇敢な軍人であったか、いかに各遠征地でモテモテだったかを、思う存分披露。
ヴェニス、イギリス、スペイン、ポルトガル、ロシアとずいぶん色んなところでエピソードを残してますなあ。
前巻を読んだ時は、ジェラール爺さんの語る活躍やロマンスが、ずいぶん鼻につきつつ読んだのであるが、今巻の第3話以降、逆にもの悲しくなってしまった。
第3話「准将が狐を殺した顛末」の冒頭で、現在の自分の境遇を語る場面があるのだが、キャベツの栽培をしながら、月100フランで生活しているのだそうだ。
この時の100フランがどの程度の価値があるのか分からないが、第6話「准将がミンスクに馬を進めた顛末」では、どうやらいつもワインをおごってもらっているような描写があるので、あまりゆとりのある生活はしてないらしい。
そういうことを踏まえて、輝かしいナポレオン軍のエース格であった頃の話を読むと、実にどうもしんみりしてしまうのだよねえ。

ということで、ヴェニスのルチィアにモテたり、狩りでイギリス人に勝ったり、ナポレオンの身代わりをつとめてプロシア軍を翻弄したりといった冒険談を、「ジェラール爺さんすごいや!」と思いながら読み、自分が年寄りになった時には、自慢話は極力しないようにしようと思ったのであった。
(2012.10.25読了)

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テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

紀田順一郎 『古本屋探偵の事件簿』

紀田順一郎 著 古本屋探偵の事件簿(創元推理文庫/1991年刊) を読む。
古本屋探偵の事件簿
東京は神田神保町にある古書店「書肆・蔵書一代」主人須藤康平が出した「本の探偵――何でも見つけます」という広告につられ、次々とやってくる奇妙な依頼人。
彼の許に持ち込まれる珍書、奇書探求の依頼は、やがて不可思議な事件へと進展していく。
「殺意の収集」「書鬼」「無用の人」の三中篇に、長篇「夜の蔵書家」を収めた。
鬼気迫る愛書家の執念が、読む者を慄然とさせる傑作揃い。


この作品集は物語そのものより、古書業界についてのいろんな話がとても面白かった。
名うての収集家ともなると古書店やマニアの間で有名人になるんだねえ。

殺意の収集
図書館に寄託した限定私家版の稀本が、雑誌にすり替えられていた…という話。
“愛書家”と呼ばれる人種(「愛書家」と「読書家」というのは違う人種だそうです)の執着心や、愛書家同士の間の見栄、憎悪などがいかんなく描き出されていて何やら恐ろしい。
図書館への本の「寄贈」と「寄託」の違いや、基地外めいた古書収集家のエピソードなど、いろいろ興味深かった。

書鬼
古本屋の主人が、古書捜査のために八戸まで出張するのが笑える。
古書店が本を仕入れるルートっていろいろあるんだねえ。
この作品集、古書業界のウラ話がふんだんに紹介されていて面白い。

無用の人
古書店が集まって市を開き、セリにかける場面が紹介されているが、なかなか奥が深いのであった。

夜の蔵書家
デパートの古書即売展の開場時の描写が凄い。
開店45分前にサラリーマンや古書業者など、おっさんばっかり何十人も並んでいる光景はちょっと恐い。
そのおっさん達が、開店と同時に我先にとダッシュする光景はとても恐い。
戦後の印刷業界の裏面史が紹介されていて、たいへん興味深く読んだ。
(2012.8.23読了)

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

エドガー・アラン・ポオ 『ポオ小説全集Ⅰ』

エドガー・アラン・ポオ 著 いろんな人 訳 ポオ小説全集Ⅰ(創元推理文庫/1974年刊) を読む。
ポオ小説全集Ⅰ
アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求したポオは、後世の文学に多大な影響を及ぼした。
巧緻精妙をきわめる〈鴉〉の詩人としては、ボードレールに始まるフランス象徴詩派に決定的な影響を与え、比類の無い短篇小説の名手として推理小説を創造し、怪奇小説・空想科学小説・ユーモア小説の分野にも幾多の傑作を残し、さらにまた透徹せる審美家、批評家として、詩論に文芸批評にすぐれた足跡を残し、その全貌は文字通り天才としか呼び得ないほど広くかつ卓越したものである。


ポオの作品をまともに読んだのは初めて。
小学生の頃に読んだ「モルグ街の殺人」「黄金虫」以来のポオ読みである。
ポオの時代に書かれた物語を読むと、ホラー・SF・ミステリというのは根っこは同じものなのだということを強く感じる。
各々の感想は追記にて。
(2012.8.11読了)

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

モーリス・ルブラン 『緑の目の令嬢』

モーリス・ルブラン 著 石川湧 訳 緑の目の令嬢(創元推理文庫/1973年刊)【LA DEMOISELLE AUX YEUX VERTS:1927】 を読む。
緑の目の令嬢
サファイヤのように澄んだ瞳をもつ令嬢、街角で心ひかれた女性のために、たちまち怪事件に巻き込まれたラウール。
特急列車殺人事件、別荘強盗事件、ホテルでの恐喝事件へと発展していくなかで、彼はついに相次ぐ事件の謎と、青い目の女性の陰に隠された恐ろしい秘密を嗅ぎつける。
ラウールこと、何を隠そうアルセーヌ・リュパンは敢然とその渦中に飛び込んで謎を究明するが、一時は、さしものリュパンも手こずって途方にくれる難事件!


今年最初の読了本。
なんでも『ルパン三世 カリオストロの城』の元ネタの一つになってるとのことだが、
・湖の水がひくとローマ遺跡が現れる
・ヒロインの心が盗まれる

くらいしかアイデアとして採用されていないようだ。
まあもっとも、ヒロインの心を盗むのは、この作品に限らずいろんな話で盗みまくってるので、実質的にこの作品からのモチーフは、ローマ遺跡のエピソードだけであろう。

本作は、殺人現場に現れた「緑の目の令嬢」が、どう事件に関わっているのかを解明することで、物語としては終了しているのだが、その後のリュパンの冒険を描くことでボリュームを持たせている。
人格的に問題のあるマレスカル警視を、とことんからかったり、敵対する強盗に自分の正体を明かして恐れ入れさせたり、犯罪界におけるリュパンの大物ぶりを遺憾なく発揮している。
超人的なリュパンの活躍ぶりが目立つ冒険譚であった。
(2012.1.2読了)

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モーリス・ルブラン 『赤い数珠』

モーリス・ルブラン 著 井上勇 訳 『赤い数珠』(創元推理文庫/1973年刊)【LE CHAPELET ROUGE:1934】 を読む。
赤い数珠
パリ近郊の田舎貴族の城館でひらかれた楽しい野遊会の日、突然発生した殺人と盗難事件。
乗り出したのは、アルセーヌ・リュパンのよき理解者である一風変わった予審判事のルースラン。
彼は安楽椅子に腰掛けたまま、ご馳走をたらふく詰め込み、にやにや笑いながら、みごとに事件を解決する。
ルブランの死の直前、1934年の作品で、70歳という年齢を思わせない瑞々しさをたたえた謎解きもの。
心理派推理小説に転身したルブランの新しい一面を具現化した晩年の秀作。


まずは苦情から(笑)
表紙に「アルセーヌ・リュパン・シリーズ」と書いてありながらリュパン登場しないじゃん!
なんでも探偵役のルースランが、この作品の次に発表された『カリオストロの復讐』に登場するため「準ルパンシリーズ」扱いされているとか。

物語の内容をざっくり記せば、富豪のドルサック伯爵が、以前から狙っていた美貌の人妻・クリスチアーヌを我が物とすべく園遊会を開催するが、その期間中に盗難事件と殺人事件が発生する・・・

ドルサック伯爵という人は、何年振りかで会った友人の妻をモノにしようというんだから、相当たちの悪いおっさんだよねえ。
妻がいるのにこの行状。ちなみに妻は美しくない。

予審判事のルースランも強烈な人で、自分どうこうするのではなく、関係者同士で話をさせて、それだけ。
ほんとにそれだけで事件解決。
関係者がめいめい推理したり証拠品を見つけたりしてくれるんだから、こんな楽な探偵も珍しい。
(2011.3.13読了)

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モーリス・ルブラン 『二つの微笑を持つ女』

モーリス・ルブラン 著 井上勇 訳 『二つの微笑を持つ女』(創元推理文庫/1972年刊)【LA FEMME AUX DEUX SOURIRES:1927】 を読む。
二つの微笑を持つ女
ジャン・デルルモン侯爵邸に忍び込んだラウールは、侯爵の身辺に漂う異様な雰囲気に何事かを嗅ぎつけた。
そして今彼は、未解決のまま謎とされている15年前の惨劇、凶弾に倒れたエリザベート・オルネンの死と死体から消えた首飾りや人手に渡った城館などに侯爵がかかわりのあるのを知った。
15年前の事件の裏に潜むものはなにか。金髪美女。ギャングの親分を追うゴルジュレ警部。
ことも鮮やかに事件の謎を解いていく、怪盗紳士アルセーヌ・リュパンの大活躍!


今作品のリュパンは、基本ラウールとして活動し、一度ドン・ルイス・ペレンナとして登場しジャン・デルルモン侯爵所有の城館を購入、合間合間にヒロインに対してリュパンであることを示唆(というかひけらかし)するといった感じで、けっこう忙しく動き回る。
ヒロインのアイデアはなかなか良いのではないか。
さしものリュパンもけっこう後半になるまで見透せてなかったもんね。
15年前のエリザベート・オルネンの死の真相については「ホントかよ!」と思ってしまうこと間違いなし。
ルブラン爺さんもわりと強引な話作りしてるなあ。
(2011.2.19読了)

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ヴァン・ダイン 『誘拐殺人事件』

ヴァン・ダイン著 井上勇訳 『誘拐殺人事件』(創元推理文庫/1961年刊)【THE KIDNAP MURDER CASE:1936】 を読む。
誘拐殺人事件
旧家の道楽息子が誘拐され、現場には50,00ドルの身代金を請求した紙が残されていた。
現場を検証したファイロ・ヴァンスが言った “彼はもう死んでいるかもしれない”
夫のあとを追って行方不明となる被害者の夫人、奇妙な毛筆のしるしがついた脅迫状。
すべてが偽りの謎の中から、ただひとつの真実の謎を発見したヴァンスは、みずから死地に飛び込んで、犯人を押さえようと決心する。


一般的に、ファイロ・ヴァンス物語全12作のうち、重要なのは最初の6作で、後半の6作は凡作であるということを、以前何かの本で読んだことがある。
『誘拐殺人事件』は第10作目。
・・・「なるほど」と思う内容であった。

一通り登場人物が出揃ったところで、犯人の見当がついてしまう。
そして物語の中盤くらいの、香水のくだりの部分で、もうその考えから離れられない。
結局予想通りに事件解決。
ミステリーでは、「意外な犯人」というのが醍醐味の一つであると思うが、犯人だと予想される人物がやっぱり犯人だったというのも違う意味で「意外」ではある。

今作品でのヴァンスは香水や宝石についてちょっと語ったくらいで、深い知識を披露する機会がなかった。
ヴァンスは日本に滞在していたことがある模様。柔術を会得していることを示唆している。
(2010.10.22読了)

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H・P・ラヴクラフト 『ラヴクラフト全集2』

H・P・ラヴクラフト著 『ラヴクラフト全集2』(創元推理文庫/1976年刊) を読む。
ラヴクラフト全集2
太古の昔、全宇宙を支配していたという邪悪な神々は絶えてしまったわけではない。再びこの世を掌中に収める時がくるのを今なお待ち受けているのだ・・・
宇宙的恐怖に満ちた暗黒世界への鍵ともいうべき『クトゥルフの呼び声』、冥界の旋律にとらえられた老音楽家の怪異を描いた『エーリッヒ・ツァンの音楽』、魔神たちの秘密を知った青年を襲う恐るべき出来事を描いた長篇『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』の3篇を収録。


『クトゥルフの呼び声』
1926年の作品。
この作品から、クトゥルフ神話体系が構築されていくことになる由。
ラヴクラフト作品を読むのは今回初めてなのだが、頭ん中で絵や映像がイメージしやすいような描写をする作家ですな。
「宇宙」という言葉が出てくるだけで、わけもなくワクワクしてしまうよね。

『エーリッヒ・ツァンの音楽』
1921年の作品。
音楽による恐怖を描いた短篇。
街の雰囲気とか、主人公が間借りする建物の雰囲気とかがよい。
そしてヴィオルという楽器が想像力をかきたてる。
どんな音がするんでしょうね。

『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』
1927~28年の作品。
ラヴクラフトには珍しい長篇作品とのこと。といっても分量的には中篇というべき。
黒魔術のことを書いた話。
舞台となっているロードアイランド州プロヴィデンスはラヴクラフトの地元であるが、ニューイングランド地域っていうのは、こういう小説にイメージあいますなあ。
独立戦争前後のニューイングランドの様子も雰囲気たっぷりに描かれていて良い。
黒魔術を使うジョゼフ・カーウィンも気持ち悪く描かれているし、本書に収録の作品の中では一番おもしろかった。
(2010.10.5読了)

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テーマ : ホラー
ジャンル : 本・雑誌

エラリー・クイーン 『エラリー・クイーンの事件簿1』

エラリー・クイーン著 青田勝訳 『エラリー・クイーンの事件簿1』(創元推理文庫/1972年刊)【THE VANISHING CORPSE/THE PENTHOUSE MYSTERY:1941】 を読む。
エラリー・クイーンの事件簿
<健康の家>の主人が殺された。医師からガンの宣告を受けた直後のことだった。ところが死体置場に運び込んだはずの死体が、いつのまにか石膏の像に変わっていた。ひょんなことから事件に巻き込まれた推理作家志望の娘ニッキー・ポーターと共に、エラリー・クイーンは捜査を開始する。
エラリー&ニッキーのコンビが手がける第二の事件は、中国帰りの腹話術師の殺人事件。スパイ、イカサマ賭博師、怪しげな中国人、現場に残された謎のカード、紛失した宝石の行方、などなど小道具が取り揃った本格ミステリ。


本書に掲載の「消えた死体」「ペントハウスの謎」は2作とも映画のために書いた脚本を、クイーン自らノベライズした作品とのこと。
どちらの作品も割りと分かりやすい構成で、どんでん返しな場面もなくストレートに物語が進行する。
映画ならヒロインが必要ってことで、クイーンの秘書としてニッキー・ポーターを登場させているが、このニッキー嬢、好奇心旺盛なドジッ子という、昔のアメリカ映画によく出てきそうな女性だ。
とても良い。

「消えた死体」の被害者であるジョン・ブラウンという人は、「健康の家」というジムを経営したり、健康食品を売ったり、いわゆるダイエット産業の会社を経営してるのだが、この作品が書かれたのは1941年。
戦前・戦中に発表されたクイーン作品を読むたび思うんだけど、当時の日米の生活レベルの差というのははなはだしいものがあるよなあ。。。
(2010.9.26読了)

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山口雅也 『キッド・ピストルズの冒瀆』

山口雅也著 『キッド・ピストルズの冒瀆 パンク=マザーグースの事件簿』(創元推理文庫/1997年刊) を読む。
キッド・ピストルズの冒#28678;
舞台はパラレルワールドの英国。
四つの不可思議な事件に挑むのは、ロンドン警視庁<そんな馬鹿な>事件処理課のパンク刑事キッド・ピストルズとピンク・ベラドンナ、そして探偵士の称号を持つ名探偵たち。
そのどれにも英国の古い伝承童謡<マザーグース>の一節が、あたかもライトモティーフの如く不気味に谺していた!
おそらく世界初の試みと思われるマザーグース・ミステリ連作シリーズ第一弾。


かなり更新をサボってしまった。久しぶりにパチンコ通いしているのでパソコンに向かう時間が激減しているもので・・・ 更新してないにも関わらず、訪問してくださっている皆さんには申し訳なさと感謝の気持ちがないまぜでございます。

で、『キッド・ピストルズの冒瀆』。
最初に序文としてパラレル英国概説が語られて、この作品の世界観が説明されている。
物語は4篇のマザーグースミステリ。
これらの事件を解決していくパンク刑事のキッド・ピストルズ(とピンク・ベラドンナ)の活躍が痛快だ。
お話としては、第3話の「曲がった犯罪」が一番おもしろかった。
この作品集はミステリとしての楽しさはもちろん、作者の映画や音楽への造詣の深さも窺われるので読み応えがある。
(2010.6.28読了)

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山口雅也 『生ける屍の死』

山口雅也著 『生ける屍の死』(創元推理文庫/1996年刊) を読む。
生ける屍の死
ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った!
この怪現象のなか、霊園経営者一族に殺人者の魔手が伸びる。
死んだはずの人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか?
自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相をつかむことができるのか?


読み終えてからだいぶ間があいたので、あまり気のきいたことが書けないが思ったことをいくつか。
往年の欧米本格推理小説の雰囲気を醸し出してて楽しめた。
いかにも翻訳調な文章があったりするところが特に面白い。
事件が起こる舞台設定がクイーン作品的だったり、ブラウン神父ものを思い出させる感じの部分があったり、あと多分、自分が読んだことのない古典本格物の雰囲気を随所にちりばめているだろうと思わせる物語であった。

死者が甦る世界という設定ってどうなの?と思う向きがあるかもしれないが、クイーン作品の読者なら全く違和感はないはず。
なぜならクイーン作品の設定も非日常的・非現実的なものが多いからね。国名シリーズしかり、ライツヴィルものしかり、ドルリー・レーンものだってそうだし。ってほとんど全部じゃん(笑)
(2010.6.3読了)

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ヴァン・ダイン 『カナリヤ殺人事件』

ヴァン・ダイン著 井上勇訳 『カナリヤ殺人事件』(創元推理文庫/1959年刊)【THE CANARY MURDERCASE:1927】 を読む。
カナリヤ殺人事件
ブロードウェイの名花〈カナリヤ〉が、密室状態の室内で絞殺死体となって発見された!
しかも、4人いる容疑者にはそれぞれアリバイがあったが、どれにも欠陥があり、これという決め手に欠けていた。
ファイロ・ヴァンスは容疑者を一堂に会し、犯人を指摘しようとする。
ヴァンスの唱える心理的探偵法は、いかなる成果を上げるのか?


本作はヴァン・ダインの第2作。
前作で世のミステリファンを震撼させたファイロ・ヴァンスがまたまた活躍!
・・・ということではあるが、
正直イマイチだった。

ハイライトとなる場面は、容疑者を集めてポーカー勝負をして、それぞれの性格を読み、真犯人を見極めるところであるのだが、ちょっと強引な感じがした。
この手法は、クリスティの『ひらいたトランプ』のほうが、読んで納得できる。

密室トリックなどは、今読むと当然古典的なものではあるが、なかなか面白いものであった。
ヴァンスの“知識ひけらかし”も思ったより少なく、全体的には読みやすかったかな。
(2010.4.22読了)

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エラリー・クイーン 『ドラゴンの歯』

エラリー・クイーン著 宇野利泰訳 『ドラゴンの歯』(創元推理文庫/1965年刊)【THE DRAGON'S TEETH:1939】 を読む。
ドラゴンの歯
エラリー・クイーンはボー・ランメルという青年と一緒に私立探偵社を経営することとなった。
ある日、そこへ億万長者が現れ、将来、事件を依頼するからと言って、多額の契約金を払っていったが、その数日後、依頼人は愛用の豪華ヨットの上で謎の死をとげてしまった・・・・
巨万の富を相続する二人の娘をめぐって巻き起こる怪事件に乗り出したクイーンの活躍!


けっこう長い作品なのだが、半分以上、ボー・ランメル青年とケリー・ショーン嬢の恋の行方に話が割かれていた印象を受ける。まあ、ちょいちょい事件は起こるのであるが。
犯人探しについては、わりとオーソドックスなので解りやすいのであるが、事件の背景について、解決篇の時に初めて提示される部分もあったりして、“国名シリーズ”のようにはすべてのデータが読者に提示されていないのが残念なところだ。

この作品は1939年の発表なのであるが、「終夜営業のドラッグストア」という文があった。
こうした何気ない文を読んだだけでも、当時の日米の国力の差というのを痛感してしまう。
(2010.4.7読了)

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アガサ・クリスチィ 『パーカー・パインの事件簿』

アガサ・クリスチィ著 小西宏訳 『パーカー・パインの事件簿』(創元推理文庫/1963年刊)【PARKER PYNE INVESTIGATES:1934】 を読む。
パーカー・パインの事件簿
身の上相談所の所長パイン氏のもとには、さまざまな依頼人がその悩みを訴えにくる。
夫の浮気に悩む中年の人妻、人生に退屈した退役軍人、冒険を求める平凡なサラリーマン、金の使いみちに困っている未亡人等、前半の6篇は人生相談の連続短篇、そして後半6篇は旅に出たパイン氏が遭遇する、犯人さがしの本格短篇。
クリスチィが創造した、ポワロ、ミス・マープルと並ぶパーカー・パインの活躍!


本書に登場のパーカー・パイン氏は、統計を集めることに従事してきた退職官吏だそうだ。
で、今は不幸な人の悩みを解決する相談所みたいなものをやっている。
なんだか胡散臭い感じがするが、パイン氏の醸しだす雰囲気で、依頼人はパイン氏を信用してしまう。
このあたりの設定、クリスチィ女史もけっこうアバウトな感じですなあ。
風貌は、でかいポワロといったところ。ハゲおやじが好きな作者だ(笑)

前半の6篇は、身の上相談を軽快に解決するパイン氏およびスタッフの活躍。
スタッフには美男美女、売れっ子女流作家、医師と豪華布陣。
だが、なぜこういう事務所をかまえているのかまったく分からないくらい、携わる事件というのが浮世離れしていて、どうにもフワフワした感じの作品群である。

ネタが尽きたのか、設定に無理を感じたのか、後半の6篇は旅行に出たパイン氏が行く先々で起こる事件を解決する本格短篇。
20世紀前半のヨーロッパの上流階級の雰囲気を味わいつつ、パイン氏の名推理を堪能。
(2009.10.17読了)

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コナン・ドイル 『勇将ジェラールの回想』

コナン・ドイル著 上野景福訳 『勇将ジェラールの回想』(創元推理文庫/1971年刊)【THE EXPLOITS OF BRIGADIER GERARD:1896】 を読む。
勇将ジェラールの回想
ナポレオン軍の軽騎兵第10旅団きっての名剣士ジェラールが語る数々の武勇談。
皇帝には忠誠無類、剣には強く女には弱い男一匹。
まさに「三銃士」のダルタニアンの再来を思わせる明朗闊達な快男子獅子奮迅の大活躍。
西洋騎士道の本流を描く痛快無類の歴史小説。


ジェラール准将という人は、コナン・ドイルの創造した他のキャラクター(ホームズ、チャレンジャー教授)に比べると、普通の人だ。
といっても、彼らのような性格破綻者に比べてなだけで、例えば職場の同僚としていてほしいかと問われると、いてほしくはない(笑)
回想録という形式をとっているので、ジェラール氏の一人称小説なのであるが、まあ自慢するね、この人。
ナポレオンへの忠誠の度合いとか、剣のうまさとか、度胸のよさとか、モテ度とか、誰も検証できないと思って言う言う(笑)
謙遜しまくりの武士道に比べ、自慢しまくりの騎士道というのは、日本人にはやはりちょっと鼻についてしまうね。
(2009.8.12読了)

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エラリー・クイーン 『エラリー・クイーンの事件簿2』

エラリー・クイーン著 青田勝訳 『エラリー・クイーンの事件簿2』(創元推理文庫/1974年刊)【THE ADVENTURE OF THE LAST MAN CLUB/THE ADVENTURE OF THE MURDERED MILLIONAIRE/THE PERFECT CRIME:1940,1942,1942】 を読む。
エラリー・クイーンの事件簿2
株で失敗した相場師のピストル自殺。
現場を見たという目撃者がいるのにもかかわらず、検視医は殺人と断定した。
アリバイの明確な6人の容疑者たち。
エラリー&ニッキーのコンビは「完全犯罪」の謎に取り組む。
他に、ラジオドラマの脚本から小説化した「〈生き残りクラブ〉の冒険」「殺された百万長者の冒険」を収録。


『〈生き残りクラブ〉の冒険』は、いろいろな作家が使っているネタ。
さすがのオレにもすぐ分かったくらいの、初心者向け作品。
『殺された百万長者の冒険』も、かなり分かりやすい犯人。
もともとがラジオドラマであるので、あまり複雑な筋に作ってないようだ。
どちらの作品もニッキーの存在感がけっこうあって、聴取者を飽きさせないようにしたのだろうね。
『完全犯罪』は、映画の脚本から小説化した作品。
このトリックもどこかで読んだことのあるもの。
ただ、真犯人の意図しないところでのトリックなので、物語としては膨らみがあり良かったと思う。

すべて脚本からの小説化ということで、発端から結末までストレートに流れ、もたつくような場面がないのは分かりやすくはあるが、ちょっと食い足りない気がしないでもない。
(2009.4.27読了)

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エラリー・クイーン 『靴に棲む老婆』

エラリー・クイーン著 井上勇訳 『靴に棲む老婆』(創元推理文庫/1959年刊)【THE QUICK AND THE DEAD (There Was an Old Woman):1943】 を読む。
靴に棲む老婆
靴作りで巨億の財を成し、《靴の家》に住む、老婆と6人の子供たち。
この一家に時代錯誤な決闘騒ぎが勃発、エラリーらの策も虚しく不可解な殺人劇へと発展する。
“むかし、ばあさんおったとさ、靴のお家に住んでいた”――マザー・グースの童謡そのままに展開する異様な物語。
ナンセンスな着想と精妙な論理が輝く、風変わりな名作!


今回読んでみてつくづくと思ったこと。
「エラリー・クイーンの作品は(大多数が)ファンタジック・ミステリーであるなあ」
まあ、この作品はマザーグース・ミステリなので、その要素が強いのは当然っちゃ当然ではあるが、同じマザーグース・ミステリでもヴァン・ダインやアガサ・クリスティはもう少し現実的っぽく描こうとしていた気がする。
ところが我がクイーン氏ときては、最初の設定からそんな気さらさら無いようだ。
国名シリーズの作品もかなりファンタジーだと思っていたが(今思えばドルリー・レーン作品も全部そうだ)、この作品はファンタジーで押し通している。
そのくせ、犯人の動機はなんと現実的というか生臭いというか(笑)

マザーグース・ミステリなのに、登場人物たちのアクの強い性格が強く心に残ってしまい、マザーグースの童謡の歌詞については心に残らなかった。
(2009.4.14読了)

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ヴァン・ダイン 『ベンスン殺人事件』

ヴァン・ダイン著 井上勇訳 『ベンスン殺人事件』(創元推理文庫/1959年刊)【THE BENSON MURDER CASE:1926】 を読む。
ベンスン殺人事件
ウォール街の悪徳株式仲買人アルヴィン・ベンスンの怪死をめぐり、多くの容疑者の中から独自の心理的探偵法により真犯人を指摘する名探偵ファイロ・ヴァンス。
本書はアメリカの長篇本格推理小説の黄金時代開幕の契機となった歴史的記念作で、そのペダンチックな作風はその後に多くの模倣者を生み出したほど革命的なものだった。


シリーズの一作目ということで、ファイロ・ヴァンスの人となりが詳しく紹介されていたり、ヴァンスとヴァン・ダインとの関係が語られていたりしている。
ヴァンスのような身分(夏目漱石風にいうと高等遊民)の人間が活躍してしまうところに時代を感じる。
この作品はまだ、くどいほどの知識のひけらかしは無かったので読みやすかった。
犯人探しについては、オレにしてはわりと早くから犯人が分かったので嬉しい反面、オレにバレるようでは作品のレベルとしてはそんなに高くないと思った。
しかし歴史的な記念作ということで、こういう本を読むと作品の内容とかより、読んだことに対する満足感があるなあ。

(2009.4.8読了)

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エラリー・クイーン 『シャム双子の謎』

エラリー・クイーン著 井上勇訳 『シャム双子の謎』(創元推理文庫/1960年刊)【THE SIAMESE TWIN MYSTERY:1933】 を読む。
シャム双子の謎
古いインディアン集落を背景に、異様な境遇をもったふたりの人物を登場させ、怪奇な殺人物語が展開される。
エラリーの長い犯罪捜査の経験の中で、官憲の手を借りずに独力で快刀乱麻を断った最初の事件でもあった。
刑事も、指紋係も、検死官もひとりとして登場しない、エラリーの「国名シリーズ」の中でも珍しい一篇。


今回の国名シリーズはなんと!タイトル通りに(?)シャム双子が登場する。ただし彼らが謎なわけではない(笑)
この作品の舞台設定はちょっと変わっていて、山の頂上にある邸宅にクイーン父子が迷い込む。なぜかというと、ふもとの方は山火事だから。という、状況としては密室的な設定なのである。
だが、特にこの状況設定がこの作品を素晴しい雰囲気にしているとかいう訳でもなく・・・あえて言うなら、トリックの地味さをカバーした、エラリーの論理的思考を混乱させる為(著者の作為としてね)に考えた状況に思えてしまう。
犯人当てということでは、真犯人が意外だったことは認める。例によってオレは当らなかったしねアップロードファイル
(2008.11.30読了)

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ヴァン・ダイン 『グリーン家殺人事件』

ヴァン・ダイン著 井上勇訳 『グリーン家殺人事件』(創元推理文庫/1959年刊)【THE GREENE MURDER CASE:1928】 を読む。
グリーン家殺人事件

ニューヨーク53番街のはずれに建つグリーン屋敷。そこで二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。
この事件を皮切りに、憎悪、嫉妬、貪欲が渦巻く空気の中に、幽鬼のように一家皆殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。相次ぐ殺人事件に一家の人間は一人、二人減っていく・・・


ここ最近、たて続けにミステリ分野の本ばかり読んでいるせいであろうか、何と、かなり早い段階で犯人が解った!
これはオレにとってはかなりの快挙である。もともとオレはミステリを読む際、作者から読者への挑戦は受けないようにしている(笑)。というのは、「考えたって解らんもん」と最初から、推理することをあきらめているから。
だが最近の連続ミステリ読みの成果か、作者の物語の組み立て方が見えてきた感じで、今回は見事に犯人が解ったのである。まあ、このシリーズはもう“古典的”な作品なので、バリバリのミステリファンの人達からすれば甘いのかもしれないが、『僧正殺人事件』ではすっかり作者にダマされたオレとしてはとても嬉しいのである。

ファイロ・ヴァンスが知識を披露する場面が多々出てくるけれども、類似した例をこれでもかと羅列するのは、とてもウザい。
(2008.6.21読了)
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エラリー・クイーン 『ニッポン樫鳥の謎』

エラリー・クイーン著 井上勇訳 『ニッポン樫鳥の謎』(創元推理文庫/1961年刊)【THE DOOR BETWEEN:1937】 を読む。
ニッポン樫鳥の謎

ニューヨークの中心マンハッタンの一隅に閑雅な詩趣を誇る日本庭園。
そこに棲む一羽のカシドリが、東京帝国大学教授の娘である女流作家の死にまつわる謎をいかにしてついばむか?
華麗から重厚への転換期に、クイーンがありったけの日本の知識を披露!


他の国名シリーズの諸作とは趣が違い、読者への挑戦状や、JJ・マックが登場しない、作風の転換期を思わせるには十分な作品。
いったん解決した事件を、さらに推理を進めていく手法は、この時期クイーンが作家としての進境をはたしたといえる。

ストーリーに話を移すと、エラリーとともに事件を追いかける私立探偵テリー・リングがいい味出してる。
テリーとエヴァの、フレンチレストランでのくだりは、恐らく作者のクイーンがハリウッドでの仕事(脚本か何かしたんだよね、たしか)の経験が生きてる気がする。ベタではあるが映像的ないい場面だった。
エラリーが重要な事実をクイーン警視に隠したり、クイーン警視がエラリーに尾行をつけたりってのは、アメリカ人てちょっとエゲツないと思う。
エラリー・クイーンは日本の知識はわりと持ってたみたいで、単純にフジヤマ、ゲイシャ、ハラキリにとどまらないウンチクを披露している。
(2008.6.10読了)
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エラリー・クイーン 『アメリカ銃の謎』

エラリー・クイーン著 井上勇訳 『アメリカ銃の謎』(創元推理文庫/1961年刊)【THE AMERICAN GUN MYSTERY:1933】 を読む。
アメリカ銃の謎

ニューヨークのスポーツの殿堂・コロシアムにおいて2万の観衆の前に颯爽と躍り出たカウボーイの一団。先頭に立つのは、かつての西部劇の英雄バック・ホーン。それを追う40人の暴れん坊。一斉に響き渡る40丁の拳銃の音。次の瞬間、馬蹄に蹂躙されたホーンの死体が。
しかも、同じ惨劇が同じ場所で2度も。
4万人の容疑者とあり余る凶器。そして肝心の凶器と犯人はついに発見されない・・・


国名シリーズ第6作。1~5作では無理やり国名を冠してタイトルをつけていた感があるが、今作では無理することもあきらめたようなストレートなタイトル。
出だしから殺人が起きるまでが、何やらもたもたした感じで非常に読みづらかった。
あまりにもゲーム小説の原則(ヴァン・ダインの20則など)に忠実すぎるため、人物がきめ細かく描写されていなく、今ひとつ作品に入り込めなかった。
純粋に「謎を解く」ことに関しては良く考えられた小説ではあるのだが、犯人がトリックを駆使してまで殺人を犯した理由がピンとこなかった。
そこら辺はクイーンも悩んだのであろうね、動機をボカしてごまかしてる。

クイーン警視の年俸が5,900ドルとあった。確か『警官殺し』の頃(1950年代)、キャレラの年俸が8,000ドル台と書いてあったような気が。
戦争を挟んでアメリカはけっこうインフレ率高かったんだね。
作品に入り込めない分、こういう余計なことに気が回ってしまった。
(2008.6.4読了)
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筒涸屋

Author:筒涸屋
札幌市出身・在住
戌年 射手座 B型 
右投右打 右四つ
好きな言葉:小春日和
2008.3.6開設

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